第25話 マスターロット・セブンス&ファクター・ホワイト
「さあ、いよいよ世界を書き換える時だ! サード! セブンス! 最後の仕上げだ! 抜かるんじゃねぇぞォ!」
『『了解』』
白衣の男、糺と、真白の半人半獅子と両手両足がかぎ爪の真白の半人半獣のファクター・ホワイトがAoB本部のあるオフィスビルに乗り込んだ。
『ハク! ハクーッ!』
その時、オフィスビルの部屋が壊される。部屋をぶち抜いて出て来たのは半人半獣の化け物どもだ。
『目標を確認、回収します』
『テメェらの仕業かぁーっ!』
ファクター・ホワイトへ斬りかかるファクター。かぎ爪とがぶつかり合い火花を散らす。光剣はバチバチとかぎ爪を削り取る。しかし、そこで半獅子が突撃してくる。そのタックルを受け止めきれず吹き飛ばされるファクター。
ホワイトは――regenerationと打ち込みかぎ爪を回復させる。しかし半狂乱のファクターはそれどころではない。並の火力ではハクの周りに浮く封鎖核にダメージを与えられないとふんだファクターは――bombと打ち込んで爆弾をばら撒いた。
文字の乱舞、爆風。黒の洪水。ホワイトは咄嗟に――guardと打ち込みバリアを張りダメージを軽減する、しかしそれでも余りあるほどの威力がまき散らされた。
「おーおー、暴れてるな馬鹿息子」
半人半獣共の後ろから現れる
『全部、テメェの仕業だよなぁ! クソ親父ィ!!』
――big sword
自分の身長よりも巨大な剣を生み出し振り回すファクター。それはまさに正気じゃなかった。部屋の天井や壁を壊しながら半人半獣と糺に斬りかかる。半獅子はそれをしゃがんで躱し、ホワイトは飛んで躱し、糺はまともにそれを喰らった。真っ二つになる糺。しかし断面からは白があふれ出るばかりで、本人にダメージが入った様子はない。
「こんなもんか? ヴィクトリーフォームさんよぉ」
『うわあああああああ!!』
――flash
本来ならば目暗ましに使う技、しかしヴィクトリーフォームの今はその光の全てが破壊光線へと変わる!
流石の半人半獣もその攻撃は防ぎきれずにまともに喰らう。糺も喰らうが相変わらずダメージは無い。もうAoB本部内は滅茶苦茶だった。部屋の垣根は無くなり、もはや一つのフロアと化していた。
『これは……』
ホワイトは暴走するファクターの攻撃に付いて行けない自分を歯噛みする。どうすればいいの分からずとりあえずと言った風に再び――regenerationと打ち込みダメージを軽減する。しかし、それも無限に出来る回復方法ではないのだ。何か手を打たなければ。
半獅子の方は既に満身創痍だ。
いくらマスターロット、特別製とはいえ、あの猛攻では無理もない。そこに糺が近づく。
「役立たなかったなぁ。まあお前の役割は運搬係だ。ご苦労さん」
半獅子の身体に手を突っ込んだ糺。中から封鎖核を抜き出す。封鎖核を抜かれた半獅子はイレイザーから人間へと姿を戻す。
「さあまだ七つには足りねぇが五個あれば半分くらいは封じれるだろ」
五つの封鎖核が、ハクへと吸い込まれていく。
『ハクゥーッ!!』
ファクターの、聯の叫びが空しく木霊する。苦しんでいたハクは封鎖核を取り込むと途端に意識を失った。変化はそれだけにとどまらない。ハクの身体から白が溢れ出す。それは全てを染めて消していく。
『白紙化現象……これじゃ……このままじゃ……!?』
ホワイト・ゼロが起きる。直感的に聯はそう思った。早くハクを救わなくては。トラウマはもう関係なかった。ただハクを救いたいという思いだけが、身体を動かしていた。
「おい、ホワイト、邪魔させるな」
『了解!』
――saber
軍刀を取り出すホワイト。しかし突貫するファクターを止めるに至らない。洪水のような白を押しのけて進むファクター。ハクへと手を伸ばす。
「ハク! 戻ってこい! ハク!」
手を掴む! 途端に白の洪水が止まる。白紙化現象がそこで終わる。五感を、触感を刺激され、ハクはうっすらと目を覚ます。
「聯……?」
『良かったハク! 本当に良かった!』
しかしファクターの後ろに立つ糺。
「だからよォ……邪魔すんじゃねぇよ!!」
ファクターを蹴り飛ばそうとする糺。そこに一発の銃声。
「……あ?」
腹を撃ち抜かれ溢れ出るは、赤い血。
「敵に対して効果確認!」
アーサー・スリーが銃を構えながら言った。
「犬井……テメェ!」
「動くな糺、これは対お前用に作り出した銀の弾丸だ。お前を殺せるぞ」
「やってみろ! 俺が死んでも計画は終わらねぇ! 世界は塗り替わる! ハクの手によってなぁ! アーハッハッハッ!!」
『ドクター糺、ここは離脱しましょう!』
ホワイトが進言する。しかし無視するように笑い狂う糺。無理矢理その体を担ぎ上げ、その場から脱出するホワイト。
残されたのは銃を構えた三人のアーサーとハクを抱きしめる聯だけだった。
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