8.二人目と三人目

「でね、レジス様の新情報とか、新しい候補者の情報とか無いかな~って思って」


「やっぱまだレジス様も狙ってるんだ……?」


「当然よ、今は唯一にして最大の候補なんだから!」


 あの人を人とも思わない距離感、強引さ。

 間違いなく攻略対象よ!


「ハァ……まぁシェリーがそう言うんだったら、協力はするけどさ……」


「ええ、よろしくね! 親友っ♪」


 ラフィは青い髪をかきあげ、小さく息を吐いた。


 ふふ、満更でもなさそうな顔ね。


「レジス様の情報はまた追々集めるとして……新しい候補、ね」


「誰か心当たりはある? イケメンでモテモテな男子か、あとメガネを取ったらイケメンだったとか、前髪を切ったらイケメンだったとか、そういうのでも良いんだけど……」


「まーた変な好みねぇ……」


「わ、私の好みじゃないわよ?! でも仕方ないのよッ!」


 断じてそんな奴がタイプなわけではないわ!

 私だってホントは、大人(30代~40ぐらいまで)で、紳士的で、仕事も上手くて……そんな頼れる男性と恋愛したいわよ!


 でも……この世界ゲームが『学院編』っぽいんだから、仕方ないじゃない!

 シェリーはまだ、十六だからッ!


「そんな顔するぐらいなら、普通に恋愛すればいいのに……っていうか、まだちゃんと話を聞かせてもらってないんだけど?」


「あら、そういえばそうだったわね」


 あの時はレジス様に接触するチャンスを逃したくなくて、後回しにしたんだったわね。


「えーっと、どういう基準で選んでるのか、って話だったかしら?」


「まぁそれもあるかな。お金で選んでるわけじゃないっていうのは聞いたけど」


「基準、ねぇ……」


 ラフィに説明するのは難しいわね。

 なんたって『乙女ゲーにいそうな人』だもの。

 そもそもゲームが無いこの世界じゃ、説明のしようがないわ。


 あ、ゲームがなくても本ならあるじゃない!


「言うなれば、ロマンス小説に出てきそうな人ってことよ!」


「……シェリーって、そんなに夢見がちだったっけ?」


 うっ、またもや親友に疑われているわ!


「せっかく学院にいるんだから、出会ってみるぐらい良いじゃない! ねっ?」


「……」


 うう……そんな胡乱うろんな目で見なくても……。


「ま、いいよ。せっかくシェリーが恋愛に目覚めそうなんだもんね」


「うん……ありがとう!」


 たぶん、何か隠してるのはバレバレなんだと思う。

 でもラフィは深く聞かずに協力してくれる。

 ああ、なんて出来た親友なのかしら!


 ズッ友だょ……! って、このネタにもいい加減飽きたわね。


 でも、ホントに感謝してるわ。

 友好度が表示されるシステムなら、間違いなくラフィはMAXね!


「それにしても、ロマンス小説に出てきそうな人物、かぁ……」


「どう? 誰か心当たりはある?」


「やっぱりレジス様が筆頭だけど、私達の学年――二年生の中なら、ゲラン君とシランス君かなぁ」


「その二人は聞いたことあるような、ないような……」


 ラフィは上着の内ポケットから例の手帳を取り出し、ページをめくる。


「ゲラン・ベンネル。国内最大の農家、ベンネル家の長男。学術の成績は今ひとつだが、武術は自慢の腕力と体力でそれなりの成績をおさめている。性格は明るく、男女ともに人気が高い好青年」


 国内最大、ってところが重要ね。

 二番手三番手だとインパクトに掛けるから、キャラにするなら一番手トップだもの。

 それに、普通の好青年だったら私のポイントも高いわ!


「シランス・メルカトル。王家御用達、メルカトル商会の次男。学術の成績は良いが、武術は苦手。商人とは思えないほど無愛想で、商会を継ぐことは絶対に無いだろうと噂されている。でもイケメン」


 最後の一言にラフィらしさを感じるわね……。

 まぁ、こっちも候補かしら。なんたって王家御用達だものね。

 でも無愛想なのは個人的にいただけないわねぇ。

 二次元なら別に良いけど、リアルで「……フンッ」とか言われた日には怒るわよ?

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