特殊詐欺はがき、来る(後編)

13日の話の続きです。初めて読む人は、過去の記録を遡ってください。

さて、合唱サークルに、特殊詐欺はがきが来たことを話しました。

すると、雑談上手のAさんが、こんな話を聞かせてくださいました。


「うちにも、こんな電話がかかってきたのよ。

『おれだけど』 って言うから、息子の名前を呼んだの。

そしたら、風邪をこじらせて、いま、病院にいる。

結果は分からないけど、お金を用意してくれっていうの。

嫁が子どもの面倒を見るために、実家に帰っていたから、

嫁に電話して、いま 北海道にいる息子のところへ行ってやって、

と言ったら、『おかーさん、それ、詐欺だよ』って。

それで、再びその男からかかってきた電話に、思わず、

『あなた、姓はなんていうの?』 って聞いたら、息子の名前じゃないのよ。

『そうなの。名前は同じなのに、姓が違うって偶然もあるのね。

いま、病気でたいへんなら、すぐに病院へ行って、

治療を受けたほうがいいわ。

わたしには、どうすることもできないから』

って言ったのよね。


そしたら、それっきり、電話がかかってこなかったの。

でもね、それから数ヶ月後、今度こそ、詐欺にあったのよ!

消防員の格好をした知り合いの人で、

お祭りによく来てた人だったの。でも、話はしたことがなかったの。

急に自宅をピンポンして、『近くの壁に車をぶつけたから

弁償するのに 3万円、貸してくれ』って。

顔見知りだし、気軽に貸したら


その人、

自殺しちゃったの。


お金は返ってこなかったわ。


その人、ノートに、借りた人の名前と金額を、

びっしり 書いていたんだって。

借金が、苦しかったのかしら……


お嫁さんが返金しようとしたけど、お香典としてあげちゃった」


なんか身につまされてしまいます(父のことを思い出す)。

大人になりきれなかった父。試練を乗り越えることが出来なかった。

というより、そこから逃れる手段もあったのに、安易に自殺した。

妹は、「半分はお姉ちゃんに責任がある」って言ってたけど、

わたしが父のお金を搾り取ったわけじゃないもんね。


妹とは、できれば口をききたくないな。

腹が立つ自分の、感情の乱れが病気に差し障りそうだ。

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