第45話 潜伏


 古びた木造建築の廃墟、その中で少し前の新聞を読む軍服の少年、サード。その見出しには『種子島宇宙センター、ロケットの発射に成功』の文字。新聞を壁に投げつけるサード。

「クソッ! 奴ら僕を探し出すために衛星まで使いだしやがった!」

 これでは迂闊に力を使う事が出来ない。タイプ:ライター・バックスペースに情報を集める事が出来ない、さらなる進化を迎える事が出来ない……。サードは考える。何かいい手は無いかと。そこで思い至る。

(糺博士の研究所で残っているものがまだあったがずだ!)

 そこでならタイプ:ライター・バックスペースを使わずともイレイザーを生み出せる。

 しばらくはそこに潜伏するしかない。そう考え廃墟を後にした。


 時刻は深夜の一時、暗い夜道に人っ子一人いない。そんな道に入り込んだ女性が一人。

「うー、早く帰って寝たい……」

 そんな時だった。ふと後ろに気配を感じた女性は後ろを振り返る。するとそこにいたのは変わった格好をした少年だった。軍服……のコスプレだろうか? 少し気味が悪いと思った女性だが相手は子供だ。特に気にする事は無いだろう。と思い再び歩き出した。すると、だ。

「ごめんなさいね、お姉さん」

 バチバチバチ! という音と共に気絶させられる女性。スタンガンを首に押し当てられたのだ。

 女性をお姫様抱っこの要領で抱えるとサードはそのまま一つ飛びに跳躍して屋根の上まで登りその上を駆ける。しばらく下のち、辺りに人がいない事を確認して道に降りて地面にあるマンホールの蓋を簡単に開けてみせる。そのマンホールは他のマンホールよりもいくらか大きく作られていた。そして中は階段状になっていた。

 そこを女性を連れて入っていくサード。階段を降り切った先には真白の空間が広がっていた。

「……ううっ」

 女性が身じろぎをする。

「おっと目が覚めてしまいそうですね。手早くすましましょう」

 真白の空間に鎮座するのは口を横一文字に開いた大きな箱、中にはリクライニングチェアのようなものが存在していた。そこに女性を寝かせるサード。

「良いイレイザーになって下さいね? では良い夢を……」

 閉まる箱、完全な立方体となった箱は時折、煙を吹き出す。

「第一段階完了……後はこれがいつまで続くかだ……」

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