第43話 知ってる天井


 ゆっくりとれんが目を覚ます。その瞳に映り込んだのはなんの変哲もない黒色の天井だった。

「知ってる……天井だ……」

 なんか似たようなセリフをどっかで聞いた覚えがあるような無いような気がしている聯だったが、それよりも自分が家に帰って来ているという事実に驚く。

「あれ……俺、何してたんだっけ……確か……」

「いやー、すごいわねー、新型ファクターのダメージカットシステム。あそこまで重傷を喰らいながら本来のダメージはほとんど無し。でもあくまでそれは肉体的な話で精神的なダメージまでは庇い切れないのが難点よねぇ」

「うわぁ!? ってアーサー・ツー? なんで俺の家に……」

 半身を起こして、声のした方を見やる、そこには勝手に聯の椅子に座っているのは黒髪に黒縁眼鏡に黒衣の女性だ。

「そりゃ勿論、検査よ検査、火達磨になった挙句に光線に灼かれたんでしょう? そりゃあ悩もダメージと勘違いするわよ……」

「火達磨……光線……そうだ俺、サードと戦って!」

「残念ながら逃げられたって然君からの報告よ」

「然……そうか、あの人が俺を助けに……でもどうして?」

「彼から復帰を願い出て来たの、もう逃げないでちゃんと人々のために戦い対って。一体どういう心の変化があったのやら。恋人でも出来たのかしらね?」

 艶やかに笑うツー、しかし聯は俯いている。

「そんな先輩でも、サードには逃げられた……」

「それに関してはこっちも遺憾ねぇ。君との戦闘で多少なりとも疲弊していたはずのサードを然君の追撃があれば捕らえられると踏んだんだけど、、敵のが一枚上手だったみたいね」

 その後沈黙が訪れる。思わず戦いの事を思い出し、半身ふらつく聯。ツーそんな連の背中を支えながら。

「大丈夫、もうすぐファクター探知機が完成するわ。そしたらサードに逃げ場はない」

 そう諭される。少し落ち着く聯。すると辺りを見渡しだす。

「そういえば、ハクは?」

「帰らせたわ、もうこんな時間だしね」

 時計を見ると深夜の三時だった。

「じゃあもう寝てますね……」

「どうかしらね、あなたの事が心配で寝れて無いかもよ?」

「ちょ、ちょっとからかわないで下さいよ!」

「あははっ、ごめんごめん、でもその分だと元気そうだね? じゃあ私もそろそろ帰るから」

「あっ、はい。ありがとうございました」

「じゃ元気でねぇ~」

 バタンとドアが閉まる音がする。

 すると途端に眠気が襲って来た。聯はその睡魔にやられ再び眠りについたのだった。

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