朗読会へ、行ってきた! (その2/7)

2019/11/30、朗読会へ行ってきました。

全部で7話、朗読されていました。今日はその感想(2/7)です。


夏目漱石 『夢十夜』 第六夜 (『夢十夜・文鳥』ちくま文庫所収)

「こんな夢を見た」ではじまる夏目漱石の夢物語、第六弾。

朗読者の隣にある絵が、不思議でした。

人間の絵のようでしたが、なんの絵だったのでしょうか?


ともあれ、今回は、一度読んだことがある短編でした。

朗読しようとは考えもしなかったので、あらためて肉声で聞いてみると、

なかなか趣があると思います。


ヤマトタケルより仁王のほうが強いなんて。

天皇が絶対的存在になりつつあった明治の時代にあって、

神話的存在で、また、ヤマトという日本の名前までついている人物を、

仁王(金剛力士(こんごうりきし、仏教の護法善神(守護神)である天部の一つ。

サンスクリットでは「ヴァジュラパーニ」と言い、「金剛杵(こんごうしょ、仏敵を退散させる武器)

を持つもの」を意味する。)

という、外国の神さまと比較するあたりが、

夏目漱石の畏れを知らぬ態度を感じさせます。


夏目漱石は、ほんとうに身近で分かりやすい文体・文章書きますね。

運慶の偉大さ、立派さとその評価に対する漱石の関心がよく分かります。

仁王といえば運慶、らしいですから……。

このように、ダイナミックな文章を書きたい、と漱石は願っていたのでしょう。

自分が築き上げた地位や名誉よりももっと、

もっと上に行きたい、と願う向上心がひりひり感じられます。


彫刻は、誰にでも出来ると言われて、真に受けて、

じっさいに木で彫ろうとがんばる 『自分』 が、稚気あふれていて楽しい。

ここで、常識を働かせて、

「門外漢なんだからムリに決まってる」

と思わないところが、漱石なんです。

なにごとも、挑戦してしまう。

逃げ出さない。ひとつ失敗しても、諦めない。

何度も、なんども、やりなおす。


ついに、「明治の木には 仁王がない」

と結論づけるあたりは、

「キツネとぶどう」というイソップ童話を思い出しました。

みなさんご存じのとおり、

おいしそうなぶどうが木になっているのを見たキツネが、

木に跳びつくけど、実にはどうしても届かない。

キツネはついに、「どうせ酸っぱいぶどうさ」

と負け惜しみを言う、というお話です。

漱石の負けず嫌いなところ、このキツネにそっくり。

だからこそ、一流なのでしょう。


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