第23話
なって! 嫌です! の言い争いを続けた後、村にある宿屋で一泊する事なった。 まだ日が沈む時間じゃないから、もう少し進みましょう。 と言ったのだけれども、この村を過ぎてしてしまったら、今夜は野宿するしかないらしい。
俺自身は野宿するのは別に構わないが、オウカさんが野宿をしたくないみたいなので聞き入れた形だ。
こういうところって、ダニとかノミがいるかもしれないからな。念を入れて、吹き掛けておいた方が良さそう。
ストレージから◯マキラーを取り出す。
「オウカさん、ベッドにフ◯キラーを吹きます。だから少しの間湿っぽくなっちゃいますが、気にしないでくださいね」
「あら、助かるわ。お願いね」
オウカさんの了承を得たので、ベッドに◯マキラーを吹き掛けていく。
「それと、そのフマ◯ラーが欲しいわ。一本買わせて」
「別に構いませんが、使い続けるのでしたら、これ一本じゃ足りないんじゃないんですか?」
ましてや俺は配達業者じゃないから、フマキ◯ーが無くなったから、送って欲しい。 なんてお願いを聞きたくない。
「いいえ、その一本を元にして商品を作るのよ」
あ、なるほど。異世界版のフマキラ◯を作ろうとしているんだな。
「じゃあ銅貨五枚で取引しましょう」
「あら、安いわね。もっとお金を取るのかと思っていたわ」
オウカさんが銅貨五枚を差し出すので、ストレージから買い置きしておいた◯マキラーを取り出して、銅貨と交換をする。
「まぁ私はいつでも出せますからね。因みに言っておきますが、魔物とかを倒したポイントで交換する形なので、大量には渡せませんよ」
「ねぇ、そのポイントってお金に換金したり、その逆も出来ないの?」
「私自身やろうとしてみたのですが、出来ませんでした」
ウソです。やろうとしたところを神様に見られていて、 それが出来ちゃったら経済が乱れちゃうから、ポイントとお金の換金は出来ないようにしておいたんだよぉ〜。 って言われた。
言っている事が最もなので反論が出来ない。それに冷静に考えてみれば、ポイントからお金に換金を続けていれば、回り回ってインフレーション現象が自分の身にも降りかかってくるので、出来てもやらない方が身の為だ。
「そうなんだ。それと、私が個人的に欲しい物があるんだけれども・・・・・・それも貰っていいかしら?」
「え、良いですよ」
そう言って“段ボールに詰まったカップラーメンの醤油味と、シーフード味の二箱をストレージから取り出す”。その様子を見たオウカさんは、ポカンと口を開けて驚いていた。
「タダで渡しますよ。それとまだたくさんあるので、もっと欲しいのでしたら言って下さい」
「えっ!? アナタもしかして、カップラーメンをこんなに買ったの?」
「あ〜・・・・・・違います。この間、迷宮の前で私が倒したバケモノの事を知っています?」
「ええ、聞いているわ」
「その、メルティナス様からご褒美として、たくさん貰ったんですよ。シーフード味十箱と醤油味十箱も」
そう、あのバケモノを倒した次の日に、メルティナさんが ご褒美にカップラーメンを二箱差し上げまぁ〜す! と言われた。いや、ご褒美なら神様から貰ったから大丈夫です。 と言おうと思ったけど食費が浮くと考えれば、貰っても損はないか。と思ったので素直に受け取った。
そしたら、 よし、在庫が一気に減った! と変な事を言うので聞いてみたら、素直に答えてくれた。
実はメルティナさんは俺がバケモノと戦う一週間前に、くじ引きでカップラーメンを当てたのだ。しかし、醤油味十箱とシーフード十箱の尋常じゃない量なので、処理に困っていたらしい。
そして、盗み聞きしていたリトレアスさんが、 最近メルティナス先輩は、カップラーメンばっかり食べているので確実に太っt、グフッ、なのですっ!? メルティナさんに鳩尾を殴られた上に、言葉に出来ないぐらいにエゲツない追い討ちを掛けていたので、慌てて停めて、需要がありそうな気がしたので、カップラーメンを全部貰う事にした。
そしたら泣きながら、とても嬉しそうにしていたメルティナさんと、ボロボロな姿でも、“なのです”とちゃんと語尾言うリトレアスが、印象的だったのは言うまでもない。
「そう、じゃあシーフードと醤油を三箱づつ貰って良いかしら?」
「どうぞ!」
未開封の醤油味が入っている段ボールと、シーフード味の入っている段ボールをそれぞれ三箱づつ取り出すが、 あっ! と言ってある事に気づく。
「これ、オウカさんはどう運ぶんですか? 持ち運び出来ないんでしたら、私が魔国に着く時まで持っていますが」
「それなら心配ないわ。私、大きい容量のアイテムボックススキルを持っているのよ」
「そうですか、なら安心ですね」
オウカさんがアイテムボックススキルは習得していたとは、ちょっと意外だった。もしかしたら、転生者や転移者の特典スキルの一つかもしれない。
「ん?」
連絡先は、美羽さんだ。ちょこちょこ電話をくれるので、友達感覚で話すほど仲良くなった。この間のも、 すき焼きを作ったら、みんなに食べられちゃったんだぁ〜。 って話したら、 今度会った時に私達にも作って欲しい。 と言われたので、 もしかしたら墓穴を掘ったかもしれない。 とその時に後悔した。
「どうしたの、エルライナさん?」
「コール、電話って言った方が分かりやすいですね。出るので、ちょっと静かにしていてくださいね」
そう言ってからオウカさんに背中を向けて、電話に出る。
「もしもし?」
『こんばんは、エルライナ。今時間ありますか?』
この呼び捨ても、親しくなった証拠である。
「ああうん、今宿いるから平気だよ。で、どうしたの? また大輝くんの愚痴?」
この間は酒場の女性を見いていた。って愚痴って拗ねてたし、ホント好かれてるねぇ〜・・・・・・てか、気づけよ大輝くん。
『うん、その・・・・・・エルライナは今、魔国の大使と一緒に魔国へ向かっているんですよね。総合ギルドで聞いた通りですね』
「あ、うん、そうだよ。今目の・・・・・・なんでもない、気にしないで」
今目の前にいるよ。 えっ!? 大丈夫なんですか? って説明が始まりそうだから、言わない方が良さそうだ。
『そうですか。私達も皇帝陛下と共に魔国に向かっています。だから魔国で会う事になりそうですね』
「あ、そうなんだ」
その時に、 すき焼きを作って欲しい。って、言わないよね? もう黒毛和牛全部食べられちゃったから、同じクオリティのを作るのは無理だよ。
「それで、本題なんですけれども、別の大陸で召喚された勇者の事なんですがぁ、もしかして、もう新しい情報がそっちに行ってますか?」
「勇者の新しい情報?」
俺がそう言うと肩をトントンと叩かれたので、 なんだろう? と思いながら振り向くと、オウカさんが口パクで、 その電話が終わった後に、私にも教えて。 と言って来たので、首を縦に振る。
「私のところには来てない。なにかあったの?」
『勇者がいる国に潜入している帝国の隠密部隊からの情報ですか、今行方不明になっている生徒の他に、もう一人行方不明になった方が人がいるみたいです』
「なんだって!? ほ、本当ですか?」
『ええ、帝国の隠密部隊の情報ですから、間違いありません』
一体どうなっているんだ? 俺の他に行方不明者が出るなんて、どう考えてもおかしい。
『エルライナが驚く気持ちも分かります。詳しい話は会った時にしましょうか』
「そうだね、情報をくれてありがとう。向こうに着いたら、なにか奢るよ」
『伊織の分もお願いします』
「あ、分かった。伊織ちゃんの分も奢るよ」
『ありがとう。それじゃあ、エルライナと会うのを楽しみにしていますね』
『私も、美羽さんと楽しみにしているからね』
そう言って電話を切って気づいた。 あれ? 大輝くんの分は奢らなくても良いのかな? と。
「まぁ彼は彼で自分で払ってくれるでしょう」
「ねぇ、さっきアナタが言っていたミウって、もしかしてこの大陸にいる勇者の一人、 ミウ・イノハラ の事?」
「はいそうですよ。彼女にスマートフォンを渡しているので、いつでも連絡が取れるんですよ」
「え、スマートフォン!?」
オウカさんはとても驚いていたが、俺の両方を素早く掴んでくる。
「私にもスマホをちょうだい!」
「落ち着いてください! それよりも、さっきの会話が気になってたのではありませんか? それに、今のうちにオウカさんも把握していた方が、良いと思っています!」
「そ、そうね。取り乱してゴメンなさい」
オウカさんは申し訳なさそうに、両方を掴んでいる手を退けてくれた。
「ミウさんからの回って来た情報で、他の大陸で召喚された勇者がもう一人、行方不明になったそうです」
俺がそう話をすると、オウカさんは目を見開き驚いていたのだった。
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