第37話 調査


 れんとハクは二人して保健室へと向かう。

 そこには一見して誰もいなかった。だがベッドのカーテンを開く。するとそこにはいびきをかきながら寝る箕島の姿があった。

「寝てやがるな……犯人だと思うか?」

「可能性は捨てきれない……と思うけど……」

 すると話し声に箕島が目を覚ます。

「あ? んだよ白髪カップル……なんか用か?」

「白紙化現象の避難訓練があったのよ。警報聞こえなかったの?」

「ん、ああ……聞こえなかったな」

「マジかよ……」

「んで、訓練は終わったのかよ?」

「まだクラスに変える途中ぐらいなんじゃない。私達はあなたの様子が気になってここまで来たわけだけど……」

「あん? なんで学級委員でもないお前らが来るんだよ」

「今回の、いや前回の避難訓練も、本当は訓練じゃないとしたら?」

 ハクの言葉が加速する。

「なんの話だよ?」

「お、おいハク?」

「本当に白紙化現象が起こっているっていうのなら、それを起こしている黒幕がいると私は思ってる」

「……まさかとは思うがよぉ。それが俺だって言いたいんじゃないんだろうなぁ!?」

 箕島の怒気が増す。ベッドから起き上がり立ち上がってこちらをにらみつける。

「いやそういうわけじゃ……」

 聯が場を和まそうとするがハクの追撃は止まらない。

「だってあなたにはアリバイが無いでしょう? ずっとここにいたんだから」

「それが何だってんだよ。お前らそれくらいしか確信持ってないんだろう? ただアリバイが無いだけで犯人扱いされてたんじゃ年中サボり魔の俺はずっと犯人だなオイ!」

 さらに箕島は怒気を増していく。ハクは動じないが、意外と小心者の聯は二人に挟まれあたふたしていた。しかしなんとかしなければならない。聯が取った選択は――

「悪かった! どうやら箕島じゃないみたいだ! 埋め合わせはどうにかするから、ここはどうか怒りを鎮めてくれ!」

 謝罪だった。思い切り頭を下げた。目を丸くする箕島。ハクは呆れていた。そして箕島はぷっと吹き出した。

「ハハハッ! おもしれーな輝績! 恋人の尻拭いかよ? まあいい今回だけは見逃してやる。だから埋め合わせって言うんならお前らも、もう俺の睡眠の邪魔をするな。いいな」

 そう言って再び眠りに入る箕島。こいつは学校に寝に来ているのだろうか。

 聯はハクの背中を押して保健室を後にする。


「どういうこと聯。犯人かどうか分かったかもしれないのに」

「いや充分分かったよ、箕島は犯人じゃない」

「なんで言い切れるの?」

「……ファクターの勘って言ったら怒る?」

「…………それが私の超感覚より優れてるとは思えないんだけど」

 しかしハクは、はぁ、とため息を吐くと髪をかき上げた。

「ま、恋人の言う事を信じるのが彼女の役目かしらね」

 納得してくれたようだ。しかし本当に箕島はこの事件の犯人ではないという強烈な勘が告げていたのだ。

 この勘が、このまま犯人を見つけてくれればいいのだが……。

「残りのクラスメイトのアリバイも探りに行きましょう?」

「ああ……」

 そう言って二人は自らの教室に戻っていったのだった。

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