動くヤンデレ、祈るヤンデレ
「……やられた」
彼女がもっているのは、最愛の人である
「〝わたしが入れた〟弁当箱を逆に利用された……お仕置きのつもりだったのに、アキラくんが無反応だったのはそう
正確に言えば、結がお仕置きと
血液をふりかけた記憶はないし、蓋の裏に手紙をつけた覚えもない。アキラのストーカーに対する恐怖心を利用し、ちょっとした脅しをかけるつもりで、自分の黒髪を切って弁当箱に詰めたのだ。
もし、その弁当箱が他の人間の目に入って
日頃の行いは優等生そのものなので、まず、ストーカーに罪をなすりつけられるだろうと、彼女は
「わたしが弁当箱を入れたのは、昼休み前。だとすれば、誰かが目を盗んで、弁当箱に血液を入れたことになる」
まず、間違いなく、
だとすれば、この血は
「……左腕の包帯」
血液の入手ルートとして、結は彼女が左腕に巻いていた包帯に
「いや、間違いなく、アレは
そう考えれば、傷があるのは右手首だろうか――結はそう考えたが、彼女の右手首には傷がなかったことに気づき首を振る。
「注射器を使うのは、デメリットが大きすぎる……傷を隠す方法があるのかな……?」
殺意を押し殺しながら推理を進める結の腰元が震え、着信に応えて彼女は携帯電話を耳に当てた。
「ファンデーションテープですね」
兄の帰りが遅い――死にかけの動物を思わせる声を出した
「ファンデーションテープ?」
「傷跡隠しテープとも言われる市販品ですよ。普通のシールみたいに肌に貼れて、一週間は効果が持続します。一種の人工皮膚みたいなもので、リストカット
まー、水無月先輩みたいなぁ、お兄ちゃんへの想いでリスカしようなんて考えたりもしない、
「余計なお
結の問いかけに、
「
「そういうこと」
もちろん、使えるだけ使ったら、
「ま、いいですよ、組んであげても。今回のは、たぶん、水無月先輩レベルでヤバイですから。
「確かに、わたしすらも
衣笠真理亜には、まだ隠された秘密がある……そして、そのことを、彼女は騙し通そうとしている……そんな気がしてならない。
「だとしても、疑わしいのは確かだったし、髪の毛と爪なんて、
「ストーカーだと
「そう判断して、まんまとお兄ちゃんを連れ去られたと?
ハニートラップに弱すぎですよ、水無月先輩」
「実際に、アキラくんに
通話しながら、アキラの机を
「で、その女、殺すにしても、遺体は処理できるんですか?」
「一体ぐらいなら、どうにかなると思うな。でも、将来のアキラくんとの生活の前にリスクを抱え込みたくないから、豚小屋で飼うことになりそう」
通話口の向こうから、結に向けられた
「まぁ、どうぞ、お好きに。お兄ちゃんを取り戻せれば、私はそれで満足ですから」
その
「待っててね、アキラくん。アナタの愛する結が行くよ」
床に落ちていたアキラの髪の毛を拾い上げ、
俺の前に立っている黒尽くめの少女は、自作らしい
「あ、アキラ様を……お、お迎えしたら……ま、まずは、聖水で身を
おっと、俺はお魚さんかな?
「なぁ」
「あ、あぁ……! あ、アキラ様……は、はぁあ……!」
俺が呼びかけると、彼女は
「俺は、神だよな?」
「も、もちろんでございます……ぼ、ボクにとって、アキラ様は……か、神と同じで――」
「うどんが食べたい」
神の俺は、目を閉じて、祈るようにして
「うどんが……食べたい……」
慌てて駆け出した彼女を見守り、俺は
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