第30話 エピローグ①
「
「ああ、お前の来たがってた場所だ」
眼下に広がるのは真っ青な海、太陽を反射してきらきらと輝いている。
水着姿の然とはじめは海に来ていた。それがはじめの願いだったからだ。
「でもどうして海なんかに」
砂浜を駆け回りながらはじめは返事をする。
「だって来た事無かったんだもん」
たったそれだけの理由、しかし
「海の事はどこで知ったんだ?」
「博士の資料の中にあったの、海を白紙化現象に巻き込むための方法論の研究資料……それをみて海ってなんだろうって思ったの」
「そっか……」
遠く水平線を見つめる然、はじめは然に近づく。
「負けちゃったね……ごめん、私が役に立てなかったから」
「負けてねぇ」
「え?」
「まだ俺達は負けてねぇ、ああそうさ礼の野郎にコテンパンにされて、タイプ:ライターを後輩に託して、全部失った。はじめももうイレイザー化出来ない。だけど負けてねぇ。俺は諦めない。世界ってヤツを手に入れて見せる」
「どうして然はそんなに世界が欲しいの?」
「全部が自分のモノになるんだぜ? この海だって、この空だって、スゲー事だと思わねぇか?」
はじめは少し黙る。首を傾げながらおずおずと答えた。
「私は今のままでもいいかな」
「な、なんでだよ?」
「だったもう手で掴めるところに海があるんだもん。私は自分の手の届く範囲の世界があればそれでいい」
「……引きこもりみたいなセリフだな」
「むう。ひどい事を言う」
「悪い悪い。しかし手の届く範囲の世界か……それもまあ悪くねぇかもな」
唐突にはじめが然の手を引く。
「ねぇ! 泳ぎに行こう!」
「お、おいちょっと待てって!」
そうして二人は海面へと飛び込んでいく。はぐれ者の二人がこれからどうなっていくのか。それは二人が決める事だった。
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