第46話 ファクター・ブラック


 イレイザーが出現したという警報がAoB本部内に鳴り響く。

「ファクターじゃなくてイレイザー反応だと……?」

 会議室にてアーサー・ワンが珍しく驚愕を露わにする。

「解析課の調査によると、能力値からして既存の……マスターロットと呼ばれるイレイザーが現れる前、旧態のイレイザーだと思われます」

 職員の一人が報告に来る。同席していたスリーがその情報を元に分析する。

「恐らく、まだどこかに残っていた糺博士の研究施設を利用したものかと」

「まだそんなものが残っていようとはな……ヤツは一人でどこまで根を張っていたというのだ」

「おい、ワンの爺さん。警報鳴ってんのに後輩の野郎は出動しないのか? ハクの奴もどうした?」

 開いた会議室のドアに寄りかかって然がそんな事を言う。

「学校だ。今回は君が行きたまえファクター・ブラック」

「ケッ、アイツらが優雅にスクールライフ送ってる間にこっちは戦闘ですか。ハイハイ行きますよ、世界平和のためにヒーロー頑張っちゃうぞー……」

 会議室のドアをバタンと閉めて出ていく然。スリーはワンに聞く。

「彼、本当に改心したんでしょうか? 相変わらず態度は悪いままですけど……」

「信じるしかあるまい。此処に戻って来た時の彼は真剣そのものだった……んだがなぁ……」

 遠い目をするワン。やはり大きな力は人を変えてしまうのかもしれない。そんな事をワンは考えていた。


 現場の住宅街は白紙化現象に見舞われていた。そこにいたのは人型だが両手両足にローラーが付いた機動型のようだった。

「旧態のイレイザーってのはマジらしいな」

 ――overwrite

『OK overwrite to the factor』

 黒鉄の騎士甲冑、アルファベットの意匠、ファクター・ブラックがその姿を現す。

『attack』

 意匠の一つを触る。すると赤いオーラに身を包まれるブラック。地面を踏みしめ、馬鹿力で加速するブラック。それはまさしく弾丸のようだった。機動型のイレイザーを見事捕らえ、地面を引きずりながら進んでいく。無理やり止まるが、その後ろに残ったのはブレーキ痕ではなく。もはや破壊痕のようになっている。

 そして肝心のイレイザーは最初の突撃だけで大ダメージを受けている。

『チッ、物足りねぇなぁ』

 一発イレイザーを殴りトドメを刺す。

『restoration』

 意匠の一つを触る。すると暖かな光にイレイザーが包まれ元の人間の姿へと戻っていく。

『こんなもんよこしてアイツはどうするつもりなのかねぇ……』

『然、終わった?』

『ああ。はじめか。終わったよ、今戻る』

 ファクターを解除する然。その瞬間だった。

 バチバチバチッ! 電撃が然の首筋を走る。暗み行く意識の中、見えたのは軍用のブーツだった……。

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