Act.71 決戦再び!法規隊と古代竜種レックシア
「早めに動いたのは正解だったとしか言いようがないね!なんとバカ竜さん、すでに殺る気満々じゃないか!」
「おかしいサリ!ミーシャさんの護衛さんが付けた傷……もう回復してるサリ!」
荒ぶる
切り立った岩場は
一行は
「賢者ミーシャ、あんたは前を走れ!俺達精霊で奴を足止めする……サリュアナ!シェン!」
「キキッ!」
「お任せサリっ!」
「すまないっ、皆!全く……こう言う時ばかりは自分の未熟さが恨めしくて仕方がないよ!」
実体化を解けば何時でも回避の叶う精霊達が一丸となり、たった一人の
暴竜が持つ脚力は、異獣に代表される各竜種でも考えられぬ速度で大地を駆ける。
その速度たるや、足の速い部類である中型肉食獣……獅子レイオンに匹敵する。
さらにはその体躯から来る歩幅で、一瞬の隙に距離を縮めてくる。
道と言い切るには心許ない岩場山道を、宮廷術師の法衣を
巻き起こる火炎が親子の絆を思わせる固く結ばれた螺旋を描くと——
「ファッキン!さすがに
「りょーかいサリ!パパとあーしの力を見せてやるサリ!」
『『
立ち上った焔は螺旋の大蛇と化し、暴竜が踏み抜くであろう岩場を焼き焦がす。
いかな
高温で熱された岩場が、暴竜の硬質な皮膚すら焼くほどの熱を帯びる。
多少の知能があれば、そこを闇雲に突撃する事はないだろう……との思考で、足止めとして炎で地を焼いた
通常の生命であれば、その炎に恐れを成して進撃の足を止めるだろうと思考して——
が——
「キキッキキッ!?」
「こいつぁ、クレイジーも甚だしい……!奴の知能の進化は俺達の想像を超えてやがるぜっ、ファッキンっ!!」
精霊達は竜種が持つ成長速度を見誤っていた。
「シェンっ!賢者ミーシャに近づけるなっ!!」
『お任せ下さいですキっ!我が主が見初めた希望をやらせはしないですキっ!……闇より出でて、引き裂け
その冥獄の魔王が降臨したかの姿から放つは、彼女が得意とする固定術式——
しかしそれは見えぬ場所からの強襲でこそ威力を発揮した——が、彼女の姿は
つまりはあの暴竜が先に習得したブレスの射程である事を意味していたのだ。
「……っ!?シェン——その場所でそれはマズイ!避けるんだっっ!!」
精霊達の想いに守られ、先行して退避を図っていた
まだパーティーを組む程では無くとも、その身を賭して協力を買って出た闇の精霊が——暴竜の吐き出すブレスの射程で、無防備となる放射系術式を展開していた。
「ぐるおおおおおおーーーーーっっ!!」
荒ぶる暴竜胸部へ大きく息が吸い込まれると、それに反応した体内の霊銀が吐き出す息へ乗せるための
飛ぶ
「はいやーーーーーーーっっ!!」
賢者少女の背後上空より——小さな体躯が降り注ぐ弾丸の如く舞い降りた。
∫∫∫∫∫∫
ペネの見立てで、暴竜へ刻んだ傷からしてすぐには動かぬと踏んでいた私達。
それはあくまでも傷が早々に癒える事は無いと言う前提で成り立つ算段でした。
が……蓋を開けてみれば、恐るべき勢いで傷が癒えたバカ竜さんが私達を待ち受ける様に——こちらへ襲撃して来たのです。
そこから導かれる結果として、あのバカ竜さんが縄張りとする
「シェン!避けるんだっ!」
挙句は私達が完全に奇襲を受けた形となり……
つくづく己の未熟さが嫌になる瞬間——そんな私を庇うシェンの期待が痛いほど身に染みるからこそ、思わず叫ぶ様に彼女へ指示を出します。
その私からして後方上空——
叫ぶ声に被さる様に轟いたのは、あのペネ……暴竜用食料調達組として出向いていた臨時の協力者の声。
ハッ!として声が響く方向を見やった私の遥か先——差し詰め上空から舞い降りるその姿は竜騎士。
まさかと注視した武装は槍では無い棒状のロッド。
しかし、落下の位置エネルギーを乗せて振り下ろされたロッドの如き武装がバカ竜さんの額部を穿つと同時——火薬の激しい炸裂と思しき衝撃で、バカ竜さんは咆哮と共にブレス射線を大きく逸らされます。
そのままロッド状の武装を風車の様に回転させて、近くの岩場へ着地する身軽さ……とても猪突猛進が売りのドワーフが持つ戦術とは思えぬ、舞う様な戦いでした。
「ペネっ!シェンを守ってくれて感謝するよ!しかし……その武装は中々に特殊だと見た!」
「礼には及ばない感じよ、賢者ミーシャ!因みにこの武器は軽量高剛性のチタナイト合金製……アーレス帝国が世界一の生産量を誇る機械製品原材料——」
「伊達にこの帝国で商売は
先端に取り外しの叶う機械式ギミックを確認した時点で、アーレス帝国製とは思ったけど——それを何かドッキリ企画的に披露して来た彼女は、相当ドワーフ扱いを嫌ってると見たね。
そのおかげで私は
「……ちょっと待つんだ!?あのおバカ——ヒュレイカはどこに行った!?」
そうです—— 一緒にいバカ竜さんから逃走を図っていたはずのツインテさん。
あのおバカがどこにも見当たらない事実へ……回り始めたら思考でやっと気づく事になったのです。
∫∫∫∫∫∫
その口から自分こそが賢者少女の護衛と、高らかに豪語したとは思えぬ奇行を取る。
そう——彼女の行動だけで考えればそうであった。
「フレード君!?なんで君だけ——」
「間に合ったの!ヒュレイカお姉ちゃん……協力して欲しい、なの!」
ツインテ騎士の視界に映ったのは、
自慢の
「協力って……!?」
「
鬼気迫る少女の様な少年の表情には、さしものツインテ騎士も日頃の無用な趣味嗜好を抑え——だが彼が口にする協力と言う言葉の真意を問い質す。
そのツインテ騎士へ差し出されたのは反霊銀を集取した皮袋。
少年が崇拝する至高神の祈りは反霊銀の影響が皆無であり——結果彼がこの場へと先んじて向かえた事を物語る。
袋を差し出し少年もさらに続ける。
「こちらに向かう途中で、しーちゃんさんと打ち合わせて——テトお兄ちゃんとジーンさんに獲物を運んで貰ってるの!けど——」
「このままでは暴竜には、それを与えられない——だから、ヒュレイカお姉ちゃんの力で……獲物をあの暴竜向けて、投げ飛ばして欲しいの!」
荒唐無稽な頼みが提示された。
一人の騎士へ……それも少女へ。
たかが異獣とはいえ、中型肉食獣に属する生命を持ち上げるだけでも無理難題以外の何物でもない。
無理なはずだが——彼女は違っていた。
フワフワ神官が、護衛すべき賢者少女よりも優先的に騎士の元を目指した理由を……彼女は直感で理解した。
「ぷっ……!反霊銀を混ぜ込んだ異獣の死体を、暴竜の口目掛けてぶん投げる……。それが出来るのは——確かにアタシしかいないわねっ!」
「いいわ、任せなさい!じゃこのまま――テンパロット達が運ぶ獲物の所まで!」
「うん、なの!移動はこのメイスに……お任せなの!」
ツインテ騎士は失笑を零す。
かつて自分の人生を
首肯したフワフワ神官の得物にヒラリと相乗ると……二人分プラス
確かに桃色髪の賢者は未熟であり、時として思考や策が後手に回る事もしばしば。
だがしかし——それを補って余りある頼もしき仲間達も又、彼女にとっての掛け替えのない戦力であるのだ。
そして——その仲間達合流と共に、
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