由羅と真理亜の決着
放たれた三人分の殺意を受け、マリアはたじろいだ。
「まぁまぁ、落ち着け」
一度でも、誰かが〝噴火〟すれば、その時点でさよならバイバイである。そうなったら困るのは俺なので、マリアを
「悪いのは俺だ。コイツは、キッカケを作ったに過ぎないだろ?」
「なにを当たり前のこと言ってんですか!? 全部、アンタのせいだ!!」
「アキラくんが、善意でやったってことがわからないかな? たった1000円ぽっちで
なんで、そんなこと細やかに事情知ってんの?
「だ、だとしても、コイツが
「はぁ? お兄ちゃんの
こういう時だけ、仲が良いんだね。
「由羅先輩! あたしは、先輩のことを想って!!」
「ま、
ハッとしたかのように、由羅は立ち
「だ、だとしたら、あの日、アキラ様にフラれたのは……? あ、アレ……? ま、真理亜が……あ、アレ……お、おかし――」
「
俺が名前を呼ぶと、ゆっくりと彼女はこちらを向いた。
「俺はお前をフッてない。それにマリアは、お前を裏切ってもない。大好きなお前を助けたい一心で、大嫌いな俺の信者を続けていたくらいだ。
コイツは、お前の友だちだよ」
「あ、アキラさ――」
「アキラくんだろ?」
久しぶりに、俺は
「やり直そうぜ、お前の恋心。
告白しろ、
死んだな! 間違いなく死んだな!
「ゆ、由羅先輩……」
「ど、どうして、ぼ、ボクなんかと……ずっと一緒にいてくれたの……? ど、どうし――」
「当たり前じゃないですかぁ!!」
涙と鼻水で顔をぐちゃぐちゃにして、マリアは大声で叫んだ。
「友だちですよ!? 初めて、自分を隠さなくても良いと思った相手ですよ!? 幸せになって欲しいと思うじゃないですか!? 一緒にいたいと思うじゃないですか!? 大好きだって
「ま、マリア……?」
きっと、初めて、彼女は〝
「はい……っ!」
マリアは、由羅を力強く抱き締める。
「マリアです……衣笠麻莉愛です……あ、あたし……先輩と同じ名字の衣笠麻莉愛です……!」
涙で濡れた顔を上げ、彼女はニッコリと笑った。
「やっと、コッチを見てくれましたね」
〝泣く〟ことを覚えた衣笠由羅は、くぐもった
数分後、ようやく泣き止んだ由羅は、すっと立ち上がって、真っ赤な両目で俺のことを
「あ、アキラくん、ふ、二人で話したいんですが……」
「あぁ、構わない」
我が物顔でついてくる二人を、俺は両手で押しとどめる。
「俺を信じてくれ。絶対に戻ってくるから(大嘘)」
「アキラくんの優しいところは好きだけど……裏切らないでね?」
地獄に逃げても、追いかけてきそうだねこの人。
由羅の後について、
「桐谷には、お別れを言っておこうと思って」
「……消えるのか?」
それが最善だと言わんばかりに、彼女は満面の笑みを浮かべる。
「俺のヤンデレセンサーに反応しなかったところを見ると……お前と由羅は、別人みたいなものなんだろ?」
「そうだね」
「どうして、消える必要がある?」
「運命だから」
「桐谷のお陰だよ。アナタが
「それを言うなら、俺のせいだろ?」
「違う」
真剣な顔つきで、空想の彼女は俺を見つめる。
「あの子は、現実を見つめ直す必要があった。だから、あたしは
「俺への想いが満たされれば、由羅が元に戻ると思ったんだな? そのために、マリアに由羅の格好をさせて二人いるように見せかけ、
お前が消えて
「そう。でも、失敗しちゃったけどね」
「桐谷の下駄箱に髪と爪を入れたのもその
「なら、お前の目的は、俺の監禁じゃなくて――」
「由羅の心を取り戻すこと」
晴れ渡った青空の下で、真理亜は気持ちよさそうに笑った。
「それが叶った今、
「なぁ」
「なに?」
「俺がお前の恋心を受け入れれば、お前は消えずに済むんじゃないのか? そうすれば、由羅にとってお前は必要不可欠になる」
「でも、そうしたら、桐谷は
「俺はランプの魔人だ」
真理亜は、驚きで目を
「お前の願い――あとひとつ、叶えてやるよ」
数秒の
「あの子を幸せにしてあげて」
バカ野郎。
「桐谷、あんたは
彼女は、そっと俺の頬にキスをした。
「でも、あたしは、
その言葉を最期に、ふっと表情が消え――意識を失った衣笠が倒れ、俺はそれを抱きとめて真理亜がいなくなったことを
「お前が願わないなら」
俺は、真っ青な空を見上げる。
「願い事、ふたつにしとけばよかったよ」
澄み渡った空は、この世界から誰かが消えたことに気付かず、綺麗な
「おう、マリアか。
うん、うん……そうか、
「まぁ、私の存在を
電話が切れた後、女性は
「大丈夫。
満足したかのように女性は携帯電話を
「桐谷」
「お前は、どういう未来を選ぶんだろうな?」
彼女の吐いた
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