第9話 竹林の刺客

林の中から白装束の女が二人出てくる。

見るからに刺客って感じだ。

一人は弓を、一人は剣を持っている。

魔獣もあいつらがけしかけたのか?




オレは、倒れたリンねーに駆け寄る。

胸に刺さった矢のねもとから血が吹き出している。


「ぐふっうぅ」


リンねーが、血と一緒に声を出す。


「リンねー」


俺はどうしていいか分からず、胸の矢を抜こうと力をこめる。


「うぐっ」


痛みに耐えながら、リンクねーがオレの顔を見つめる。


「抜かなくていいわ」


「でも、ち、血がでてる・・・」


「ど、毒が付いてる・・・」


矢を抜こうとした、オレの手を両手でつかむ。

冷たい手だ。


「速く、逃げなさい。」


「・・・・・・・」

逃げろと言われても、リンクねーほっとけないし。


「多分、狙いは私・・・

 ・・・時間を稼ぐわ」


オレの手をどけて立ち上がろうとする。

抱き抱えるようにオレも立ち上がる。




「ショウ~!」

「よけろ~!」


母ちゃんと、ライさんの叫び声がして振り返る。





「ガキーーン!」

 


矢が飛んできたが、腕輪に当たり助かった。


ふう、危なかった。 

目の前には、剣を構えた白装束の女が迫っている。



ヤバい! 

どうしていいか分からず両手で頭を抱えた。



「ガキーーン!」


運よく腕輪に当たって助かったが、次を振りかぶっている白装束。


姉ちゃん守んなきゃ。


ふらふらで倒れそうな姉ちゃんの前で両手を広げる。  


このまま切られたら、死んじまうことぐらいは、オレにも分かってた。

でも、惚れた女の為に死ねるなんてかっけーじゃん。


さあ、切りやがれ!


白装束が、剣を突き刺そうと向かってくる。

ここまでだなと、目を閉じた。




「ドジュっ」



あれっ、痛くない。

目を開ける。

血まみれの剣を持った白装束が、スッと離れる。


「ウリャ~」 


今度はライさんが白装束に切りつける。

弓矢を打った白装束も剣に持ちかえライさんに切りかかる。


とりあえず助かったのか。


暖かい感触に、我にかえる。


いい臭いがする。

オレの大好きな母ちゃんの臭いだ。


あれ、母ちゃん。

オレは、母ちゃんに抱き締められていた。



「ショウ・・・」


母ちゃんの口に血がにじんでいる。


嘘だろ~。


背中から血がにじんでいる。

オレのたてになって切られていた。

オレの身代わりになって切られていた。


「か、母ちゃん、

お、オレ・・・・」


「笙のように天に届くような男の子は、泣かないの。 

・・・・強い男の子になるのよ。」


言い終わると、母ちゃんの体から力が抜けた。



「母ちゃん~~~」


いくら、揺すっても動かない。


嘘だろ。

母ちゃんは死んじまった。


とりあえず、地面に寝かせる。

母ちゃんの前で、座り込む。


「ショウ・・・ごめんね。」


横になった息絶え絶えの、リンねーが謝る。


これは、夢だ。

大好きな母ちゃんが、死んじまうなんて。

リンねーまで死にそうだなんて。


「姉ちやん、オレの嫁さんになるんだから・・・しんじゃやだ。」




「ショウが・・・王さまに、でもなったらね・・」


いつものセリフで答えると、優しく目を閉じた。  


オレの大切なふたりがいなくなっちしまった。


嘘だ!

ウソだ!

うそだ!


いやだ!

イヤだ!



厭だ!

 


オレは、優しい母ちゃんと綺麗なりんねーとの楽しいやり取りを思い出した。  

 

スーと、体から力が抜けていく。


楽しい思い出で頭の中がいっぱいになってくる。



リンねーみたいな、綺麗な人にあえてよかったなあ。 

母ちゃんの子供でよかったなあ。



ラッキー。



母ちゃんにだっこされてると幸せだつたなぁ。 


リンねーの踊りは夢の中にいるようだったなあ。  



ハッピー。



腹のあたりがぽかぽかしてくる。


身体中が暖かくなってくる。



なんて、気持ちいいんだ。


背中から肩にぞぞぞっと鳥肌のような感覚がする。嫌な感じではない、

気持ちが高ぶった時の感じだ。


ボトッ!


封魔の腕輪が地面に落ちた。さっきの攻撃で壊れたんだろう。



体が凄く軽く感じる。



気がつくと叫んでいた。




「ハイテンション!」

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