第27話 親子喧嘩


 外で戦闘が始まると共に、二つの封鎖核ボックスががハクの下に飛んで来た。れんはただハクを抱きしめ続ける事しか出来なかった。

 しかし、それに効果はあった。白紙化現象は起こらない。しかしハクの意識が目覚めない。封鎖核をどうにかしなければ。しかし聯にはどうする事も出来ない。アーサー達が周りに人間を集め指示を回す。ハクから封鎖核を摘出する手術をするのだ。

 常に誰かが触れ続け、ハクの超感覚を刺激し続ける。そうする事で観測を封じる事無く、白紙化現象を止める事が出来る。聯は急いでオペ室に運ばれるハクを見送るしかなかった。


 外で轟音が鳴り。再びファクター・ホワイトが現れる。しかしその姿は鬼か悪魔のように変貌していた。

 ――overwrite

 無言でファクターへと変身する聯。

『中身はクソ親父か……こっから先には行かせねぇ』

『よくわかったな馬鹿息子……だが邪魔だどけ』

 ――swordと打ち込み剣で一気に斬りかかる。それを手のひらで受け止めるホワイト。返す刀で手刀を繰り出す後ろに飛んで躱すファクター。

 ――gunと打ち込み光線銃を取り出す。光速の一撃。しかし躱せないとはいえ避けようとする素振りすら見せないホワイト。全て攻撃を受け止め、無傷。

 ――bombと打ち込む、ファクター通常技の最大火力。ダイナマイト状のそれを投げつける。それをなんとホワイトは受け取ってみせた!?

 ホワイトの手の中で爆発が起きる、それをホワイトは握りつぶした。

『化け物が……』

『親に対する口の利き方じゃねぇなぁ……ああ?!』

 一気に距離を詰めるホワイト、そこから放たれる蹴りでファクターは天井に叩き付けられた。

『ガッ! ハッ!?』

 天井から床に落ちるファクター。それに見向きもせずに先に進もうとするホワイト。ブラックは這いずって行ってその足首を掴む。

『……邪魔だっつってんだろ!』

 蹴り飛ばされる。地面を転がるファクター。数発の蹴りでここまでダメージを喰らうのか。そこまでヤツは人間離れしているというのか。


 そこに一人の少女が現れる。


輝績聯きせきれん、あなたにこれをってねんが」

『君は……それよりこれは……タイプ:ライター……?』

 そこで聯は気づく然のの意図に。

 タイプ:ライターを付けていないもう片方の腕にもう一個のタイプ:ライターを巻き付ける聯。

 ――overwrite

 overwrite overwrite overwrite overwrite overwrite タイプ:ライターの電子音声が木霊する。いや繰り返しバグを引き起こしたように鳴り響いているのだ。

 二重変身。それがどんな結果をもたらすか分からなかった、だがこれが正解だという確信があった。

『パワードヴィクトリーフォーム……!』

 黄金のアルファベットが身体中に散りばめられた意匠、V字のバイザー。全身に力がみなぎっていた。ホワイトの背中を捉える。

 加速する。一瞬で追いつく。殴りつける。完全な不意打ち。ホワイトが気づく前にヤツは壁に叩き付けられていた。

『…………ガハッ!?』

『決着だ。クソ親父』

 壁から崩れ落ちるホワイト、ぱらぱらと壁の破片が落ちてくる。

『二重にタイプ:ライターを使っただあ……? 馬鹿な事を、負荷でおしゃかになるのはテメェだぞ』

『お前を倒せるならそれでいい!』

 拳と拳がぶつかり合う。力は互角、ラッシュがぶつかり合う。衝撃波が辺りにまき散らされる。一瞬の隙、ファクターが体のアルファベットの意匠の一つ「A」を触る。

『attack』

 タイプ:ライターの電子音声が鳴る。身体が赤いオーラを纏う。再び拳がぶつかり合う。しかし今度はファクターが打ち勝った!

『何!?』

 相手の驚愕の隙を見逃さない。腹に胸に顔に拳を叩きこんでいく。

 膝をつくホワイト。その一瞬でファクターが身体の意匠の一つ「S」を触る。

『special』

 黄金いオーラを纏うファクター。膝をついたホワイトを無理やり立ち上がらせる。そして決めるのはサマーソルトキック!

 先ほどの意趣返しのように天井に叩き付けられるホワイト。ヒビだらけになる天井。落ちてくるホワイトにさらに続けざまの蹴り下ろし。地面に勢いよく叩き付けられるホワイト。もう身動きも取れない……。ホワイトのファクター状態が解除される。

『勝ったよ……ハク……!』

「はっ! はははははっ!」

『テメェまだ意識が!?』

メェまだ意識が!?』

「ハク! ハクねぇ! どうせ封鎖核を取り除こうとしてんだろうが無駄だぁ! もう世界の塗り替えは止まらねぇ! ハハハハハッ!!」

『もう黙れ!』

 れいの腹を蹴りつぶすファクター。流石の糺も意識を失った。

『ハク……無事でいてくれよ……!』

 ファクターはハクが居る手術室へと向かったのだった。

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