衣笠由羅の追憶
「……だれ?」
「衣笠真理亜。アナタのお友達だよ」
「ね、由羅」
「な、なに、真理亜?」
人見知りの由羅は、真理亜に
衣笠由羅の不幸はそれだけではなく、幼少時代に誰もが
「いい加減さ、あたし以外の友達を作ろうよ」
「ぼ、ボクの友だちは、ま、真理亜だよ」
真っ暗な部屋の中、捕まえてきたカエルを
「み、みんな、ぼ、ボクのことを、き、気味悪がるんだ……ど、どうして、は、
「……ね、由羅」
「な、なに?」
鏡に映っている由羅の姿は、
「あたしはさ、きっと、アナタの理想の姿なんだよ」
「う、うん。ぼ、ボクも、真理亜が、せ、世界で一番、き、綺麗だと思うよ」
「でも、あたしたちの
鏡の中の真理亜は、愛らしく
「〝由羅〟は〝真理亜〟になれるよ。
あたしは理想のアナタなんだから、絶対に大切な友だちが作れる」
「そ、そんなの、
カエルの腹にメスを突き刺し、由羅は勢い良く立ち上がる。
「ぼ、ボクに、友だちなんて必要ない!! 真理亜さえいればいい!! ぼ、ボクを救える人間なんていない!! そ、そんな存在がいたら、それこそ〝神様〟だ!!」
「……由羅」
腹を
このまま自分は孤独に死んでいくのだと、由羅は信じ込んでいた……
「カツアゲだ。金を
「……ぇ?」
中学校から帰宅し、解剖用のカエルを調達しに出かけた由羅の前で、視るも無残な姿をした男子が片手を突き出していた。
「聞こえなかったのか? カツアゲだ。とっとと金を出せ。
ようやくあの女の
上から下まで衣服をズタボロに破き、顔と腕、足に
「か、カツアゲは、は、犯罪で――」
「当たり前だろ、バカかお前は? 人が道を歩き始めたら、『それは、
百も承知だ、オラ、金を出せ」
乱暴な
「お前、金持ちだな」
「え……よ、よくわかりません……」
由羅が一万円札を差し出すと、少年は財布から勝手に千円を抜き取り「コレだけ借りる」と言って尻ポケットに
「ギャンブル
「く、鞍替え?」
「お前、名前は?」
「き、衣笠、ゆ、由羅です」
「衣笠由羅、衣笠由羅……よし、
どこからか、悲鳴に近い女性の叫び声が聞こえてくると、笑顔の少年は由羅の手を
「俺は人の顔じゃなく、人の名前を憶えるタイプだ。今、お前の名前は記憶した。
また会おうぜ、金づる」
「ど、どういうことですか……?」
無人の理科実験室の中で、自分に土下座する男子生徒と女子生徒の群れを眺め、由羅は
「お前、イジメられてるんだろ? その
「な、なぜ? ど、どうやって?」
由羅の教科書を破り捨てトイレに流した女子生徒、彼女の机に
「知らん」
「えっ?」
「俺が望んだら、〝誰か〟が勝手にやった。理科実験室の鍵は、下駄箱に入ってただけだ。俺は何もやってない。
こんな光景、優等生の
携帯ゲームの電源を切り、桐谷彰はニヤリと笑った。
「俺はランプの魔人だ」
理科実験室の
「お前の願い――あとふたつ、
その瞬間、確かに
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます