疑惑のお家へGO
「
「ありがとう」
「どうして、急に髪型、変えたの?」
「……なんででしょうね?」
放課後、隣の席で雑談を行う水無月さんから、手足を絡め取ってくるような視線を向けられ、俺はそそくさと立ち上がる。
「アキラくん」
「どこに行くの?」
受け答えの度に生死が
「とりあえず、
「
廊下で立ち話しているだけだというのに、既に噂話をされている彼女は、愛らしい顔立ちを不満そうに歪ませる。
「ダメ、絶対に行かないで。
わたしの〝お仕置き〟、まだ身に染みてなかったの?」
お仕置き? え、俺、知らずに何かされてんの?
「
危険人物は、お前じゃい!!
「忠告は有り難いんですけど、アイツに疑惑を
「そこまで、彼女に興味があるの?」
「いや、
でも、ヤツに大事な物を盗まれたので、取り返さないといけないんです」
「大事な物?」
「ゆいの写真です」
数秒間沈黙した後、水無月さんが急激に赤みを帯びて、両頬を手で覆い「う、嘘……」とささやいた。
「で、でも、そ、それが本当だとしても、ゆ、ゆいが取り戻すよ……あ、アキラくんは、ダメ……」
お、
「これでも、俺、男ですから……大事な人の写真、取り戻そうと思ったら……ダメ、ですか?」
「だ、ダメだよ……」
水無月さんを壁に追い詰めてささやくと、恥ずかしそうに目線を逸した彼女が、ちらちらと俺を
「ぜ、絶対、ダメ……」
なんで、目を閉じるの?
「大丈夫。危険なことはしませんし、直ぐに〝ゆいの元〟に帰ってきますから。
それに、いざという時は、助けに来てくれるんですよね?」
「う、うん……」
唇を突き出すな。
とりあえず、
結局、雲谷先生による生徒指導は、
「ココがあたしの家だよ」
「ふ~ん」
一般住宅、マイナス100ポイント。
「上がって上がって」
植木鉢の底にある鍵を取り出し、衣笠は扉を開けて、自宅へと招き入れてくれた。
リビングには使用感のある小さめのテーブルがあり、壁に隣接している
「
「温かいお茶で……トイレ、借りてもいいか?」
「あぁ、うん。どうぞ」
俺は廊下に出て、忍び足で階段を上がり、
既に
よし、開け――
「桐谷」
背後から声が聞こえ、俺が振り向くと、笑顔の衣笠が立っていた。
「トイレ、そこじゃないよ?」
「……間違えたんだ」
なんで、足音消すの? 忍者なの?
「いいよ、誤魔化さなくてさ……あたしの部屋、興味あるんでしょ?
ほら、視ていいよ」
そう言って、衣笠は扉を開け放ち、何の
「ど、どう? なんか変?」
自分の部屋を見られる気恥ずかしさで、
「あ、あの、衣笠、さん?」
「なに?」
押さえつけるようにして、俺の両肩に衣笠の爪が喰い込む。
「間違えだったら、アレなんですが……」
振り向かされた俺の視線の先では、衣笠の後ろに立っている黒尽くめの少女が、長い黒髪で顔を覆い隠していた。
「どうして、家にある〝全て〟の家族写真に、アナタが〝一枚たりとも〟映ってないんでしょうか?」
「ココが、あたしの家じゃないから」
「黙って付いてきてくれるよね、アキラくん?」
両手を挙げて、俺は
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