第三章 ヤンデレ育成計画
遊園地は、死への近道だよっ!
ジェットコースターが急降下し、観客たちが楽しそうな悲鳴を上げる中、俺は遊園地内を駆けずり回っていた。
「次は!? 次はどこだ、マリア!?」
「ちょ、ちょっと、待ってよ! コッチだって、混乱してて……み、
「無理だろ!!」
「知らないわよ!! でも、やらないと終わりなんでしょ!?」
電話口に叫ぶと、同じような
「水無月結も淑蓮ちゃんも勘が良いし、由羅先輩だって、あんたの変化には目ざとい! 下手な誤魔化し使えば、直ぐにゲームオーバーだよ!」
「なんで、なんで……!」
汗だくになりながら遊園地内を駆け抜け、死を間近に感じながら、俺は必死にアトラクションを目指す。
「なんで、こうなった!!」
ヤンデレとのデートが〝
「ココに遊園地のチケットがある」
「え、なんですか、その話の切り出し方?」
由羅と一緒に職員室に呼ばれた俺は、ストーカーの件が解決したことを報告し、
「あ? お前ら二人、付き合ってるんだろ?」
先生がそう言った
「いや、どういう誤解ですか?」
「さっき、お前、『コイツは、俺が幸せにします』ってプロポーズまがいのこと言ったろ」
「いや、とある人物と約束したんで、そのことを宣言しておこうと思いまして……でも、幸せにするにしても、別に俺じゃなくても良いわけでして」
「どういう意味だ?」
「俺が、コイツを
生徒から貰ったらしいお
「確かに衣笠の変わりようには驚いたし、うちの校則が緩いとは言え、学校には
本音、
「衣笠はどうしたい?」
水を向けられた由羅は顔を覆い隠している髪の隙間から、何度もこちらを
「あ、アキラ様と一緒にいたいです……」
「なに? アキラ様?」
俺は慌てて、由羅の口を
「ご主人様プレイ!! ご主人様プレイしてるんです!! 朝も昼も夜も、コイツは俺の奴隷なんです!! だから、何の問題もありません!!」
「問題しかないだろ」
誤魔化し方、素で間違えたわ。
「おふざけも
話の通じる
「とりあえず、遊園地のチケットはお前たちにやる。ホレ」
「え、良いんですか?」
最近、市内にできたらしい遊園地のペアチケットを受け取り、俺はスマートフォンを取り出して金券ショップのホームページを開く。
「なにしてるんだ?」
「いや、せっかくだから、売ろうと思っ――すいませんでしたぁ!! 由羅といってきまぁす!!」
回転椅子を持ち上げた雲谷先生の目には、本物の殺意が混じっていた。
「衣笠にも確認するからな? もし、お前が、衣笠と行かなかったようなら、チケットを
教師が生徒に向けていい言葉じゃねぇ!!
「せ、せんせい……あ、ありがとうございます……」
「いや、構わん。お前も私にとっては、大事な生徒だ」
ぽんぽんと由羅の頭を叩き、先生は優しげな笑みを浮かべる。
「楽しんでこいよ、衣笠」
「は、はい……」
「アッハッハッハ!! 今、考えたら、ペアチケットを生徒にやるって、雲谷先生、彼氏いないってことじゃん!! アッハッハッハ!! この事実に気づいたら、笑いが止まらな――止まったわ」
机を持ち上げた雲谷先生を、男性
職員室から
「お、おい! どうした由羅!?」
「あ、アキラ様といると……む、胸が苦しくなって……う、嬉しいのに、と、とても切なくて……」
由羅は胸元に忍ばせていた、俺の顔面からとった
「アキラ様……アキラ様……す、好きです……お
いつの間に型とったの、ソレ?
「ていうか、お前、昔みたいに『アキラくん』って呼べよ」
「ぼ、ボクにとっては、アキラ様は神様みたいな存在なのは変わらなくて……ま、真理亜も、それを望んでると思うし……ぐ、グッズ展開も始めるつもりです……」
なんで、お前らって、
「いや、マジでやめ――」
「
背後から飛んできた硬式球をスウェーで
「ふ、ふざけんな!! あ、頭おかしいんじゃないの、アンタ!?」
由羅とは正反対の
「お前が一番嫌がるのは、セクハラかなと思って……」
「死ね!! ホントに死ね!! 由羅先輩の件でちょっと見直してたのに、やっぱり、あんた嫌い!!」
「借りは十倍にして返す主義であって、別に俺は優しい人間でも何でもないぞ」
「ともかくっ! 由羅先輩には、
「アキラ様……あ、愛してます……アキラ様……一生、お側にいます……」
現実を
「ていうか、あんた、教室に戻らなくていいの?」
「え?」
目線を
「その……大変なことになってるよ?」
嫌な予感がして、俺は駆け出した。
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