朗読会へ、行ってきた! (その1/7)

2019/11/30、朗読会へ行ってきました。(少し、リライトしました)

全部で7話、朗読されていました。今日はその感想(1/7)です。


川上弘美 「蛇は穴に入る」(『どこまで行っても遠い町』新潮文庫所収)

職を転々としていた 『ぼく』 は、介護ヘルパーの資格を取って、

介護の仕事をすることになったのですが……


人と付き合うのが苦手なのに、

逆のことを面接で言って、上司にウソを見抜かれるシーンが

なかなか面白く感じました。

コミュ障ぎみの 『ぼく』 が、自分が甘えていると思いつつも、

そこから脱却できない・しないでいる。

ところが、その 『ぼく』 に転機が訪れます。

みねこさんとの出会いが、それでした。


みねこさんには、たつじさんという夫がいるんですが、

たつじさんは 「金遣いのきれいなひと」

というみねこさん。

表現はきれいだけど、本質はちょっとばかり、違いますね。

たつじさんは、マジメ一本槍の男と言うよりは、

昭和のおじさんが、そのまま年取ったという感じでした。

30年代の空気が、漂っています。

不器用な男の背中に、かるい憎しみを覚える、と言う 『ぼく』。

『ぼく』 はきっと、そんなおじさんに、嫉妬していたのかもしれません。


この作品のなかに挿入されていた、介護ヘルパーの女の子の漫画の話は、

わたしも見たことがあるような気がします。(チラ見ですが)

広島弁を、しゃべってなかったですか?

『ぼく』 は介護の世界で恋人を作りたい、と思ったのがきっかけなのでしょうが、

職場はそんな、甘いもんじゃなかったわけです。


これからどうやって生きていくのか?

三十八にもなって、やっと思春期みたいなことを考えだす、『ぼく』。

この話のラスト近くで、人生は尻切れとんぼと 『ぼく』 は言っていたけれど、

自分に与えられた疑問について、「あまっちょろく気長に考え続ける」

と覚悟をかためる 『ぼく』 の姿は、さわやかだ。

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