12.仲人

「シランス君をどう思ってるか……?」


 歩きながら昨日のことを思い出す。


 まー、失礼な子だったわねー。

 二次元ならともかく、リアルで堂々と人のことを無視する人って中々いないわよ?


 まぁでも、まだ若いんだし……これからよね。

 言えば謝ってくれたし、悪い子じゃなかったわ。


「んー、印象としては……子供っぽい、かな」


 って言ったら怒るかしらねぇ。

 というか、私からしたら皆子供っぽいというか子供そのものなんだけど。


「そうっ! そうなんだよ! そうなんだよな~!!」


 えっ、そんなにテンション上がること言った?

 ゲラン君ってば急に目が輝きだしたわ。


「あいつ、周りからはよくクールだの怖いだのオトナっぽいだのって言われるんだけど、実はかなり子供っぽいんだよ!」


「そ、そうなの……」


「うん! すぐスネるし怒るし、キライな食べ物が出たら俺の皿に投げ入れてくるし……」


 いっそのことカワイイわね。


「あ~、やっと話が合う人が見つかった!」


 やたらと嬉しそうねぇ。

 そんなに愚痴を言い合う同志が欲しかったのかしら。


「昨日の様子を見ててさ、シェリーちゃんなら分かってくれるんじゃないかなーって思ったんだ! 周りじゃ分かってくれる奴がいなくてさー……」


「ふぅん……?」


 そうこうしている内に食堂に着いた。

 食堂はセルフタイプで、生徒が好きな物を好きなだけ食べられるようになっている。


 私は適当に食べたい物を取り、会計を済ます。

 今日はオムライスとコンソメスープにサラダにした。

 食堂のオムライス、ふわとろだし自家製ケチャップたっぷりだし、美味しいのよね~♪


 あ、ゲラン君も買えたみたいね。

 メニューはポークカツレツと肉野菜炒めに、たまごスープとパンが四つ、小鉢が三つと……って、随分と食べるわね?!

 育ち盛りの男の子ならこんなものなのかしら。


「あ、向こうが空いてるな。行こうぜ!」


 ゲラン君が見つけたのは窓際の二人席。

 二人揃って、向い合せに席に着いた。


 良い場所が空いていて良かったわ。


「それで? シランス君がお子ちゃま過ぎるーって愚痴りたいんだっけ?」


 食べ始めながら、私は話の続きを促した。


「でぇッ?! ち、違うって!」


 あら? そういう話じゃなかったかしら。


「どっちかっていうと逆でさ……」


「逆? じゃあノロケ?」


「なんでだよッ!!」


 愚痴の逆はノロケじゃないの?

 以前はよく、愚痴と見せかけたノロケを聞かされたものだわ~。


「そ、そうじゃなくて……シールと友達になってくれないか?」


「友達に……?」


「あいつ、あの性格だろ? だから男友達も俺ぐらいだし、女の子は怒るか遠巻きに見るかで……友達が全然いないんだ」


「そうでしょうねぇ」


 あれで友達がいっぱいいたら逆に不思議よ。


「うぐっ、ハッキリ言うなぁ……まぁでも、そういうところを見込んだワケなんだけどさ」


 なるほど。

 物怖ものおじしない私なら、シランス君ともやっていけそうだと思ったってわけね。

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