朗読会へ、行ってきた! (最終回)

2019/11/30、朗読会へ行ってきました。

全部で7話、朗読されていました。今日はその感想(最終回)です。


井伏鱒二 『遅い訪問』。(『夜ふけと梅の花 山椒魚』講談社文芸文庫)

あのポストが状差しというものだと初めて知りました。

それにしても、「私」ってセコい。

いくら失職したからって、古い学生証で図書館を利用するなんて。

娯楽のない時代だから、本を読むしかなかったんでしょうけど。

ともかく、その近くの学生のたまり場で、いろは順(時代だね)

に並べられた状差しを見た「私」 は、4、5年前の女からの手紙に

誘われて、ただで下宿してくれるというその場所へと赴きます。


井伏鱒二は、実は 『ドリトル先生』シリーズの翻訳で知っていました。

小学四年の頃だったかな。

「おじいさんが子どもだった頃」

という出だしを、いまだに覚えています。

やわらかな、やさしい語り口でした。

ドリトル先生は、知っているとおり、動物語の話せる人間のお医者さんです。

この「私」 は、失職して、ヒマを持てあましているようですが、

ドリトル先生は、忙しいったらないんです。

旅行ばかりしていましたねえ。


「私」 も、下宿先を訪れて、そこのおかみさんと

会話をするという展開になってます。

このおかみさん、どうも品がいいんですが、

ひとりっきりで子どもを亡くして、夫はいつ帰ってくるかわかんない。

だんだん、「私」 も、居心地が悪くなってきます。


なにしろおかみさんは、40代といっても美人さん。

青春まっさかりの 「私」 には、誘惑が多いかも。

それがまた、美人のおかみさんの態度が、

非の打ち所がないんですよねー。

惹かれてしまいそうです。

女の色香に迷う 「私」 のとまどいが、

ユーモアたっぷりに描かれています。


「ほんとにしばらくぶりでした!」

いや、初対面でしょう(笑)

苦笑しながらも、泥沼にはまりつつある 「私」 の

行く末が気になってしまいます。


玄関口のカマキリ虫の朗読を聞いて、

あの、タマゴを産んだらオスを食っちゃうという話を

連想しました。

それまで、のんきで、どちらかというと 

お茶のみ話の延長みたいなストーリー展開だったのに、

このカマキリ虫のカギの話で、一気に 

ゾッとする展開になりました。

このあたり、星新一に通じるものがある気がします。


女のこわさって、あるよね(自分も女ですが…… 笑)


ということで、今回で朗読会の話は、お終い。

来週は、宮島関連の話になる予定です。


お楽しみに!

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