第34話 学園に潜む敵


 新AoB本部は学校の地下にあった! なんだか都市伝説じみた言い回しだが事実だから仕方ない。という訳で放課後、出現したイレイザーの報告にAoB本部へとやって来た二人。

 あの騒ぎは学校では勿論、噂で持ち切りだが、先生たちが「アレは対白紙化現象の避難訓練の一環だ」の一点張りで押し通した。無理がある気がするがそれ以外に説明のしようもない。

 よもや白紙化現象を引き起こす怪部が居て、それを倒すヒーローやってます……とは言えないだろう。

 二人は会議室の前にたどり着く、ノックし中に入る。

「待っていたよ」

 アーサー・ワンが椅子に腰掛けていた。

「あの、すいません……俺、また強化アタッチメントを……」

 俯きながら話すれんその先の言葉を手で制すワン。

「気にする事はない。それもそろそろ旧型になる頃合いだった」

「旧型? このタイプ:ライターがですか?」

「ああ君が、れいとの決戦の時に見せた二重変身、あの力を再現するためにアーサー・スリーが開発を進めている。もうすぐ完成するはずだ」

 ワンの言葉にホッと胸を撫でおろす聯。ワンはそんな様子を見ながらも眼光を鋭くする。

「しかし、今回、現れたイレイザーについてだが」

 指を絡ませ肘を机に突き手を顔の前に置くワン。聯とハクが席に座る。

「今回のイレイザーは核がありませんでした」

「聯が必殺技を当てたら消滅していました」

「ふむ……」

 しばらく考え込むワン。重々しい沈黙が会議室に舞い降りる。固唾を飲む聯。ハクは冷静に答えを待っている。

 そして答えが来た。

「犯人は、恐らく敵に持ち攫われた敵製タイプ:ライターを用いているに違いない」

「!?」

「という事は、犯人はサードと呼ばれていたあの少年……?」

「恐らくな」

「アイツが暗躍してるとして、じゃあどう探せば?」

「ファクターの反応を検知するシステムを構築するしかないだろうな」

「でもどこに居たんでしょう……イレイザーは校庭に突然現れたように思うのですが……前触れも無く、衝撃も無くです」

 ワンがそこで自分の後ろのモニターを振り返る。そこに映し出されたのは。

「目白学園の生徒写真……?」

 ハクが真っ先に感づいた綺麗に並んだ顔写真の列。聯も見知った顔を見つけてようやくそうだと気づく。

「これがどうしたんですか……?」

「この中にサードがいる可能性が高い」

 再びの衝撃発言。驚かずにはいられない。聯はサードの顔を写真の中から探そうとする。しかし見当たらない。

 超感覚で探したのであろうハクも首を横に振る。

「サードの顔は見当たりません。本当なのですか?」

「だがそれ以外に、今回のイレイザーの図ったかのような出現位置に説明がつかない」

 ハクが真っ先に気づき,聯が遅れて気づく。

「それって……俺達を狙って攻撃してきたって事ですか?」

「無作為ではなく、明確に目白学園を狙って来たと見るべきだ。そしてそれは君達の存在を確認したからだと」

 思わず沈黙する聯。自分達の存在が学園に敵を呼び込んでしまった。その事実に胸が苦しむ、下手したら生徒に、友達に被害が出ていたかもしれない。思わず俯く。

 ハクは凛として返す。

「ワンのお考えは分かりました。つまり私達は学園で犯人捜しをすればいいんですね?」

 犯人捜し学園の生徒に疑惑の目を向ける。やっと始まった学園生活に暗雲が立ち込めようとしていた。

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