第11話 マスターロット・セカンド


 夜の繁華街。街中を歩む中に一際目立つ大男が居た。男は繁華街を出て交差点にたどり着く。そして信号を無視して交差点の真ん中にたどり着く。車がクラクションを鳴らす。さらに歩を進める。大男に気付かなかった車が大男にぶつかる。しかし大男には怪我一つない。代わりに車がひしゃげ壊れていた。

「イレイズ開始」

 辺りが真白に包まれる。広がる白は交差点を染め上げた。

 現れたイレイザーは筋肉質な銅像のような白。頭がノズル状なのが石膏像との違いだった。


『イレイザー出現!』

 警告音がAoBの内部に響き渡る。

「行かないと」

 聯がオフィスビルの屋上に向かう。ヘリはすでに用意してある。

 躊躇なく乗り込む。ヘリが飛び立つ。隣にはハクも居た。

「あんまり無茶しないでね」

「ああ、善処する」

 相手が強敵となればそうともいかない。

 ヘリ一直線に現場に向かい一瞬でたどり着く。

 ――overwrite

 変身してヘリから飛び降りる。眼科に広がる白の規模に驚愕する。街のほとんどが白に染まっていた。

『これじゃホワイト・ゼロの再演じゃないか……っ!』

 ファクターは勢いよく地面へと着地する白い地面は衝撃すら起こらない。亀裂すら走らず。そこがまさしく空白なのだと感じさせた。

 敵を目視で確認する。筋肉質なイレイザー。

『あれも特別製……か』

 ――sword

 大きな両手剣を構える。イレイザーがこちらに気付いたようだ。

輝績聯きせきれん、貴様を待っていた』

『イレイザーと会話する気なんてない……さっさと倒させてもらう!』

 アタッチメントのpageupのボタンを押す、強化された状態の高速さにさらに磨きがかかる。一気に距離を詰める。横薙ぎに剣を一閃する。完全に入った。そう思った時だった。

 確かに攻撃は当たった。しかし刃は通っていない。ダメージを受けている様子も見えない。

 イレイザーが剣を掴む。おもむろにそれをぶん投げる。咄嗟に剣を手放そうとしたが間に合わない。剣ごと投げ飛ばされる。数メートルを一気に飛ぶ、しばらく空中を飛んでいた。そして地面に落ちなおも転がりつづける勢いは止まらない。

 なんとか地面に手をひっかけようとするが地面は白紙でひっかかりがない。

 勢いが死ぬ頃には敵との距離はかなり開いていた。

『この程度か、れい博士の息子よ』

『ふ、ざけんなっ!』

 立ち上がる。剣を一旦解除する、消えた剣の代わりにgunと打ち込み銃を産みだす。

 その巨大な銃身は砲と言っても過言ではなかった。

『これならどうだ!』

 ドォォォンという轟音と共に銃弾、いや砲弾が発射される。イレイザーは避けようともしない。一撃が決まる。しかしひしゃげたのはイレイザーではなく砲弾の方でイレイザーは無傷だった。

『嘘だろ……』

『次からはこちらから行かせてもらう』

 その言葉が発されたとのと同時に目の前にイレイザーが迫っていた。拳が眼前を覆う。

 殴り飛ばされる。先ほどの倍以上の距離を飛ぶ。転がり続けようやく止まったところにイレイザーが先回りしていた。腹部を踏みつけられるファクター。

『があっ?!』

『こんなものか、ファーストを倒したと聞いて期待していたのだがな』

 イレイザーの足を掴むファクター。

「む」

 ファクターはアタッチメントのdeleteのボタンを押す。ファクターの腕から何らかの力がイレイザーに伝播する。

『ぐっ!?』

 イレイザーの力が剥がされていく。イレイザーはファクターを蹴り飛ばし距離を取る。

『タダでは倒れんか』

『お前らに……負けるわけには行かないんだよ!!』

 ――writing smash

 必殺技を打ち込む。文字列がイレイザーを包むこむ。身動きが取れなくなったイレイザーを目掛け拳に集束するエネルギーを撃ち込む。爆発が巻き起こる。

 しかし煙の中から現れたのは半壊したイレイザーだった。まだ行動可能に見えた。

 対するファクターは必殺技の負荷で膝をついて地面に手を置いている。

『ふむ、データ収集にはこれで十分か』

『ま、待て……逃がすか……』

『お前の出力では俺には勝てない』

 半壊していたはずのイレイザーが回復している。そんな技まで隠していたとは。

 イレイザーはその場を後にする。

 意識が飛びそうになるのを必死に堪える。

 ――restoration

 そう打ち込んで真っ白になった世界を元に戻す。

 しかし、白紙化現象に巻き込まれた人々は帰って来ない。

『俺……負けたのか……』

 絶望に打ちひしがれる。

 聯はAoBの迎えが来るまでひたすら立ち尽くしていた。

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