第4話

独房での悲しい時を過ごしいつの間にかの満期。あまり実感がわかないが、釈放である。

独房で鍛えた孤独に対する忍耐力は、ステータスには記載されていないものの確かに上がっていると実感できるものであった。


「もう来るなよ」


もう2度ときてやるものか。

しかめっ面をしながら、看守のかけた言葉に反発するように無言を貫きその場を後に、私は自宅へと向かった。





道中。一歩歩けば冷ややかな視線。もう一歩歩けばヒソヒソと陰口。

長かったようで短かった監獄生活で私の体内時計は狂いに狂い、逮捕から2年ほど経ったように思えたが、実際はたった三ヶ月の月日しか流れてはいなかった。

三ヶ月前、玄関を開けたら全裸だった青年を誰が忘れようものか。かくいう私もそのような青年がいようものなら決して忘れることはないだろう。まぁ、実際にいたのだが。

いや、やめよう。こんなことを考えるのはやめよう。またポジティブが発動してしまう。 新たな人生の幕開けなのだ。明るく行こう。

私は自宅の玄関に手をかけてガチャリとドアを開け、暗い部屋に明かりをつける。


「おう、少年。悪いが服をくれないか、冬に全裸で流石の僕も凍えそうなんだ」


私はそっと電気を消した。

きっと見間違えなのだろう。全裸の中年がいきなり家に居るなんてドッキリ聞いたことがない。監獄生活で疲れているのだ。そうに違いない。

多少カタカタと震えながら私は、願うように電気をつけた。


「この部屋Wi-Fiないのぉ?今どき家にWi-Fi無いとかないよね。おじさん泣いちゃうよ。通信制限で泣いちゃうよ?」


なんかいる。何かいる。

私はこれを人とは認めない。決して認めてはならないのである。

【結局家に人がいるほがいちばん怖い説】などとふざけた企画をやっていた番組もあったが、今まさに出所して来た一般peopleにやるにしては、あまりにも重い企画である。いや普通はやらないのであろう。

なぜ、唯一の憩いの場である自宅で謎の緊張感と戦わなくてはならないのか。なぜ、このような中年に文句を言われなくてはならないのか。

焦り、困惑し、よく分からぬ感情にムシャクシャした私は、


「貴方はなんなんですか」と、停止した脳とは裏腹に中年に声をかけてしまっていた。


「田中だよ」


マッタリとした口調で中年は語る。


「あれ、覚えてない?昔同じクラスで席隣だった。あぁぁ、ちょやめ。すまんすまん、謝るから。ゴメンって。お願いだからこの格好のまま外に出さないでくれ」


私が彼の手を掴んで外に出そうとしたのは言うまでもない。そして、見るに耐えない彼の姿を隠すようにソッと、否ズバッと服を投げ捨てた。


「これちょっと小さいんだけど」


服に文句を言った彼は聞いてもいないことをベラベラと話し始めた。

幼少期の出来事。犯罪歴。裸になった経緯。

どれもあまり興味を引くものではなかったが、一つだけ私の興味を引いたものがあった。

彼は冒険者だったのである。

価値観の違い、というか性癖の違いで追い出されたらしいが腕はかなり良かったらしい、、、


「通報しない代わりにクエスト行くぞ」


「断らぬ」


「え、マジか」どうよう


私は彼の即答に動揺を隠しきれなかった。

てってれーん[仲間ができました]

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