第24話
宿の中で別大陸の勇者が行方不明になった事に話したら、 そうなの、今考えても憶測でしか判断出来ないから、ミウって子と会った時に話し合いましょう。 と言われてしまい、すぐに寝てしまった。
しかし、行方位不明になったなんて信じられないな。もしかして攫われた? いや、それだったら大々的に公表して、探すだろう。
あるいは・・・・・・。
「明確な情報がない状態で、考えたって仕方ないわよ。それに、私の護衛任務をしているんだから、集中しないとダメよ」
「あ、いえ・・・・・・すみません」
そうだ、今は馬車で移動中だった。こんな時に考え事をするのは良くないな。
「それに私の国でも、その国に諜報員を送り込んでいるの」
「えっ!?」
それって、機密情報の一つじゃないのか? アメリカやロシアだって 他の国の諜報活動しています。 なんて絶対に口が裂けても言わないもんなんだぞ。
「その諜報員は今日辺りに帰ってくる予定だから、持って来た情報と照らし合わせながら、考えましょう」
「・・・・・・わかりました。集中を乱して、すみませんでした」
素直に頭を下げて謝罪すると、オウカさんの口から うんうん。 と言う声が聞こえる。
「そういえばオウカ殿」
トウガさんが馬車の小窓から覗いて話し掛けて来た。
「なに?」
「今回の四ヶ国間協議会は、一体なにを話し合うんじゃ」
「えっとぉ、たしかぁ〜・・・・・・関税の話と勇者達の活動の話、そしてメインが魔族対策についての話ね」
うわぁ・・・・・・関税、勇者の活動、魔族対策の三つだけだけど、会議が長くなりそうだなぁ〜。
「魔族対策か・・・・・・エルライナ殿」
「お主は魔族と戦ったんじゃろ?」
「ええ、まぁ・・・・・・戦いましたよ」
「戦ってみてどうだったのか、聞いてもよいか?」
ハッハァ〜ン、なるほど。この人は経験者に聞いた方が良いと考えているんだなぁ〜。
「私がドーゼムと戦った時、影を自在に操る能力は厄介に感じましたし、強いとも思いました。それにドーゼムは範囲攻撃やトラップ的な攻撃も出来そうな感じもあったので、魔人に対してなにかしらの対策をした方が良いかと思います」
それに向こうも仲間に俺との戦闘データを情報共有してるはずだから、なにかしら俺の対策を練っているかもしれない。だから俺個人的にも、なにかしらの対策しないといけない。
「うむ、そうか」
「参考になりませんでしたか?」
「いや、参考になった。礼を言うぞ」
そう言うと、小窓を覗くの止めて前を向いた。
「それにしてもエルライナさんは、スゴいわねぇ〜」
「うっ!? そ、そうですか・・・・・・」
顔が熱くなるのが分かるけど、耐えてやる! 耐えてやるぞ俺はぁぁぁああああああっ!!?
「あら、顔が赤いけど大丈夫?」
「あ、らい・・・・・・大丈夫です。続けて下さい」
「そ、そう? 魔人は撃退するし、化け物を倒すなんて出来ない事よ」
「いえ、両方とも他の人の協力があったから、成し遂げられた事です」
ピーチさんがいなかったら大輝くんが死んでるか脊髄損傷で、植物人間状態になっていたかもしれないし、化け物の時だってエイド教官達がいたから、安心して戦えた。
そういえば、総合ギルドに行った時にエイド教官に会わなかったなぁ。俺のせいだと思うけど。
「謙虚ねぇ〜・・・・・・あ! そういえば聞きたかった事があるんだけど、聞いても良いかしら?」
「答えられる範囲でなら、話しますよ」
俺の前世関連は言わない方が身の為だと思う。
「ミウって言う人と、どうやってお話をしたの?」
「あ、それはですね。美羽さん達にスマホを渡したんです」
「スマホ!? アナタそんな便利な物まで出せるの?」
「ええ、出せますよ」
「へ〜、そうなのぉ〜・・・・・・ん」
彼女はそう言うと、微笑みながら手のひらを差し出して来た。
「えっとぉ〜・・・・・・その手はなんですか?」
「私にもスマホを頂戴」
「無理です」
「なんでよ! そんな便利な物を持っているのなら、誰だって欲しいに決まってるでしょ! ちゃんとお金を払うから私に頂戴よぉ〜! うわぁ〜ん!」
本気でスマホが欲しいのか、大の大人が俺に泣きついて来た。
俺はアンタの親じゃないから、止めて欲しい。後、オデコのツノが刺さって地味に痛いな。
「良いですか。私が出すスマホは、オウカさんが思っているよりも便利な機能が搭載されていませんよ」
「そうなの?」
「はい、必要最低限の機能だけ入れてます。例えば基本的な時計と電話とメールに加えて、電卓やカレンダーとかですね。あ! 後、最近L◯NEも使えるようになりました」
◯INEの方はつい最近に神様が出来るようにしてくれた。でも使う人が限られているから、あってもなくても困らないよなぁ〜。
「やっぱり欲しい! 私にスマホ頂戴!!」
「うわっ!?」
なぜだ。諦めるような説明をしたはずなのに、むしろ欲しいと言って来たぞ。
「時計と電卓機能は便利じゃない! 私仕事でメッチャ使うから欲しい!!」
あ、ヤバ! 役職柄、電卓は必要だよな。それに時間も気にしなきゃいけないもんね。美羽さんや大輝さんのように、この人はゲームアプリ落として遊ぶのが目的ではなかったのか。
それにポイントもそれなりに掛かるし、渡しても良い人なのか判断出来ないからなぁ〜・・・・・・。
「ポイントがそれなりにぃ〜・・・・・・」
「また稼げば良いじゃない!」
「・・・・・・電卓と腕時計を渡すので、それで勘弁してください」
「スマホが良いの!!」
ダメだこりゃ、仕方ない。最終手段に出ようか。
「分かりました」
「えっ!? 渡してくれるの?」
「神様に渡して良いのかどうか聞いて判断して貰います。神様がダメって言ったら、諦めて下さいね」
渡して良いよ。って言うと思うけど、俺のポイント事情がある為、神様が渡して良いよと言ってもダメってウソを吐こう。
「分かったわ」
「じゃあさっそく・・・・・・ってあれ?」
連絡を取ろうとしたら、向こうからメールが来た。 なんだろう? と思いながら開いてみた。
役職柄色んな人にスマホを見られて狙われちゃうもしれないから、彼女にスマホを渡しちゃダメだよ。昨日渡したフ◯キラーとか洗剤とか食べ物とかならOKだよ。
ああ・・・・・・神様はやり取りを見ていたんだな。
「今メールが来ました。ダメだそうです。潔く諦めて下さい」
「そんなぁ〜・・・・・・」
しょげるオウカさんの姿を見て、可哀想だなぁ〜。と思ったので、ストレージからとある物を取り出す。
「まぁまぁ、これでも食べて元気を出して下さい」
「・・・・・・チョコレート?」
そう、俺が取り出したのはチョコレート。この大陸ではあまり出回らないので、貴族達が嗜む高級品扱いなのだ。
因みにこの事実を知ったのは、半月ぐらい前にリマちゃんにチョコレートをあげたら、お婆さんが鬼の形相で、 今すぐ本人に返せ!! と言いチョコレートがどれだけ高いのか、説明と言う名の説教をして来た。
説教中にリマちゃんが、 このチョコたべれないのぉ〜? って泣いていた。まぁ、結局食べて貰ったんだが、あのお婆さんもリマちゃんと一緒に食べていた。解せぬ!
「私、甘いの苦手」
残念、甘いチョコレートを嗜めない人だった。
「醤油せんべえがあったら欲しいなぁ〜」
「それでしたら、はい」
そう言って醤油せんべえと緑茶を渡すと、ニコニコさせながら食べだした。
「あ、そうだ。せっかくですから、なにかボードゲームを渡すので流行らせましょうよ」
オウカさんはそれなりに有名そうだから、商品開発のコネも持っているはずだよね。
「ボードゲームねぇ〜・・・・・・将棋やチェスとかメジャーなところはもうあるのよねぇ〜」
もしかして、先代の勇者達が流行らせたのかな?
「それじゃあ・・・・・・こういうのはどうですか?」
ネット通販とかでよく売っているピンボールのおもちゃを取り出して見せると、まじまじと見つめていた。
「私ゲームでしかやった事ないけど、面白そうね。ちょっとやらせて貰っても良い?」
「どうぞ」
渡して即、オウカさんはユウゼンさん達と共に夢中になって遊んでいた。
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