第20話 マスターロット・フィフス
現場は辺り一面畑に覆われた田舎町だった。
「まだ白紙化現象は起きてないみたいだな」
「はい聯、これやっと完成したよ」
ハクが手渡してきたのは。
「強化アタッチメント! 間に合ったか!」
「さあ行って聯、被害が出る前に!」
「おう!」
――overwrite
『OK overwrite to the victory』
ファクター・ヴィクトリーフォームへと変身する聯。一気にヘリから飛び出す。畑のど真ん中に着地する。辺りに人はいない。いるのは案山子だけ……。
(白い案山子? まさか!?)
白い案山子から白色の光線が放たれる。すんでの所でそれを躱すファクター。
『ケケッ、躱されちまった。仕方ねぇや。作戦変更だ。ケケッ』
『薄気味悪い野郎だな……さっさと決着を付ける!』
――sword
剣が生み出される。案山子型イレイザーと距離を詰め袈裟斬りに斬りかかる。しかし、それをひらりと躱される。不規則な動きであちこちを跳び回るイレイザー。
『ちょこまかと……!』
――gun
巨大な砲塔から発せられる砲撃を連射して横薙ぎにする。これなら躱せまいと思った聯だったが。
『ひょいっと』
高く飛び上がるイレイザー。横薙ぎの砲撃を躱す。そしてそのまま空中から白い光線を吐き出してくる。
『ぐあああああ!?』
もろに喰らうファクター。しかし様子がおかしい。ヴィクトリーフォーム状態のファクターならばこれぐらいの攻撃耐えきれたはずだ。なのに思った以上のダメージを受けている。
『なんだこの光線……内側からえぐられるような……』
『キヒヒッ。これぞ必殺光線ってね。キヒヒヒヒッ!』
原理は分からないがあの光線をもろに喰らうのはまずい。shieldと打ち込んで盾を構える。さらにswordも打ち込んで剣と盾の二段構えで相手をする。
『キヒヒヒヒッ!』
不規則に跳び回りながら光線を放つイレイザー。それを盾で防ぎながら距離を詰める。
『ここだッ!』
イレイザーの着地の瞬間を狙う。上段から斬り下ろす。一撃は見事にイレイザーを捉えた。だがしかし。イレイザーの様子がおかしい。斬られて真っ二つになったイレイザーは、そのまま二手に分かれて動きだしてしまった。
『分裂した!?』
『キヒヒッ』『ケケッ』
断面が回復して二体に増えるイレイザー。これでは攻撃しても無意味だ。ファクターはどうすればいいか悩み思考する。その時通信が入る。
『聯! 核は一体だけ! 後はダミー! だから核を探し出してそこを攻撃して!』
ハクからのアドバイスだった。しかし核とはなんだ。どこにある。
『核の位置は私が指示する! 今は聯から見て右側のイレイザー!』
『サンキュー、ハク!』
右のイレイザーに一直線に移動するファクター。イレイザーはその行動に焦りを感じたのか、左の分身であるイレイザーを間に入れて来た。
『邪魔だ!』
邪魔に入ったイレイザーを切り伏せる。その分、分身が増えるが気にしない。核を目指して一気に進んでいく。
『キッ、キヒヒ……』
白い光線が飛んでくる盾で防ぎ、核を持ったイレイザーを今度は横一閃に斬って薙ぐ。
『マズい聯! 少し核から外れてる!』
『どんだけ判定小さいんだよ!?』
また増えるイレイザー。これで数は四体になった。
『今の核はどこにある!?』
『聯の後ろ!』
バッと後ろ振り返る。光線を放つ構えのイレイザー。盾が間に合わない。
『ぐっ、あああああ!!』
堪え切る事の出来ない痛み。これは身体内部に直接ダメージを与えるタイプの攻撃なのだと気づく、イレイザー特有の白紙化現象ではないのだ。この攻撃は。
『い、今の核は!?』
『変わらず! 聯の目の前!』
ならば好都合、こうなったらなりふり構わず必殺技で決める。
――victory strike
『OK victory strike』
Vの字がイレイザーを囲んで捉える。
『これでfinishだ!』
――finish
『OK victory finish!』
空中に現れるⅤの字。飛び上がりVの字と共に斜めにイレイザーの下へと落下する。
ドロップキックの体勢を取る。激突。それと共にⅤの字が回転してドリルのようになる。
『キヒーッ!?』
イレイザーの断末魔。これでようやく倒せた。そう思った時だった。
『キヒヒッ』『ケケッ』『キヒヒヒヒッ』『ケケケッ』『キヒッ』『キーヒッヒッヒ』……
大量の案山子イレイザー。その絶望的な数に思わず後ずさるファクター。
『ハク、これって一体!?』
『勘違いしてたんだ……核は分身内を自由に移動出来る……』
『それじゃ倒しようがないじゃないか!?』
白い光線が大量のイレイザーから一気に放たれる。ファクターはそれをなんとか盾で防ぐが。あまりに数が多すぎる。盾にヒビが入る。
『全部を殲滅するしか道はないよ聯……』
『殲滅か……そういやヴィクトリーフォームになってからコレを使った事無かったな』
ファクターの最大火力。――bomb
ダイナマイト状の爆弾。それを大量に生成する。
『農家の人ごめんなさい!!』
ばら撒く。それはもはや文字列の洪水だった。爆発とは思えない質量に自分の技なのに圧倒されてしまうファクター。
煙が晴れる。残っていたのは案山子型のイレイザーが一体。
『まだ倒れてなかったのか……!?』
『キヒヒッ、戦線離脱、ケケッ』
『させるかよ! ハク! 核の位置を!』
『頭部の真ん中! 正確に貫いて!』
――acceleration
加速しswordを生み出し、イレイザーの顔を逃げ出そうとしている後ろから貫いた。
『キッ……ヒ』
倒れるイレイザーは状態が解除され、ぼさぼさ髪の少年が現れる。
『これで三人目……あと何人いるんだ……』
『分からない……でもいつか終わりはくるはず。敵の人材も無限じゃない』
『……だな』
得も言われぬ不安に襲われながらも、ハクと二人ならば乗り越える事が出来る。そんな根拠のない自信も同時に沸いて来ていた聯であった。
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