朗読会へ、行ってきた! (その6/7)

2019/11/30、朗読会へ行ってきました。

全部で7話、朗読されていました。今日はその感想(6/7)です。


星新一 『人形』。(『ノックの音が』新潮文庫所収)

星新一は、中学生の頃に、100冊以上は読んだかも……。

でもこの話はすっかり忘れていました。

呪いの藁人形をモチーフに、意外などんでん返しが待っているという、

星新一のブラックなユーモアが、この話でも秀逸です。


この 『人形』 を聞きながら、わたしはふと、

この主人公を 笑えない自分に気づきました。

人形のように、絶対安全だと信じていたものに

裏切られることって、日常でもあるからです。


たとえば、原発など、どうでしょう。

絶対安全だとという神話を信じた人々。

そしてその神話のもと、文明のもたらす栄華を享受していたわたしたち。

あれこれ、万全を期してみたつもりだったのに、

いざ 蓋を開けてみたら……。


文明生活に慣れたわたしたちにとって、

元の生活に戻ることは、ほとんど不可能です。

ちょうど、金庫に閉じ込められた人形のようなもの。

これさえあれば、どうにかなると、

老婆のささやきのような 文明の利器――

テレビやラジオ、冷蔵庫や掃除機など、

使い勝手のいいものにおぼれています。


ですが。

電気が切れたら、すべて、おしまいなのです。

そこから脱出できない主人公を、わたしは笑えない。

文明の袋小路に入り込み、

したり顔して、「コンピュータは便利だな」

とか、「メールアドレス教えて」

とか、いろいろ無理難題を友だちに言っている。


「だんなさんは、どんな使い方をするかな?」

老婆の問いかけは、かなり皮肉が効いている気がします。

便利だ、楽しい、交流の場に使える。

だけど、いつの間にか、それに振り回される。

「使い方をする」 のではなく、

「使われる」ことになってしまう。


リサイクルの難しいプラスティックゴミ。

処理する方法が、一般的じゃない乾電池。

生産するばかりで、後始末は放り投げる。

金庫の中に放り込んで、安心する。


星新一の笑いは、毒がありますが

わたしは個人的には、好きですね。


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