第14話 乱戦


 三人のファクターが相対あいたいした。

 そこからはあっという間だった。

 まずファクター・ブラックが爆弾を投げつけてくる、その威力は依然より数倍増していた。次にそれをファクター・ホワイトが躱す。そしてファクターはshieldと打ち込んで盾を生み出し防御した。

 次にホワイトが矢を連射する。ブラックはそれを自前の加速力だけで躱してみせる。ファクターはまだ無事な盾で身を守りながら様子を伺う。

 一瞬の隙、ファクターから仕掛ける。――gun 銃を生み出す。どちらを狙うか迷ったが先にホワイトを狙う。光速の一撃だ躱す事は出来ない。しかし今度はホワイトが盾を生み出し光線を防いでいた。それに気を取られ近づいて来ていたブラックに気づかなかった。ブラックは巨大な槍でファクターを貫かんとする。ギリギリのところで躱すファクター、しかし脇腹辺りをかすめダメージを負ってしまう。

 ファクターはそのまま近づいてきたブラックに盾で一撃を見舞う。いわゆるシールドバッシュというモノだった。思わぬ反撃によろめくブラック。その隙を逃すまいとホワイトが盾を投げつけてきた。そのスピードは十分攻撃にあたいするモノだった。

 ブラックはそこで ――acceleration と打ち込み、加速で盾を躱した。そしてそのまま加速した足でホワイトの所へ向かう。槍と爪が鍔迫り合う。そこをチャンスと見たファクターがロケットランチャーを生み出して二人めがけて発砲する。

 爆炎。

 二人の姿が見えなくなる。

 倒した……とは聯は思ってはいないだろう。煙が晴れる。

 そこに二人の姿はない。急いで辺りを見回す。すると再びこちらに迫るブラック。

 剣を生み出し切り捨てようとするが、向かって来たブラックの姿がかき消える。

 まるで幻のように。

『mirageだ。覚えておけ後輩』

 その言葉が聞こえて来た時にはすでに背後を取られていた。しかしファクターが命の危機を感じたその瞬間。攻撃がやってこない。ホワイトが邪魔に入ったのだ。

 いや恐らくは二人してファクターに狙いを定めかち合ってしまった。そんなところだろう。

『邪魔するな!』

『こちらのセリフなんですけどねっ!』

 再び槍と爪が交差する、そこに加わる剣。しかしファクターは、いやこの場にいる全員が思っていた。このままでは千日手だと。

 ならばどうする。

 答えは一つだった。

 ――victory

『OK victory strike』

 ――overload

『OK overload crash』

 ――all clear

『OK all clear tempest』

 三人同時に必殺技が放たれる。

 文字列の乱舞、黒の奔流、白の嵐。それぞれの必殺技が混じり合い混沌を形成する。

『『『うおおおおおおおおおおおお!!』』』

 互いの決死の一撃、ぶつけ合い混ざり合い、そして――


 大爆発を起こし辺りは極光に包まれた。


『ガハッ、はぁはぁ……あいつらは……!?』

 ファクターが衝撃から復帰する。そこには誰もいなかった。

『勝った? ……いや逃げた?』

『アイツはな……でも俺は違うぜ後輩』

『!?』

 背後から声、一瞬で剣を生み出し振り向きもせずに剣を後ろに突き刺した。しかし手応えがない。

『だからmirageだ。さっきも言ったろ』

 現れる無数のブラックの幻影。どれを狙えばいいか分からなくなる。そしてそれは致命的な隙だった。

 無数の幻影の中から飛び込んでくる白い少女……。

 危機的状況から一気に白というトラウマがフラッシュバックする。やっと克服してきたと思ったのに。

 ファーストとホワイトから呼ばれていた少女はファクターの腕、タイプ:ライターから強化アタッチメントを抜き去ってしまう。

 それに抵抗も出来なかった。

 それと同時に変身も解除されてしまう。

 れんは地面に倒れ伏す。

『しばらくそこで寝てろ後輩。決着なら俺が付けてやる』

 薄れゆく意識の中でそんな声が聞こえた。

 そして聯の意識は途絶えた。

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