水無月結(ヤンデレ)は夢を見る
わたしが通っていた幼稚園の先生は、アキラくんを
『モモ先生』と呼ばれていた彼女は、どこにでもいそうな優しげな先生で、特にアキラくん一人を
アキラくんがいなくなって世間がざわつく前、彼女はわたしと〝わたしの親友〟に対してこう言った。
「愛情を示すのに、手段なんて選んじゃダメだよ」
モモ先生は、アキラくんを取り合って引っ張りっこをしていた、わたしと彼女を眺めて
「愛にね、
「どぅゆーこと?」
わたしの親友は海外生まれで、綺麗な
「ねぇ、ゆいちゃんは、アキラくんとずーっと一緒にいたい?」
わたしは、こくりと
「そっか」
その時――確かに、先生の
「それなら、誰にも渡さないように、アキラくんを〝監禁〟しないとね?」
「かんきん?」
「……本当に彼が好きなら」
モモ先生の笑顔は、どこか
「いずれ、わかるよ」
先生が逮捕されたのは、それから少し経った後のことで、彼女が犯した決定的なミスは『アキラくんが風邪を引いて、病院へと連れて行った』ことだった。
全国的なニュースになった
「ぜんぜん、こわくなかったよ?」
だけど、アキラくんはあっけからんと言った。
「モモせんせい、すごくやさしいもん。なんで、みんな、モモせんせいのことをわるくいうの? いっしょにくらして、すごくたのしかったよ? おかあさんよりりょうりがおいしいし、おやつもくれたし、なにもひどいことしなかったよ?」
世間的には、アキラくんは洗脳状態に
「……彼は特別でした」
特殊性癖をもった変態として、モモ先生は社会から
「わたしがどれだけの愛情を示しても、彼はどこか〝
雑誌にも
「年齢差なんて問題じゃない。愛情を示すのに、手段を選ぶ必要なんてありません。
ただ――」
わたしには、先生の
「彼と一緒にいたかったんです。少しでも長く、それがおかしいことだと言われても、一緒にいたかったんです。
そう思うのは、何かおかしなことなんですか?」
そして、わたしは、幼稚園でアキラくんを引っ張っている。
「将来、アキラくんは、フィーが監禁するの~」
「ゆいが監禁するの~」
わたしとわたしの親友が示していた〝愛情〟は、ものの見事に問題視されて『絶対にそんなことしちゃいけません!』と
「ゆい。あなたは、第二婦人よ。フィーは必ず帰ってくる、忘れないで」
わたしの親友は、その言葉を残して海外へと飛び――そして、わたしは、今でも彼のことを愛している。
「……懐かしい夢だな」
目覚めたわたしは、朝日を浴びながら
「アキラくん、絶対に
昨日まで、彼がこの家の中にいた……その事実を再確認し、わたしは
「好き……アキラくん、好きだよ……アキラくんが、ゆいとのこと憶えてなくても……好き、好きなの……」
彼の
「愛して、アキラくん……ゆいだけを愛して……他の女なんて視ないで……そしたら、ゆいは……」
――愛情を示すのに、手段なんて選んじゃダメだよ
「アキラくんと一緒にいられるように――〝なんでも〟してみせるから」
「……で、お前は誰?」
リボンを
「――話したでしょ?」
「え?」
「昨日……電話したでしょ……?」
「あたしが! あんたの! ストーカー!!」
「……は?」
恥ずかしそうに、彼女は真っ赤な顔を両手で
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます