第41話 サード


 AoB本部。

「君達の言った手はず通り、君達は別の学校に転校することになった」

 アーサー・ワンが声を低くして言う。

「そして、今頃、その事が、どこの学校に転校したかまで克明に話されている事だろう」

 ハクが挙手をする。

「そこまで詳しく話すと罠っぽくなりませんか?」

「しかし、行く先不明ではサードも動けまい。君達の作戦通りにやるならこれがベターだ」

「後はサードが転校届を出すのを待つだけか……」

「悪くない作戦だ……問題はサードが突如、失踪した場合などだが……」

「え゛っ」

 その事を考慮に入れていなかった。転校届など出さずに雲隠れし、姿を変え現れれば……いや待て。

「ワンさん、その心配はありませんよ、やっぱり俺達の後をついて来たヤツがサードに間違いはないんですから」

「なるほど、確かに聯君の言う通りだ。学園に伝えてある転校先に新しく現れた生徒もしくは教師がサードである確率は十分に高い」

「後は待つだけ……後は待つだけ……」


 数週間後。

「…………まだ来ない」

 虚無、聯のその表情は虚無を映し出していた。確立し始めていた学園生活を投げうってまで起こした作戦が上手く行っていないのだ。こうもなる。

「ねぇ聯、追い打ちをかけるようで悪いんだけど、もしサードが既存の生徒や教師と入れ替わったりしたらマズいんじゃないかしら……」

「……!?」

 驚愕のあまり声も出なかった。


「それじゃ被害者も出てるし、まんまと潜伏されてるし、こっちが二倍被害を受けてるじゃないか!」

「も、もしもの話よ……こうなったらもう、観測室のファクター探知機の完成を待つしかないわね……」

「……なあハク、俺はあんまりハクに超感覚を使って欲しくないと思ってるけど……」

「ごめんなさい、超感覚でもファクターの位置は掴み難いの。観測を書き換える力だからかノイズがかったように見失ってしまうの……」

「そっか……いや、こっちこそごめん、無茶言って」

 二人して落ち込む。その時だった。ハクの携帯に連絡が入る。

『ワンだ。目白学園の生徒の一人が転校届を提出した』

「名前は!?」


『大華未来』


「聯! 転校届が出された! サードが化けてたのは未来!」

「マジかよ……! でもようやく尻尾を出しやがった!」

『今日、送別会を行うそうだ。場所を送る。そこで仕留めてくれ』

「了解しました」

 通話を切る。

「今日、大華未来の送別会があるって……狙い目はそこしかない!」

「よし、行こう! 決着を付けに!」

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