11.連続イベント

「シェぇぇ~リぃぃ~!!」


「うわっ! な、何よ、ラフィってば!」


 困ってるような怒ってるような、複雑な顔で迫ってくるラフィ。

 そういえば近くで待機してもらってたんだったわ。


「どうして? どうしていつもケンカになるの? 恋の始まりは??」


 あら。

 そういえばそういう話だったわね。


 んー……でもよく考えてみたら、わりと成功してるんじゃないかしら?

 うん、出会いイベントならこんなものよね。


「大丈夫よ、今回も成功だわ!」


「どこがッ?!」


「名前も覚えてくれたみたいだし、シランス君はまた今度って言ってたでしょ? ほら、上手くいってるわ」


「……違う……私の知ってる恋愛は、これじゃない……」


「ラフィ……」


 そうよね、ショックよね……。

 何と言っても、ここは乙女ゲームの世界。

 ラフィが知ってる『まともな恋愛』とは、かけ離れてるわよね……。


 でも、仕方ないの。

 これがこの世界乙女ゲーの現実なのよ!


「安心して、ラフィ。私がちょっと特殊なだけだから」


 イベントは主人公にしか起こらない。

 ラフィはまともな恋愛ができるはずよ!


「シェリー……自覚、あるんだね……」


 もちろんよ。

 のじゃロリ女神にも言われたもの。転生するのは主人公だ、ってね。


「大丈夫、見ていてちょうだい。最後はハッピーエンドに導いてみせるから!」


 イヤだけど頑張るわ。

 目指すはもちろん、五股の逆ハーエンドよ!




***




 シランス君とゲラン君との初対面を済ませた翌日。

 午前の授業も終わり、これから昼食に向かおうとする生徒達の声で、教室は賑わっていた。


「今日のお昼はどうしようかしら……」


 ラフィは調べ物があるとかで、今日は別々なのよね。

 一人で食堂っていうのもねぇ……購買で何か買って、外で食べようかしら。


「あの、アステールさん?」


「え?」


 振り向くと、女子生徒が立っていた。

 えーと、誰だったかしら……クラスメイトなのは覚えているんだけど……。


「外でアステールさんを呼んでる人がいるんだけど……」


「あら、ありがとう。行ってみるわ」


 言われて教室の扉まで来てみると、赤い髪を元気に遊ばせるがいた。


「やぁ、シェリーちゃん! 今、いいかな?」


「ゲラン君!」


 なるほど、イベントだわ!

 昨日の今日で早速動きがあるなんて、行動が早いわねぇ。

 どこぞの痴か……王子様とは違うわね!


「ちょうど良いわ、今日は一人でランチだったの。良かったら、一緒にどう?」


「おっ、良いな! じゃあ食堂でいいか?」


「ええ」


 私達は二人で食堂へと歩き出す。


 それにしてもラフィがいない時に来るなんて、見計らったようなタイミングねぇ。

 さすがゲームのキャラだわ。


「そういえば、今日はシランス君は一緒じゃないの?」


「あー……あいつ抜きで話をしてみたいなーって思ってさ」


「えっ?!」


 ゲラン君、早いわッ!

 まさかもう主人公シェリーにフォーリンラブなの?!

 私、まだ何もしてないわよ?!


「あっ、変な意味じゃないよ! ごっ、ごめんッ!」


 いかにも口説き文句だったことに気付いたのか、慌てるゲラン君。


 あら、違ったのね。

 まぁでも、こうやってイベントが進めば辿り着く先は一つなのだけど。


 それにしても、ゲラン君は純情そうねぇ。

 これぐらいのことで赤くなるなんて……若い子ってカワイイわね!


 あ、シェリーわたしも同い年なんだっけ。


「シェリーちゃんはさ、シールって……どう思う?」

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