13.アラサーはオバサンじゃない(重要)


 これは好都合だわ!

 ここで頼みを聞いたていにしておけば、シランス君ともゲラン君とも親密度アップ間違いナシよ!


「分かったわ、私がシランス君の女友達第一号になってあげようじゃない!」


「あの叱り方に、最後の褒め方……シールのおばさんによく似て――えっ、ホントか? ありがとう、シェリーちゃん! いやぁ、言ってみて良かったよ!」


 ゲラン君はホント爽やかで良い笑顔をするわね~。


 ……でもちょっと待ちなさい。聞き捨てならないセリフがあったわ。


「ねぇゲラン君? 今、私のこと……オバサンって言った?」


 私がオムライスをすくう手を止めると、ゲラン君もつられて手が止まる。


「えっ? い、いや、シェリーちゃんがおばちゃんっぽいっていう意味じゃなくて……」


「……じゃなくて?」


「えっと、その……なんて言うか……」


 さっきまでの輝く笑顔が、一瞬でしょぼくれたわ。

 なんだか実家の犬を思い出すわね……怒る気が失せちゃうじゃない。


「まぁいいわ」


 半分は当たってるわけだしね。

 三十二歳はまだオバサンじゃないけど、十代から見たらオバサンに見えるのも仕方ないわ。


 ……でも!


「女性にオバサンだとか、年関係の話は厳禁よ? あとアラサーはまだオバサンじゃないわ。……わかったかしら?」


「何でアラサー……?」


 ギロリ。


「あっいや、ハイ、ワカリマシタ。ゴメンナサイ……」


 丸まった尻尾の幻影が見えるわ。

 んもう、可哀相だからここまでにしてあげるっ。


「ご飯、食べましょ。あとせっかくだし、シランス君のこと色々と教えてよ。もちろんゲラン君のこともね。私はあなたとも友達になりたいわ」 


 シェリーの可愛い顔でニッコリと笑いかける。

 アメとムチは使い分けが重要だものね。


「も、もちろん! これからヨロシクな、シェリーちゃん!」


「ええ、よろしくね」


 その後は肝を冷やすこともなく(ゲラン君の)、私達は和やかなランチタイムを過ごした。




***




「えぇ~、私がいない間にそんなことがあったの?」


「今回はタイミングが良すぎたわね……」


 ランチを終えて教室に戻ったらラフィも帰ってきていたから、一通り事情を説明した。

 面白い物を見逃したと、ラフィはちょっとふてくされている。


「ハラハラする場面ばっかりじゃなくて、そういう普通に面白そうなところも見たいのになぁ~」


 今までにハラハラする場面ってあったかしら?

 まだシリアスパート(終盤に大体あるわよね)に入ってないし、今はほのぼのとした場面しかないと思うのだけど。


「とりあえず、これでシランス君とゲラン君とは友達になれたわ」


「シランス君も、もうカウントしちゃうんだ……」


 当然よ。親友が頼みに来たんだもの。

 親友というより、友達がいない息子を心配した母親オカンみたいだったけど。


「さて、次はどこから攻めようかしら」


 シランス君とゲラン君のイベントを進めるのもアリだけど、まだ攻略対象の五人が出揃ってないのよね。

 のじゃロリ女神が言うには攻略順なんかも関係あるみたいだし、一度全員見てから考えた方がいいのかしら……。


「そういえば、シェリーは年下って興味アリ?」


 年下? ナシね。

 私は頼れるオトナの男性がタイプよ。


「あるわ!」


「……今、『ナシね』って顔してなかった?」


「そ、そんなことないわよ?!」


 さすがはラフィ、観察眼が鋭いわ。

 でも学園モノの攻略対象としては後輩枠もアリなんだから、仕方がないのよ!


「年下っていっても、今年の一年生ってことでしょ? 大丈夫、興味あるわ!」

 

「……じゃあまあ、一応教えてあげるよ。今さっき仕入れた情報なんだけどね……」


 今回も、例の手帳を上着の内ポケットから取り出すラフィ。

 昼休みに出掛けてたのは、このためだったのね。

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