第29話 糺の最後


「はぁはぁ……まだ。終わってねぇ……ハクは覚醒した……遅かれ少なかれ世界は白に塗り替えられる……」

 満身創痍のれい。オフィスビルを脱出しようと出口を目指す。しかしそこに現れる人影。アーサー・ワンだった。

「秋山ぁ。最後はお前かぁあ」

「ああそうだ、これが最後だ」

 銃を構えるワン。狙いは糺の頭だ。

「お前に撃てるのかよ……研究から逃げた臆病者のお前によぉ」

「撃てるさ今ならな。白紙化現象の被害者達の無念をここで晴らす」

「やれるもんならやってみろォ!」

 バァン! ワンの銃から銀の弾丸が放たれる、それは吸い込まれるようにしれ糺の頭を撃ち貫いた。

 地面に倒れ伏す糺。

「これで終わった。何もかも」

 地面の死体を見てアーサー・ワンはどこかかなしげな表情を浮かべていた。

「お前もただ失ったものを取り戻したかっただけだというのに。どこでそうなってしまったんだ」

 輝績糺、彼が世界を塗り替えようとした理由は愛する人を失った悲しみからだった。しかしそれでも狂ってしまった彼の研究は、大勢の被害を出した。それは許される事ではない。ただそんな彼の事を知っている者だけが、彼の死を見届けたのだった。

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