第6話 封魔の腕輪

「おしまい」

うめぼしがため息をつく。


リンねーや果物売りのライさんから何度か聞かされたおとぎ話だった。

まさか、父ちゃん母ちゃんの話だったとは知らなかった。


「オレの父ちゃんは龍だったのか」


「あほう」

うめぼしが机をたたく。


「とつも強くて優しい人だったわ」

いつもの優しい顔のかあちゃんに戻っている。


「なんで、父ちゃんは英雄なのに話しちゃいけないの?」


「・・・」

言葉をつまらせる母ちゃん。


「大人の事情さね。

まあ、言っても分からんじゃろうが


シン帝国に支配されたといえ、今のこの街は、戦争に巻き込まれることもなく、帝国一と呼ばれるぐらいになってるからの。


商業組合の連中がうまくまとめておるわ。

リュウの仲間たちはみんなでていっちまったがな。

ライの坊主は、まだ果物売りしとるのか?」

「はい」

母ちゃんが頷く。

「ふふふ、あのはな垂れ男気だけはあるようじゃの~」

と目をほそめるウメボシ。

「ライさん、父ちゃんの知り合いだったんだ。」

「いつも、リュウのあと追っかけてこきつかわれてたがの」

ウメボシが思い出し笑いする。


「坊主、左手をだしな。」

言われた通りにすると 

ガチャンと金属製の腕輪をはめられた。

左手を上下に振ってみる。取り外そうとしてもとれない。

「ふふふ、そう簡単にはとれんよ。

それは、封魔の腕輪といって魔技を使えなくするもんじゃ。

普通は、囚人とかが暴れないようにつけるもんじゃがね。

魔技使いとかになって魔窟掘りになるのでもなければ、普通に生活するには困らんじゃろよ。

これを付けておけば、そこのレイラより先に死んじまうことはないからな。どうじゃ?」


「・・・?」



「ま、まだ魔技も使えんようだからな。

覚えず!使わず!

じゃ。レイラこれでよいかの?」


「巫女さま、ありがとうございます。」

母ちゃんがおじぎをする。

「ショウお母さんがいつも一緒だからね。」

ぎゅっと、抱きしめられてる。

おっばいやわらけ~。

「一応いっとくが、おぬしのギフトは

ハイテンション

って名前らしい。

レアの効果は分からん。鑑定出来んからな。

覚えず!使わず!じゃ。では、またの。」

ふっと、魔石灯が消えた。

ウメボシも消えた。


もののけか!


「ショウ帰ろう」

「うん」

「ずっと、一緒にいようね。」

「当たり前よ!」

リンねー嫁さんにして一緒に住むし。

でも、魔技使えないと王様になれないか?

大商人になって、この街の頂点にたてば・・・

王様と同じかぁ!

やる気出た~!


「お仕事急がなきゃ!」

二人で走り出した。





  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る