学園編

第33話 ネオイレイザー


 私立目白学園。実は裏でAoBがその業務を管理している特殊な学園だ。

 そこに輝績聯きせきれん、十六歳は通い始める事になった。

 勿論、恋人の秋山はくも一緒だ。そこでの生活は順風満帆とはいかないまでもゆったりとした時間を過ごしていた。そりゃあ勉学や運動に追われてはいるが。戦い漬けの日々と比べれば大したことはない。

 新しく出来た友人との会話。なんとか今までの分を取り戻すために必死に勉学に取り組んだ。

 そうホワイト・ゼロからのトラウマで失った時間を取り戻すように。

「ねぇ聯。お昼一緒に食べよう?」

「ああ、屋上行くか」

 この学校は屋上がテラスのようになっているて椅子やテーブルも用意してある。そこで食事する事が出来るのだ。たまに混雑したりするのだが今日は空いていた。

「はいこれ!」

「毎回悪いな、弁当作って来てもらっちゃって」

「いいのいいの! だって私、聯の、か、彼女だし!」

「まだ恥ずかしいのか?」

「~~! そりゃまだ慣れないというか……初めての人とのお付き合いすだし……」

「そういうもんかな?」

「聯が鈍感なんだよ!」

 いまいちそういう感覚は無かったが、確かに学校で同級生に「白髪はくはつカップルだ」なんて言われた時には、少し恥ずかしくなったような。物珍しさでそういう事を言う奴に腹立たしくなったような……あれ?

 思わず首を傾げる。

「どうしたの聯?」

「いや、やっぱり俺って鈍感なのかなって」

「もう……変なの……あっ口元汚れてる」

 そう言って自前のハンカチで拭こうとするハク。

「いや自分で拭くって」

 と抵抗しようとする聯。

 その時だった。


 


「これって……!」

「間違いない……イレイザーだよ!」

 聯は鞄の中からタイプ:ライターを取り出す。

「まさかまだイレイザーが現れるなんて!」

「場所は校庭みたい! 飛んでファクター!」

 ――overwrite

 タイプ:ライターに文字を打ち込む。

『OK overwrite to the factor』

 電子音声が流れだす。

『了解』

 聯は返事をして颯爽と屋上のフェンスを乗り越え校庭へと飛び出した。


 校庭、そこに居たのはカマキリ型のイレイザーだった、ただし勿論、その大きさは人間一人分ほどの大きさがあった。

『マスターロットってヤツの生き残り……じゃないよな?』

『キチチチチッ』

 まるで虫の鳴き声、意思があるようには思えなかった。

『さっさと蹴りを付ける!』

 ――sword

 今の聯はヴィクトリーフォーム、現れるのは逆Ⅴの字の光の剣。敵の鎌と斬り結ぶ。

(コイツ、硬い!?)

 その刹那、返す刀でカマキリ型イレイザーがタイプ:ライター目掛けて攻撃を振り下ろしてきたではないか。

 咄嗟の事で防御が間に合わない。なんとか躱そうとするも強化アタッチメント部分が破壊されてしまった!

『馬鹿な!?』

『キチチチッ!』

 ヴィクトリーフォームが解除される。これでは敵にダメージを与えられない。だがそこで諦めてはいけない。真正面からいけないなら絡め手だ。

 ――rope

 文字列で出来た紐でイレイザーをぐるぐる巻きにする。鎌で斬ろうとするイレイザーだったが、その動きを躱し見事、敵の動きを封じてみせた。

『お次はこれだ!』

 ――bomb

 ファクターの最大火力。身動きの取れない相手にこれをぶつける。ファクターとイレイザーの戦いのもはや定石となりつつある戦法だった。

 爆発、文字が乱舞する。吹き飛ぶイレイザー。追いかけながらチャンスを逃さぬように必殺技を打ち込む。

 ――writing smash

『OK writing smash start』

 文字列がイレイザーを取り囲む。もう逃げる事は出来ない。

 拳に文字が、エネルギーが集束する。駆け出す。イレイザーへと必殺の一撃を叩きこむ!

『OK writing smash!』

 赤く染まる文字列エネルギーが熱へと変わり大爆発を起こす、グラウンドがめくれ上がる。

『writing smash end』

 タイプライターの電子音声が流れると共に爆煙が晴れていく。そこには――

『何もいない?』

 本来ならば核となった人や動物などが現れるはずだ。それなのに何も存在しない。

 新たなイレイザー。

 その襲来に新たな戦いの予感を感じざるを得なかった。

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