愛する人は奪い合うもの
「桐谷、はい、あ~ん」
切り分けた
「ちょっと、なに? なんで、すねてんの?」
甘えるように
「ね~、
「黙れ、魔の使いが。
「それはごめん! ホントにごめんなさい!」
ごめんで
「こちとら、朝の
「け、結跏趺坐する意味はなくない……? というか、昨日はどこで寝てたの? あの子が夜中に『
「床下だ」
「えっ」
「そこの押し入れの中に、
寝込みを
笑顔を凍りつかせた衣笠が、恐れ入るかのように問いかける。
「そ、そこまでやる?」
「そこまではやってない。最初は
俺は女性に対して、気が使える男なんだ。ヒモの
「え、えぇ……」
人のことを
「ね、ねぇ? そ、そもそもさ、本当にあの子のヒモになる気してるの? 私が言うのもなんだけど、狂気の
「素人が」
俺が吐き捨てると、衣笠は「どういうこと?」と疑問の声を上げる。
「まず、アイツが、俺を刺す確率は3割程度しかない。昨日、俺を刺せなかった時点で、ヤツには
「……なんで、そう思ったの?」
林檎の刺さったフォークを下げ、
「〝最初から〟、
はじめは、俺のことを本尊化するために包丁を持ち込んだかと思ってたが、ヤツは『まずは、聖水で身を
神である俺との
「……桐谷って、案外、頭良いの?」
「いや、良くはない。命の危機に
ヒモにのみ使用を許された、ユニークスキルとも言えよう。
「ね、桐谷」
衣笠は
「桐谷の推測通り、アレは私があの子に指示して持ち込ませたものだよ。だからね、あの子の愛情は
お前、
「桐谷、ココから出たい? 出たいよね? あの子、何するかわかんないもんね?」
「いや、別に」
「ココから出る方法はひとつだよ」
話、聞けよ。
「私に恋をして」
その
「お前……まさか……」
「桐谷、お願い! 一生懸命、お世話するから! 愛さなくていいから! 私に恋をして! 恋をしてるって言っ――」
着信を
「もしもし、どうし――えっ?」
「スピーカーにしろ」
俺の指示通りに、彼女は震える手でスピーカーをオンにした。
「み、
聞き慣れない女の子の声が、
「有り得ない……偽造工作は、完璧なんだよね?」
「は、はい! アキラ様に
俺の
「だ、だとしたら、なんでバレたの!? どうして!?」
「わ、わかりませ――」
何らかの攻防が行われているらしい雑音が聞こえてきて、その後、電話口から何も聞こえてこなくなる。
息を
「見つけた」
水無月さんの
「き、桐谷! 行くよ!!」
「お、おい! 下手に移動しない方が――」
「位置がバレてる!! このままじゃ、水無月に桐谷を
パニックで頭の中に浮かんだ感情を言葉にしている衣笠は、震える手で有刺鉄線と
「あっ」
そして、コチラを見つめている
「見つけた!!
結の行先を中心として、半径25mの円内を周回させていた
「でも、遠すぎる……!
舌打ちし、彼女は、携帯電話で結を呼び出した。
「水無月先輩、見つけたよ!! 位置は――」
位置情報を送りつつ、淑蓮は既に駆け出している。
「二人で争っている間に、お兄ちゃんを奪う……漁夫の利だ……待っててね、お兄ちゃん!」
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