第8話 街道の魔獣

オレは、シン都への街道を馬車に揺られている。

森の中につくられた道で人通りは少ない。


皇都までは、10日かかり、すでに5日過ぎていた。


烏と呼ばれた五人組は、シン皇帝の密使で大鳥に乗ってやって来た。


興国の舞姫の噂は、皇都でも噂になっていて、皇帝が呼びつけたらしい。


商業組合長がベコベコ頭下げてたから相当偉いやつらなんだと思う。


紅桜楼では、トップスターがこのまま引き抜かれちまうことを心配した。


なぜなら、

16年前、チョウ国を潰し、妃であったセイ貴姫を連れ去ったのがシン皇帝だからだ。


オレたちの街は上手くやってるらしいけど、

他の潰された国は相当大変らしい。


皇帝に気に入られれば、そのまま留まることを強要されるし、リンねーが女好きの皇帝に手をつけられてしまう危険がある。


このまま、リンねーを逃がしちまおう。

って、案もでた。だけど、


「私なら、大丈夫だから」


と言う、リンねーの一言で皇都行きが決まった。


リンねーと4人の楽士。

護衛で、魔窟4兄弟外10名。

馬車の御者にライさん。

母ちゃんが、一人で置いとけないってことでオレも付いてきた。


リンクねーと一緒。

ラッキー!


そうそう喜んでいられないけどね。

皇帝から、りんねー守んなきゃいけない訳だし。


「まずいなあ」


御者をしている隣のライさんがつぶやいた。


「!?」


「魔獣の臭いだ!」


「!」


もしかして、あんた凄い人だったんかい!


「くる」

「がお~」

「たべる」

「はらへった」


4兄弟が馬車の前方へ展開する。


「ハッ!」

ライさんが馬車のスピードを上げる。


馬車よりも速いスピードで、疾走する4兄弟!


10人の護衛も、とりのこさらないように必死に走る。


ウオーーーーーーーーーーン!



森の中から、狼の魔獣が10匹襲いかかってきた。

人の二倍はある大きさだ。


「ちっ、間に合わなかったか」

舌打ちするライさん。


「お前ら、たのむぜ~」

4兄弟に声をかける。


「たのまれた」

「どどーん」

「ばきばき~」

「はらへった~」


掛け声と共に、魔獣の群れに体当たりする。


キャイ~ン!


次々に倒される獣たち。


「スゲー!」


あいつらまじで強かったんだ!

仲良くしてて良かった~!


「エイ!やっ!」


後ろから襲ってきた魔獣に手こずる護衛たち。


「任せて!」


リンねーが馬車の屋根に飛び乗る。


「氷の微笑!」


両手で印を結び、叫ぶ。

冷気に包まれるリンねー。


「氷の槍!」


リンねーの手から氷の槍が打ち出され、魔獣を倒していく。


えええええ~!


リンねーつよ~!

守られるのは、オレのほうか~い。


「みんな、大丈夫?」

リンねーが声をかける。



「ズドッ!」


振り返ろうとしたリンねーの胸に矢が突き刺さった。

矢に貫かれ、リンねーは馬車の下に落ちた。


「リンねーーーーー!!」

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