最終話 エピローグ④


 目を覚ましたのは、もう見慣れたAoB本部の医務室だった。

「ツーさん、おはようございます……」

 近くの椅子に腰かけていたのは《白衣》のツーだった。

「あ、もう私の事は若林でいいから」

「え?」

「AoBは解散って事」

「ええ!! でもまだ後処理とか!」

「まあ、あるわよね色々と、でももうAoBを名乗る必要は無くなったじゃない?」

「? どういう事です?」

「白はもう敵じゃないって事!」

 ツーこと若林に起こされ、促されるままに医務室を出る。そこでやっと気づいたが全然見慣れない医務室だった形は全く同じだったから気にしなかったが本当なら真っ黒のはずの医務室が真っ白になっていたのだ!

 そしてAoB本部内も全て黒意外の色になっている、木目調、モダンチック、ドット……あ、この床は黒い……そんな事をボーッと考えていた聯。

 案内されたのは木目調のドア。会議室の文字。

「さ、入った入った」

 中に入る、白い壁、木目調の円卓。青い椅子。白いスクリーン。……一晩で変わりすぎだろと聯は思った。

「よくやったとまずは功労者を称えようではないか」

 そこにはアーサー・ワン。アーサー・スリーこと若林。ハク、然、はじめが揃っていた。

「よくやったよ後輩」

「すごいです!」

「君は本当に……ぐすっ、タイプ:ライターの全てを引き出してくれた……!」

「君は時代が時代ならば英雄と呼ばれてもおかしくない存在だ」

「おかえりなさい聯。あなたのおかげで世界は救われた」

 しばらくの沈黙、しびれを切らしたように然が突っかかる。

「なんか言えよ後輩!」

 聯は後頭部を掻きながら。

「いやぁ、こういうの慣れて無くって……なんというか照れるというか……」

「んだよ褒め損かよ、返せ! 俺の褒め!」

「無茶言わないで下さいよ!?」

「さて、では事の顛末から話そうか、全ての元凶の――」

「そうだ、タイプ:ライター・バックスペースってどうなりました。アイツ自己再生能力とか無いか心配で……」

「サードと言おうとしたのだがね、そうか君的には全ての元凶といえばタイプ:ライター・バックスペースか。ふっ」

「あ、秋山さんが笑った」

 ワンこと秋山がスリーの事をじろりと睨む。

「ひええっ」

「犬井君ってば学習しないなぁ」

 今度は若林が睨まれる。

「えと、それでどうなったんです?」

 聯の切り出しに答える秋山。

「タイプ:ライター・バックスペースについてだが中身まで完全に破壊されていた。アレでは仮に自己再生機能などあっても復活は不可能だろう」

「良かった……」

「次にサードについてだが」

「あの、そのサードって呼び方なんですけど」

 ギロリと今度は聯が秋山に睨まれた。

「未来……ってのはどうですかね? 本人が学園で名乗ってた」

 コホンと秋山が咳をする。そして話始める。

「サードこと未来少年の事だが、反抗の意思はないように見受けられたのでこちらで保護する事となった。彼も糺の被害者であることに変わりはない」

 ホッと胸を撫でおろす聯。未来の行く末が心配だったのだ。彼とは数度戦った程度の敵でしかない。それでも未来に聯は自分と同じ匂いがする。もしかしたら自分はああなっていたかもしれないという幻想を見たのだ。それが聯が未来を心配する理由だった。

「以上で事の顛末を終えようと思うが、どうだね? 質問などは?」

「未来には会えるんですか?」

「君は……しばらく会わない方がいいだろうな、いくら反抗の意思無しとみられたからと言って下手に刺激しない方がいい」

「刺激……いや一応友達なんですけど……」

「念のためだ。しばらく待ちたまえ、いつか会える」

「……そうですか、分かりました」

 引くところは引かねばならない。それが大人と子供の違いだ。と言っても聯はまだ子供だが。

「私も未来ちゃんに会いに行きたいな」

 ハクも聯に続いてそんな事を言う。

「仲良かったもんな」

「うん……まあそれも今思えば……」

「作戦、だったのかねぇ」

「実は男の子だってクラスにバレたらみんなどういう反応するかな?」

「そりゃ驚くだろうぜ!」

 そこに秋山が割って入る。

「何故、君達はサー……未来少年が学校に戻れる前提で話を進めているのかね?」

「そりゃだって」

「友達ですから」

「むぅ……努力はしよう……」

「秋山さんが折れた!?」

 犬井さんが睨まれた。


 聯の家に帰る途中、徒歩でゆっくり帰る事にしたハク。

「これからどうしようかハク」

「明日から学校だよ?」

「ああ、そう言えばそうか……」

「ちなみに然達も学校に入ってくるって」

「あの人いくつなんだ……?」

「はじめちゃんとは仲良くなれそうで嬉しい」

「解析課の仲間だっけ」

「そうそう意外とすごいんだよあの子」

「えっ何が?」

「探査能力」

「ああ……そう……」

「なんか今、邪な念を感じた」

「超感覚は勘弁してください……あ」

「コンビニだね? 寄ってく?」

 二人してコンビニに入り、コンビニスイーツを物色する、そんな中、聯の目を引く看板があった。

 真っ白なソフトクリーム。

「本当にそれで良かったの?」

「無性にこれが食べたい気分だったんだ」

「変なの」

「そういやAoBの新名称って何になるの?」

「さあ秋山管理事務所とかじゃない?」

「かっこ悪」

「私に言われても……」

「じゃあさこういうのはどうかな……」

 耳打ちする。

「じゃ略してBFだね」

「うん悪くない」


 翌日、新しい本部の名前はブランクファクターに決定した。

 空白に新たな因子を生み出す社会再生機関『ブランクファクター』

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白紙因子 ブランクファクター 亜未田久志 @abky-6102

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