衣笠由羅の追憶②
「あたし、
「え……?」
由羅の前に現れた一学年下の女の子は、彼女に勢い良くお
「
「ま、マリア……?」
頭を下げていた女の子は、不安そうに顔を曇らせ目線を上げる。
「どうしましたか? 同じ名字、あんまり嬉しくなかったですか?」
「い、いえ、ぼ、ボク……そ、その……」
「安心しろ。その女はまともだ」
相も変わらず携帯ゲームをプレイしている
「ソイツが、お前の二つ目の願い――『友だちが欲しい』を叶えて下さるそうだ。良かったな」
「あの、由羅先輩」
ゲームに夢中になっている彰を横目で見ながら、こっそりとマリアは由羅へと耳打ちをする。
「悪いことは言わないですから、あんなヤツとは、関わり合いにならないほうがいいですよ」
「正直言って、アイツはクズです。自分の身の保身のためならなんでもしますし、学校行事で外に出ればのべつ
「聞こえてるぞ……えーと、名前、なんだっけ?」
「マリアです!」
「あぁ、すまん、
お前の趣味を
さっと顔色が変わり、マリアは「じょ、冗談ですよぉ」と引きつった笑顔を浮かべる。
「じ、実はあたし、ココだけの話、めちゃくちゃスプラッタ映画が好きで」
棚に飾られているカエルのホルマリン漬けを眺め、年下の少女はうっとりとして両手を組んだ。
「特に
「だ、大丈夫……ぼ、ボクも……そ、そう言うの好きだよ……」
「ほ、本当ですか!?」
感激したらしいマリアに両手を掴まれ、由羅は驚いて身を
「アイツに弱みを握られてから、ずーっと、都合の良い使い
「そうか、俺に感謝しろよ」
殺意の
「で、だ、衣笠由羅……こうして数日、張り付いた結果、俺はお前には〝将来性がない〟と判断した」
綺麗な瞳――何か人を
「両親がかなりの金持ちだと踏んでいたが、そうでもないみたいだしな。俺を
「は、はぁ!? あんた、頭オカシイんじゃ――」
「由羅」
一度だけ、
「あとひとつの願い事……よく考えて決めろ。1000円分の借りは、ソレでチャラだ」
マリアの
「ぼ、ボク……あ、アキラくんが……す、好きみたい……」
「え、嘘!? ホント!?」
由羅にだけ視える友人――衣笠真理亜は、嬉しそうに
「じゃあさ、告るしかないじゃん! 話に出てきた、あたしと同じ名前のマリアちゃんにも手伝って
「で、でも……ぼ、ボクみたいなのが告白しても……ま、真理亜とは違って……め、迷惑だろうし……」
「大丈夫だって! 由羅は真理亜なんだから!」
「頑張って、由羅! 絶対、上手くいくから!」
――ボクを好きになって下さい
「き、桐谷彰に告白するぅ!? 正気ですかぁ!?」
顔を真っ赤にした由羅はこくこくと頷き、
「あたしには理解できないけど、由羅先輩の頼みなら断れません。先輩、なんだか見ていてほっとけないし」
それから、マリアは電話をかけ「行きましょう」と立ち上がった。
「え、ど、どこへ……?」
「美容院ですよ。まずはその髪、どうにかしなきゃ」
マリアによる衣笠由羅の〝改造〟は一日にも
明るい髪色、整った長さの髪の毛、
「真理亜だ……」
鏡に映った由羅は、
「ココまで
「ぼ、ボクは真理亜だ……真理亜が言ってたことは、本当だった……ボクは、真理亜だったんだ……」
「由羅先輩?」
その
「……由羅じゃないよ」
「え?」
「真理亜」
彼女は、
「あたしは、衣笠真理亜だよ」
初めての恋心に頬を染めながら、真理亜は鏡に映った
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます