第3話

ぽつり。


あ。


雨だ。

ここ、雨なんて降るんだ。へえ。


傘は持っていたので、差すことにする。篠突く雨だった。


さらに視界が不明瞭な中で、ただひたすらに足を動かした。そういえば自分は鞄を持っている。それの存在に気づいた途端、中身を漁りだして携帯をみつけた。


iPhone7。結構いいやつ。


ホーム画面を開こうとした。でもなぜか指紋認証では開かなくて、パスワードの画面になった。


……


あれ。パスワード、わかんないや。


生前の記憶、わかるはずがない。自分のことなんて覚えていない。ロック画面は風景だ。多分自分が撮ってないやつ。

自分のことがこんなにも分からないなんて、怖いなぁ。なんて呑気に考えていると、線路らしきものが見えた。




あ!駅だ!


人。


人が見える。


なんだか久しぶりに人を見た気がする。ちらほらホームに立っている人。みんな暗めの服を着て並んでいた。なんだか気分が高揚していった。


階段を上がってプラットホームについた。券売機の前に立ち、体が勝手に動いてるかのように卒無く操作して切符を買う。まるで定例通りであるかのように。時刻表をみてからホームに足を運ぶ。


ただ……、駅員も他の人も、顔がはっきりとよく見えなかった。



それから暫くして電車が来た。

ドアが開き、私は電車に乗った。

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