第7話 精霊の舞姫

 この国一の妓楼、紅桜楼コウロウロウ

 その中に、舞踏の間と呼ばれる部屋がある。

100の客席と奥には大きな演舞場がある。

全て高級品で飾られおり、豪華絢爛という言葉がぴったりである。


「まもる」

「びしっと」

「うまそう」

「はらへった」


魔窟4兄弟が見回りをしている。


ゆったりとした席に腰掛け、お客は料理や酒を楽しんでいる。


舞台の袖から、白い衣装を着た楽士が4人出てくる。

お客に挨拶をすると舞台の奥の席に腰掛け演奏の準備をする。

ショウの母親も、ショウをかまえている。

魔石灯が消え暗闇につつまれる。

一瞬の静寂後、学士が演奏を始める。


川の流れのように穏やかで、春の日差しを感じさせる。


5色の小さな光達が、妖精のように舞始める。


部屋の4隅で、6人の魔技使いたちが光を操っている。


「綺麗だね~」

ショウが魔技使いに話しかける。


「また、ただ見かい?」

ライが印を結びながら答える。


「オレは関係者だからな」

ショウがにかっと笑う。


「そろそろお目当てが始まるぜ。」


天にも届きそうな長い笙の音色が響いた。

光が舞台のまん中に集まり、明るく照らす。



天女が舞い降りてきた。


衣一枚だけ身につけている。

全身からは淡い光を発している。

肌は透明のように白い。

うっすらと塗ったほほ紅と赤い唇が美しい。

緩やかな音楽にあわせ舞台を舞っている。

彼女の手から落ちる氷の雫が、キラキラ輝いている。


まるで、精霊の舞姫のようである。



力強い笙の音色が鳴り響いた。



舞姫に集められた光が5色色に変わる。

楽士の演奏のテンポが一気に速くなる。


舞姫の踊りが力強く激しくなる。

獲物を狙う狩人のように。

求愛する娼婦のように。

観客席に身をのりだし挑発的な舞を続ける。

観客席の男たちは皆、自分に向かって舞われるものと錯覚し歓喜の声をあげる。

会場が熱気で包まれた。


ドドン!


太鼓の音と共に、光が消え暗闇となった。

一瞬の静寂の後、店内の魔石灯が点灯し明るさが戻った。


舞姫は舞台から消えており、氷の雫石だけがそこに残っている。


拍手と大歓声が会場を包んだ。


舞台の袖から、舞姫が手を降りながら出てくる。

舞台の真ん中で大きなお辞儀をすると、

先程の数倍の大歓声と拍手がまきおこる。


「いいぞー」

「興国の舞姫~」

「リンちゃ~ん」

「サイコー!」



「やっぱリンねーはいいねえ、ライ」

仕事を終えたライに話しかける。


「ショウよだれが出てる」

ライに突っ込まれる。


リンは客席を回りお客たちに話しかけている。



バタン!


荒々しく部屋のドアが開かれた。


入り口には5人の黒ずくめの男たちが立っていた。


「チッ、烏か」

ライが舌打ちする。


真ん中の男が回りを見渡すと、手に持った金色の巻物を、目の前に広げる。



「誓詞である!」




________________

【今日の用語解説】

誓詞:皇帝からのありがたい命令。


3人称表現の時ちょっと気取った言葉使ってましたが、これからは分かりやすい表現でいこうかなと思っております。

初作品にお付きあいいただきありがとうございまする。(  ̄▽ ̄)








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