サード編
第44話 現状報告
「まさかあの白髪カップルが帰ってくるとはな」
「未来ちゃんと入れ替わりでねぇ」
そんな話が教室の中をぐるぐると渦巻いている。
そう、サード炙り出す事に成功した
理由は一つ、ここがAoBが管轄する学園だからである。いざという時に動ける柔軟性はとても大事だ。そしてこの学園の地下にはAoB本部がある。一石二鳥というわけだ。
授業も終わり放課後になれば自然と本部へと足が向く二人。誰にも見られないように表向きは障がいのある生徒のために作られたエレベーターに乗り込む、そして規定の回数ボタンを操作すれば本来行けないはずの地下へと行けるというわけだ。
コンクリートの小屋の地下でも、オフィスビルの中でも、そして学園の地下でも変わり映えしない真っ黒の
「アーサー勢ぞろいですね」
「それほど事態は急を要するという事だ」
ワンが重々しく発言する。ツーもスリーも真剣な表情だ。
「サードの持つタイプ:ライター・バックスペースとやらの情報収集システムと自己進化プログラムというのは非常に厄介な代物だ。このままサードを野放しにし続ければいずれ抑えきれない敵となろう」
「そこで開発されたのがまず『ファクターレーダー』」
スリーがワンの後ろのモニターを指さす。目白学園を中心とした地図のようなものが表示される。
「人工衛星から、今はこの周辺を探知しているんだ」
「人工衛星……って打ち上げたんですか!?」
「でなければこうして敵を探すことも出来ん」
ワンの言葉に重みが増す。今更そんな事で驚くなといった風だ。
「さらに開発されたのがこれ! デュアル・タイプ:ライター!」
「デュアル・タイプ:ライター? でもタイプ:ライターはもう強化されたんじゃ……?」
そこで指を横に振るツー。
「技術は常に進歩するものよ。ねスリー君?」
スリーは深々と頷く。
「我々、技術班は、タイプ:ライター・バックスペースの情報収集システムと自己進化プログラムに対抗するため、その一手先に行く事にしたのです!」
聯とハクが同時に首を傾げた。
「一手先?」
「その通り! 今までは入力の必要のあったタイプ:ライターですが、今回のデュアル・タイプ:ライターにその必要はありません! 変身者の思考を読み取り自動で武器の生成、身体能力の強化などを行ってくれます!」
「思考だけで!?」
聯の反応がまるで深夜の通販番組のようだ。とハクは思ったが口には出さないでおいた。
「これで敵とのレスポンスの差を埋められるはずです!」
「おお……!」
まるで子供が誕生日のプレゼントを見るかのようにデュアル・タイプ:ライターを見つめる聯。若干呆れ顔のハク。
その時だった。会議室のドアが開かれる。
「そんないい代物なら、後輩より先輩の俺にくれよ、なあはじめ?」
「え、えっと、っていやいやダメだよ
「先輩……」
遇道然とかつてはファーストと呼ばれていたイレイザーの少女はじめの二人がそこにいた。
「そうだ、はじめ君の言う通り、順番は守ってくれないと」
「然君、君の分のデュアル・タイプ:ライターは現在開発中だ。しばらく待ちたまえ」
スリーとワン、二人がかりで抑え込まれる然、渋々といった感じで了承し、聯の隣に座った。はじめはその反対の空いている方の然の隣に座った。
「なんで隣に座るんすか、席いっぱいあるでしょう」
「まあいいじゃねぇか後輩、そうかてぇ事言うなよ」
「というか、なんであのイレイザーだった子までいるんですか?」
「解析課で働いてるからだよ、悪いか」
別に悪くはない。悪くはないが元々がこの然とそりの合わない聯だ。その連れともあまり仲良く出来るとも思えなかった。
(いや、そう言う先入観持たない方がいいかな……この先輩と仲いいからって悪い奴とも限らないし、先輩だって改心したみたいだし……)
そんな風に思いながらはじめを見ていたらそっぽを向かれた。そしてハクから禍々しいオーラを感じる聯。なんだこれは。
「さて以上で現状の報告は終わりかな」
「そのようだ、皆、仕事に戻ってくれたまえ」
「はーい」
ツーとスリー、そして然とはじめが会議室を後にする。残る聯とハクとワン。
「仕事って、俺は何をすれば?」
「ファクターレーダーに反応あるまで待機、以上だ」
にべもなかった。
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