朗読会へ、行ってきた! (その5/7)

2019/11/30、朗読会へ行ってきました。

全部で7話、朗読されていました。今日はその感想(5/7)です。


あまんきみこ 『さよならの歌』 (『秋のおはなし』 三省堂所収)

朗読者のとなりには、竹とんぼの絵が飾られている。

竹とんぼで遊んだことはないけれど、この話の主人公も男の子も、いかにも嬉しそう。

竹とんぼへの憧憬が、全編に漂っています。

おじいさんの歌の、「とんぼになって 飛んで行け」 という歌が、

リフレインになってこだましているのでした。

ここに出てくる男の子。主人公の『ぼく』とどこかであったことがあるのか?

と思いつつ、とんぼの歌を歌って竹とんぼを男の子に手渡す 『ぼく』 の心は、

どこにあるのでしょうか?


どこか懐かしい景色。一度も見たことがないのに、既視感のある風景。

日常という平穏な中にも、おじいさんが倒れてボケはじめているというストーリー展開に、

平穏な生活もまた、波風とは無縁ではないことを実感させられます。


とんぼになって飛んで行け。

この竹とんぼは、もしかしたら、魂のことでしょうか。

どこから来て、どこへ行くのか。

空の彼方へ消えていく竹とんぼ。

自分がどこから来たのかも分からないのに、

生まれただの、死んだだのと騒ぐなと言ったのは

一休さんでしたが、

それでも、死別の悲しみは、どんな人でもついてまわる。


おじいさんは、幸せに死んだのだと思います。

未来を信じる孫と、明日のないおじいさん。

とんぼの歌は、その家にとっての、鎮魂歌なのでしょう。

男の子の過去と、『ぼく』 の現在が絡み合い、

ふしぎな空間が広がっていく。


目の前に、野っ原が広がっていって、

あおい、あおい空に、真っ赤なとんぼが

つうっと寄ってきて、そのまま彼方へ消えていくようで、

人生って、短い。

と、ふと、思ってしまうのです。



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