Act.62 古代竜種討伐会議
連星太陽が朝を引き連れやって来た頃……しかしその日は生憎の空模様。
比較的好天に恵まれる
曇天は山々へ向かうにつれ暗雲となり、山脈の頂上近辺では天の怒りと伝承に残る落雷が後を絶ちません。
さらには一雨来そうな雲行きの中、
お宿の一角——申し訳程度の広間でテーブルを囲む私達は、先の自分の醜態から一転……普通にガチの作戦会議を展開します。
その中で重要事項と言える点……我々がこれより討伐せんとする
「まずは奴の生い立ちからだ。奴はそもそも最近までは、
「ざっと六十年って所か?あのアーレスがまだ若造の頃は、そこまで驚異とは言えなかったんだファッキン。」
触れられるのはやはり……かの
リド卿にサラディン氏はまさにその時代、
精霊に
さらに続けるサラディン氏は——
「それが、現アーレス帝国皇帝ゼィークが産声を上げた時期から始まり……どういう訳か、突然勢力を伸ばし始めた奴は——
「だが害獣扱いを受けぬ
「なるほど……確か竜種でも
「ん?ああ——」
竜種の位によって異なると言う、対生命に於ける保護原則上の話を持ち出し……納得しそうになった私は、僅かに引っかかった点——
その点を口にしたテンパロットへと話題を振ります。
思い出した様に語るテンパロットも、自分が口にした情報上の違和感を感じ始めます。
「オレが聞いた情報でも、
「そこへ
「だろうね……。」
サラディン氏の情報とテンパロットの情報から見える違和感。
それを冷静に吟味し―― 一つの仮説へと辿りつきます。
その決め手となったのは――
「リド卿。
「ふむ……中々に長けた思考じゃの。いかにもじゃ。少なくとも一定量の霊銀に属する金属が、竜種体内で
「それが最低限の定義、であるの。」
「やはり、霊銀――か。」
竜種が下位、上位――そして古代種と、世界的に正式な分類がなされる境界線。
その明確なる線引きは下位、そして上位以上に分かれる。
重要なのは竜種が獣であるか――或いは異獣に該当するか、なんだ。
そして獣である竜種が
取り込まれた岩が体内の食物をすり潰す事で、分解促進が促されるためだね。
「巨大な生命体は生存するためのエネルギーも相当量のはずだ。
「仮定として、その食した岩に大量の霊銀が紛れ込んでいれば――
提示した解へ皆がそれぞれの反応を示します。
私と長き付き合いである護衛、テンパロットとヒュレイカはこちらを見るやしたり顔。
リド卿とサラディン氏に至っては、まん丸と見開いた目でこちらを凝視しているね。
さっき醜態を晒したぶん、ここはドヤ顔を送り付けてやるとしよう。
「……こいつぁ、想定外だぜクレイジー。確かにあの
「うむ――これはたまげたわい。生態系上の情報――と言うやつか?その知識はあのひよっ子から叩き込まれた物だろう……ミーシャよ。」
「ああ、その通りさ。これはサイザー殿下が得意とする分野の一端――生命の生態系に於ける情報の基礎なんだ。未だ
「けれど殿下は、そうした生命の生きる様すら明確な情報として収集し……世界の最先端をひた走る情報戦略を磨き続けておられるんだ。」
殿下から叩き込まれた内容としては、
さらに未だ未確認ながら……
それら竜種はみな本質部分で似通った生態を持ち、さらには長命にまかせて幾多の歴史へ股がるように存在していると聞き及んでいた。
蓄積された情報を元に、今対象としている
「その生態系に準ずる情報を考慮した上で、今対象としている
「そいつが
そして今度は、私を見やる護衛達が一斉にリド卿とサラディン氏へとドヤ顔を送りつけ——「どうだ、ウチの主は!」感を漏れなく叩き付けます。
それを受けた二人の新参な
「カカッ!何とも恐れいったわ!よもや我らが提供した情報から、そこまでの詳細な事実へ辿り着こうとはっ!のうサラディンよ!」
「へっ……見習いを名乗っちゃいるが——あんたは想像以上にクレイジーだぜ?賢者ミーシャ。正直俺の知り得る
「こりゃぁオリアナ嬢に着いて行くには、相当の覚悟が必要になるってもんだぜファッキン。」
二人の
それもまさかの、かのアーレス上皇陛下を上回る賛美には少しむず痒いけれど——分かっている……私にはそれと、独自開発の精霊魔法に純物理魔法しか取り柄が無いんだ。
その事を心へ再度刻む様に、信に足る仲間を一望した。
それしか取り柄が無いならば……今この目に映る仲間の協力を得ればいい。
今までも——そしてこれからも……——
覚悟と決意が洗練され……まさにここから
そう——そんな覚悟をユルユルのドン底に叩き落としたのは……例によって例の如く、グウッッ…と木霊したあの音でした。
「……っ!?いや、その——決してこれは、お腹が減ってるとかそういう訳では無く——」
「……ハラ黒さん、私は失望したよ。自分は色物ではないと豪語した結果がこの有様とは……。そんな君には、特別に食費面でも借金を——」
「だから私はハラ黒じゃぁ——えっ!?食費まで借金て、それ酷くないっ!?」
いつもの如く反論も辞さないオリアナ……けど直後の食費面での借金認定には悲壮感さえ浮かべ——
「ああ……食費面の借金はオレでもねぇな。お初だ——やるな、オリアナ。」
「ちょっ……!?」
「あたしでもそれは無いわ。まあむしろ、破壊した建物弁償の中にはあらかた含まれてるんだろうけど……。それ単体なんて……お初ね——オリアナ。」
「だから……——」
「オリアナお姉ちゃん……食いしん坊さん、なの。」
「ふ……フレード君まで!?」
まさに空気を壊したのは貴女ですとの、一同の
まあ流石に彼女へ着いて行くとサラディン氏が言ってくれた手前、これ以上は彼らへも失礼に当たると……会議を一旦開き、待望のお食事タイムへと移行するとしましょう。
「冗談はさて置きと言いたいところだけど、オリアナに関する食費は実際切詰めるべきラインを超え始めてるからね。そこん所覚悟しておく様に。」
最後のトドメ……のつもりは無くとも、流れでそうなってしまい——
遂にオリアナが白目を剥いて卒倒したね。
そんな訳で——食事抜きになるよりはマシと思って貰う方向で、私達は朝食を取るべく食事処へと向かうのでした。
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