Act.27 メイド嬢と機関銃
ツンツン頭が察した闇ギルドの本質。
私も危うく出し抜かれる所だったけど……それだけに相手の首魁が一枚も二枚も上手だったと言う事です。
闇ギルド界で幅を利かせたとのたまう首魁の発言も、あながち嘘とも言えないね。
それにしても——テンパロットが精霊装填を終える間も無く……その上、装填済みのヒュレイカが敵を打ちあぐねる事態は何としても打開したい所——
敵が人狼団体御一行の点はさて置き、即座に打開策を思考に描いた私はその該当する人物へと走る。
「おい、野郎ども!そのロリ賢者を自由にさせるな!賢者を名乗る以上どんな攻撃術式を展開してくるか分からん……そいつを捉えて報酬の足しにでも——」
何やら失礼極まりないセリフが吐き捨てられて、少しイラッと来ましたが……いちいちそこへ反応している間はありません。
「という訳で、オリ黒さん……助けに来たんだけど——申し訳ない、一働きしてもらうよ?」
悲しくもあられもない姿な彼女の拘束具を魔術にて開錠し、速やかに解放した攫われメイドさんへ——微妙に非情な宣告をニヤリとしたり顔で通告します。
「プハッ!……あんた達なんで私を——って……はあぁぁっ!?いや、一働きってドユコト!?」
「ドユコトも何も、君が戦えるからに決まってるじゃないか。」
「いやっ……その発想はオカシイから!?
「二回言えというならあえて言おう——君が戦えるからに決まってるじゃないか——理解したかい?」
オリ黒さんも呆気に取られて、開いた口が塞がっていない様だね。
だがしかし——だからと言ってこれ程使い勝手のいい……もとい、頼もしい助っ人はいないからね。
そうやってオリ黒さんを丸め込みながら、前もって準備し……物陰へ隠していたウエポンバッグに
「これは君への——正確にはヴェゾロッサの君ではなく……私の心さえ撃ち抜かんとした奇跡のメイド、〈ハートを撃ち抜くオリリンにゃあ☆〉さんへのプレゼントさ。さあ、構えてくれ給え。」
「——何を勝手にプレゼントとか……うぇ!?これ……軍事国ロスキュリアン地方製の
「君の近接格闘対応ハンドガンは、射程も中近接で威力を発揮するカスタムのはずだね?しかしあんなデミ共や異獣相手には威力も心許ない……そう思ってツンツン頭に頼んでたんだよ。」
テンパロットに散策を頼んだついで——今後のもしもの対策とし、この得物を彼の独断と偏見に任せて頼んでいました。
私も
しかしまさか、こんなにも早くそれを実践投入するハメになろうとは——これぞ正しく転ばぬ先の杖と言う奴だね。
幸いにもこの武装は、オリ黒さん個人の戦闘力増強に留まらず——私の術式如何で彼女の戦力を大幅に強化出来るギミックが絶賛装填済みだ。
見習い武器商人と見習い賢者にとっては心強い事この上ない。
て事で……こちらにとっての即戦力さんに火をいれるため——そして、今尚人狼達と奮戦している仲間へ速やかな支援を送るため——
オリ黒さんへ……あえての言葉を放つ事にした。
「因みに言っておくけど……君はすでに、ヴェゾロッサ本体から見放されてるからね?あの闇ギルドへ依頼を振ったのは他でもない……君の身内——と言う事になる。」
「——……なに……よ……それ——」
ここでしおらしく、自らの不幸を嘆くならばこんな結果にもならなかったのだろうけど——
「ふ……ふざけん……なーーっ!私がどれだけ組織のために、血と汗流して尽くしたと思ってんのよっ!あったま来たっ——やってやるわよ、こんちくしょーーっっ!」
はい——この有様です。
こんなだから、見習い風情で経験不足のまま裏組織を名乗り——事を構えた末に、自分の不始末で貴重な組織の戦力を失った挙句——
日銭を稼ぐために、メイド道の門を叩く事になるのです。
敵ながら組織の気苦労には同情さえ浮かんだね。
けれど……その言葉を放って感じた事実——私はすでに彼女を敵とは見られなくなっている現状。
恐らくヒュレイカも同様——あのテンパロットでさえ、こんな極上の代物をオリ黒さんのために
そこで私はこの件が事無きを得た暁には、保護観察の方向で彼女を——オリアナ・ギャランドを仲間へと誘う算段です。
フェザリナ卿へも、今回の件で同意を得るだけのネタは十分な所——
だからこそ私は——オリアナ救出依頼を快く受け、彼女のために馳せ参じたのです。
「さあ……こちらで
すると完全に火が入ったオリアナは——
「侮らないで欲しいわね!私を救ってくれた奴が今無防備だからって、その命を脅かすような下衆な真似はしないわよっ!それじゃあいつらと変わんないじゃないっ!」
「信用して——構わないかい?」
「ええ!信頼しなさい、賢者様!」
それは見た事もない敵対者であった者の顔——それこそ長年付き添った、友の様な頼もしき表情。
そして私は、自分が完全に無防備になる精霊術式詠唱に入ります。
信頼しなさいと言った、友のような少女を信じて——
∫∫∫∫∫∫∫
「……どういうこった!?訳が分かんねぇぞおい……何で今しがた攫って来たメイドが、機械帝国の犬共と共闘してやがる!敵対してると聞いてたぞ俺は……!」
手下の人狼が法規隊と奮闘を見せる中——優男の頭取は訪れたる事態に困惑していた。
それも当然……荷車から救い出されたメイドの少女——彼女が助け出されると言う点にさえ疑問を隠せぬ頭取。
武器商人より聞き及ぶ、法規隊とメイド少女の敵対構図――その事実関係から逸脱する現状は困惑度合いをさらに深めるには十分であった。
「そうだね!確かに私と彼女は敵対関係であったよ!?だがしかし——彼女の素性を大まかに聞き及んだ君達も、こちら同様に彼女を敵対者相当の扱いとしていたはず——」
「その君達へいい言葉を贈呈して差し上げよう……敵の敵は味方、とね!ジーンさんはそのまま盾に……そしてオリアナ——準備はいいかい!?」
「こちらはいつでも構わぬぞ、お嬢!」
「ええ、こっちも……準備完了よ!術式展開——初めて頂戴!」
頭取の困惑にしめたとばかりに煽りを
そして……桃色髪の賢者は完全無防備となる術式詠唱を、
『
賢者少女の術式展開に答える様に風の
刹那——その高圧縮された
中・遠距離射撃用の砲身は共通とし……トリガー及びグリップ上方から後方へ伸びるチャンバー内へ、
可動式チャージバレルをバレル先端へ展開する事で、アサルトライフルとしての機能へ長射程小型火線砲の機能を追加可能な魔導と機械が融合した実験型自動小銃。
しかし――
武装の詳細云々は未だ帝国内での実験の域を出ぬ極秘情報であり、闇の冒険者が知り得る所ではないが――それを視認した頭取は未知の武装と察し……直感が形勢逆転の危機を過ぎらせ——
すかさず手下に向けて声を張り上げた。
「お前らっ……避けろっっ!!」
頭取の放つ言葉と同時——
白黒少女の
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