Act.159 大賢者、六大精霊を纏いし者
纏うその力で、今までの自分を超越した様な高揚感が包む中。
私は自身が今展開できる最高の術式を解き放っています。
『ミーシャはん、これはとてつもないで!? ウチら六大精霊が同時装填やなんて! これはもう、行く所まで上り詰めたんちゃうかいな! 』
「よしてくれ、しーちゃん。まだ私は学ばなければならない事が山積みなんだから。」
風の加護。
長く共にあったしーちゃんの驚愕。
『クレイジーもクレイジー! 俺もこんな主様に支えたとあれば、長く辛かった人生に華が添えられた様なモンだぜ、ファッキン! 』
「ふふっ……グラサンは最初、オリアナに着いて行くと言ってなかったかい? 」
火の加護。
『私は今、感動に打ち震えていますキ! リド様のお眼鏡は確かであった……もはやミシャリア様へ消滅の時までお供しますキ! 』
「シェン……(汗)。遥かに君の存在寿命の方が長いのに、それはどうかと思うんだけど? 」
闇の加護。
リド卿との出会いの中で架け橋となったマスコットなシェン。
『いや、うん。アタイもね? 流石に考えを、全面的に改めなけりゃと思う次第さね。』
「それは感謝に尽きるよ、ディネさん。」
水の加護。
最初は一触即発も、今は頼もしい味方のディネ。
『うおおおおん! ミシャリア様がこの様に偉大なる賢者様だったとはっ! このノマ……もはや死んでもいいアルーーっ! 』
「いやいや(汗)……ノマさんここに来て泣き上戸かい? て言うか、死んだらダメだからね? 分かってるかい? 」
地の加護。
やらかしたどこぞのおバカチートのせいで、頭も上がらないノマ。
そして——
『こんな日が来る事を、どれだけ待ち望んだか。私は、あなたと友達で……よかった。』
「うん、そうだね。私も知らずとは言え……君と最初に出会えていた事を誇りに思うよ。」
光の加護。
私が落ち零れである事にさえ気付かなかった時から、共にあった最初の友人たるウィスパ。
六つの精霊の力が、両手に備えた
落ち零れの自分を超え、精霊と手を取り——
世界の遍く弱者へとその手を差し伸べる道の、本当の一歩。
それを今踏み出すのです。
そんな私が術式展開する時間を稼ぎ切ったオリアナが、加減なき双銃の一撃で弾かれて……眼前の死霊の支配者が手加減の一切を配したのを悟った瞬間——
「では行くよ?素敵な精霊達。我はこれより雷霆と化す——最終決戦開幕と行こうじゃないか!」
したり顔で精霊達へ宣言するや、皆の想いが
『我、天雷を纏いて
踏ん張り、立ち上がるオリアナ。
それを狙うリュードの双銃の一撃。
音の速度で大気の壁すら超えて奔る
∫∫∫∫∫∫
令嬢も避ける素振りを見せぬ今……鉛の狂気は問答無用で彼女を撃ち抜いてもおかしくはなかったはずだ。
だが——だがである。
大気を突き抜ける音速の狂気が刹那……それを上回る雷速で弾け飛ぶ影によって——
令嬢に届く前に叩き落とされていた。
「……!? ほう……これは俺も想定していなかった。未だかつて、俺の銃弾を叩き落とす者など見た事も聞いた事もない。それがお前の素とでもいうのか?賢者ミシャリア。」
「ああ、気にする必要はないよ?リュード・アンドラスト。ちょっと私が開発した、精霊と共にある事で叶う最強術式の一端を……これ見よがしに披露しただけの話。何——」
「賞賛を贈りたいと言うならばまず、君が追い出したこのオリアナを賞賛して欲しいものだね。彼女がいたからこそ、時間稼ぎもなった様なものだから。」
雷纏う影は桃色髪の威風堂々。
帯電した空気さえ後塵に変え、彼女は仲間を守り抜いた。
今まで守られるだけであった少女が、ようやく守る力を手にしたのだ。
桃色髪の大賢者……ミシャリア・クロードリア、が——
「信頼……してたよ? 我が主様。」
「ふふっ……止めないか——と言いたい所だけど。今は君の言葉を刻ませて貰うよ、オリアナ。そして私も、君を信頼していた。」
互いに視線は黒の総大将へ。
しかし想いはすでに一つ。
白黒令嬢も、自分が足手纏いにならぬだけの戦いは繰り出して見せた。
すでに彼女の出番は終えているのだ。
故に桃色髪の大賢者は咆哮を上げる。
愛しき
「さあ、私がこれより戦いへ参戦だ! オリアナはサーリャの所へ後退して治療に専念——その素敵なお顔に傷が残るなんて、目覚めも悪いからね! そして——」
「テンパロットはリド卿とティティ卿協力の元、フレード君の一撃を活かしてバカ死竜さんを撃破! ヒュレイカはペネと共に、どこぞのチート導師も及ばぬ、その素晴らしきオーガロード氏へキッチリ勝利を叩き付ける事! 」
吼えると同時に踏み出す大賢者は、
未体験の速度で襲い来る力に、さしもの総大将も身を逸らすで限界であった。
「くくっ……面白い!面白いぞ、賢者ミシャリア! 俺が回避で遅れを取るなど、アスタルク卿と打ち合って以来——」
「ならば手加減の必要もないと言う物……覚悟は出来ているだろうな!? 」
「何を今更! そんな物、ハナからするつもりも無かっただろう!? 最初の戦いですでに君は私達への
しかし黒の総大将は曲がりなりにも上位クラスの魔導に
それは
それでも——
「雷速からの一撃をかましてあげよう! グラサン……しーちゃん——同時に力を展開いけるかい!? 」
『うおっ……ここでなのか!? 全く無茶苦茶だぜ、ファッキン! だが——』
『いやぁ、これはおもろうなって来たでぇ~~! 行ったるで、グラサンはん! 』
『
すでに精霊と一体と化す
超常たる術式展開を刹那に終える。
そこには元来術式を介する
精霊を浪費するのではない——精霊への代価と共に、手を取り合う賢者少女ならではの術式展開である。
空へ舞い上がる黒の総大将を、反物質化する程に凝縮された大気の弾丸が追い詰める。
それもただの速度ではない……電磁加速によって放たれた弾丸だ。
「……くっ!? 流石は、魔導科学に特化したアーレス帝国の
さしもの黒の総大将も、かわしきれずに弾丸が体躯を
が……ダメージと言える物が得られない状況を、桃色髪の大賢者も見逃さなかった。
「流石は
『いよいよアタイの出番さね! 魔法障壁とやらをブチ抜くには——』
『物理のゴリ押しで致命打アル! 』
『ちょっ……アタイに被るんじゃないさね!?ノマさんよ! 』
「いいから……(汗)! 展開頼むよ!? 」
僅かにいつもの
『
異なる精霊の力融合によって、物理事象を高次元事象へ昇格させる融合術式。
それが強力な魔法障壁を完全無視して貫く、高圧流塵の物理刃となって襲い掛かる。
賢者少女の
「この俺の魔法障壁を超え打撃を与えるなど……すでにお前は、我にとっての宿敵に達したっ!もはや遠慮は要らん様だな、ミシャリア・クロードリアーーっっ!! 」
「お褒めに預かり恐悦至極だよ、この……リュード・アンドラストーーっっ!! 」
咆哮と同時に接敵する両者が、魔法術式を鉢合わせるや高速離脱。
大気にさえ猛烈な圧力を伝搬させる超常の激突。
やがてその戦いが、最終最後の局面へと導かれて行く——
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