第17話
〜〜〜 アグス side 〜〜〜
「全員注目っ!!」
アグスがそう言うと四十人の兵士が一斉にアグスに身体を向ける。
「お前達の連携のお陰で無事に一階を通り抜けられた! だが二階も一階のように突破出来るとは限らない! このまま油断せずにこのまま行くぞ!!」
『オオオオオーーーッッッ!!!』
アグスは兵士達は掛け声と共に自分の持っている武器を掲げる姿を見て満足そうな顔をしながら、こう思う。
三十人もいればたった一匹の化け物ぐらい倒すことは容易に出来るだろう。そしてその化け物を倒せば、我がデノール家の復興になる。そうすればきっと・・・・・・。
「隊長」
「どうした、なにかあったのか?」
考えていることを中断して話しかけて来た兵士を見つめると、なんとも言えないような顔をしながら俺を見つめてきていた。
「・・・・・・本当に良かったのですか?」
「なにがだ?」
「市民の安全を確保せずに迷宮に入った事・・・・・・」
「残していった兵士達に俺が 安全確保をしておけ! と言っておいたから今ごろやっているだろう?」
やってなかったら、残してきたヤツら全員を命令違反クビにしてやる。
「そうですか・・・・・・それともう一つ」
「なんだ?」
まだなんかあるのか。いい加減自分の仕事に戻って欲しいものだ。
「ダレン副団長を連れずに迷宮へ入って良かったんですか?」
「っ!?」
アグスはその言葉を聞いた途端、怒りに触れたのか眉間にシワを寄せながら言い出した。
「・・・・・・アイツは俺の命令に従わなかったから連れてくるのを止めた。後、化け物を倒し終えたら命令違反の罪で罰則を与えるつもりだ」
魔法学園時代の頃は俺のことをよく慕ってくれていたいたが、今じゃもう俺にあーだこーだ意見してくるようになった厄介者で顔を見るたびにうんざりしてくる。
「そうですか・・・・・・我々だけでその化け物を倒せるのしょうか?」
「なに、作戦を立てているから心配することはない。俺の指示通りに動けば上手くいくはずだ」
しかし、上手くいくはずとは言っても戦いは戦いだ。何人か犠牲者が出てしまうかもしれない危険性があるな。
「指示通りって・・・・・・剣で斬られても平然としている化け物をどうやって・・・・・・」
「くどいぞ! ヤツを見つけることに集中しろ!!」
アグスが怒気が籠もった声で言うと怯えた顔で見る。そして声を震わせながら話し始めた。
「わ、分かりました・・・・・・アグス隊長」
彼はアグスから視線を逸らすと逃げるようなようすでアグス隊長から離れて行った。
フンッ! 全くどいつもこいつも俺に歯向いやがって、隊長命令だと分からんのか?
「た、隊長ぉぉぉおおおおおおっっっ!!?」
アグスは必死な顔をしながら走ってくる兵士に対して、情けない姿晒すな! それでも貴様はリードガルム王国の兵士かっ!! と言いたのをグッと堪えて別の言葉を投げかける。
「ええい、そそっかしい・・・・・・・今度はなんだ?」
「い、いいいいいいい、いました!! 報告通りの化け物がこの先で歩いてますっ!!」
「なに、本当か?」
「はいっ! 化け物は我々に向かって歩いているのではなく、我々いる場所とは逆方向に向かって歩いているのでこちらに気づいていません! なのでヤツに不意打ちが出来ますっ!!」
ほう、それは好都合だな。
「ならば弓隊前に出ろ! その後ろを盾がつくんだ。いいか、矢を放ったら即座に盾の後ろに回り剣に持ち替えろ。
盾を持ってる奴らは弓隊が後ろに下がったら通路を塞ぐようにしてしっかり守りを固めろ。いいか、絶対に化け物を後ろに通すなよ」
『はいっ!!』
兵士達は返事をするとアグスに言われた通りの陣形を造ると、アグスに一番近い兵士が話しかけてくる。
「隊長、準備が整いましたっ!!」
「よしっ! 進軍開始! いいか、悟られないように気配を押し殺して進むんだ」
「分かりました!」
アグス達はこの先にいる化け物を倒す為に通路進むのであった。
〜〜〜 エルライナ side 〜〜〜
・・・・・・どうしてこうなったんだ。
10mぐらい先に的であるボロボロの鎧が飾ってあり、私の両隣りにはエイド教官やダレンさん達が S&W M500 を興味深そうに見つめてくる。そこまでは良いのだけども、離れて見ているギャラリーがさっきよりも増えているのだっ!!
「あの・・・・・・エイド教官」
「ん? どうしたエルライナ?」
「そんなに期待しないで下さいよ。プレッシャーを感じて撃ちにくいですよ・・・・・・ホント」
あぁ・・・・・・エイド教官達とギャラリーの期待の眼差しがマジで痛いです。
「気にするな。てか早く撃て」
「エイド教官に同意だ」
「早くミハルに見せてよ」
「僕もやり残した仕事があるので出来れば・・・・・・」
何このアウェーな状況・・・・・・もしかして俺が悪いの?
「えぇいっ! ままよっ!! 撃つので私から離れて下さいっ!!」
ヤケクソ気味になりながら、シリンダーにデカくて長い薬莢を五発全て入れると的である甲冑に狙いを定める。そしてトリガーに指を掛けて絞ろうとするが最後のハンマーが落ちる寸前で恐くて止まってしまう。
「どうしたエルライナ? 手が震えてるぞ」
「もしかして、ビビってるの?」
あぁビビってますよっ!! なんせ世界最強のハンドガンを撃とうとしてるんですからねっ!!
そう心で毒づいた後に S&W M500のトリガーを絞りきった途端、けたたましい音が音と共に凄まじい反動が手から肩まで一直線に貫くように来た。どっしりと構えていたのだけれども踏ん張りきることが出来なかった為、仰け反ってしまった。
「〜〜〜〜〜〜っ!? いっっったい!!?」
即座にグリップから右手を離して手を振りながら言ってしまう。
「ちょっとぉ、アンタ大丈夫?」
「無理・・・・・・マジ痛い。平手にしているところをグーで思いっきり殴られた感じの痛みがする」
とある動画じゃコレを片手で連射していたけどさ、片手撃ちは俺には無理だ! 両手持ちでこんな風になってんだもんっ!!
「あっ! ミハルちゃんどこら辺に当たったか見てた? コレの反動を抑えるのに必死になってたから、どこに飛んでったのかよく見てなかった」
ボロボロの鎧が健全なのは見て分かるが、弾がどっちの方向に飛んでったのか分からないとサイティングの修正をしようがない。
「地面が抉れたから地面に当たった思う。しかも鎧の手前」
「ああ〜・・・・・・多分私が反動に耐えようと身構えてビビりながら撃ったから、無意識に銃口を下げちゃったみたい。そのせいで地面に当たっちゃったみたいだね」
ああ〜ヤベェ・・・・・・・まだ手がジンジンするよ。
「しかし、お前が迷宮で使ってたのとは違って凄まじい爆音を立てるな」
「まぁ私がいつも使っている JERICHO941PSL より強力な武器ですからね。一回の装填で五発しか撃てないし反動もバカみたい強いので、実戦で使う事はないですよ」
少なくとも地球の実戦ではね。
「手に痛みを感じるほどの反動か・・・・・・てかお前、両手大丈夫なのか?」
「はい、大丈夫なので二発目撃ちますよ」
実際はまだ痺れが少し残っているけど、ちゃんとグリップを握れるから大丈夫・・・・・・だと思う。すっぽ抜けたらゴメンね。
そう思った後に S&W M500 を構え直すとハンマーを親指で引き上げた後に鎧に狙いを定める。
大丈夫、大丈夫、なるべく大きくゆっくり息を吸った吐いたりして緊張を解くんだ。そして落ち着いて来たところで普通の呼吸に戻せば完璧。
「スゥー・・・・・・ハァー・・・・・・スゥー・・・・・・ハァー・・・・・・」
・・・・・・よし! いけるっ!!
トリガーを引きしぼり弾丸を放つ! すると鎧が少し揺れた。今度はちゃんと鎧に当ったみたいだ。
「よしっ!! 今度こそ当たったっ!!」
「・・・・・・地味。もっとこう当たった瞬間に、ドカァーンッ!? って爆発したりしないの?」
そんな事言わないでよミハルちゃんっ!? こっちは手が痛めるのを覚悟して撃ってんだからさぁっ!!
「でも、これで感覚は掴めただろう?」
「はい、こっちの方はだいたい分かりました。後もう一丁の方も撃たせて頂きますね」
「お好きにどうぞ」
S&W M500 を腰の右側に付けているホルスターに入れると今度は左側の Desert Eagle を引き抜き構ええる。そして鎧の胸辺りに狙いを定めると、狙いを修正しながらトリガーをゆっくり絞っていく。
もうちょい下の気持ち左・・・・・・今っ!!
トリガーを完全に絞りきった途端、 Desert Eagle のスライドが目の前まで迫って来た!
あっっっぶねぇぇぇええええええっっっっっっ!!? あのまま反動負けしてたら自分の顔を殴ってたわぁ〜。力を入れていたつもりだったけど耐えられなかった!
M500 を二発も撃ったせいなのか腕に力が入らなくなってた!!
「エルライナさん、危ないところでしたね」
「はい、危うく怪我するところでした。それよりも、どこら辺に弾が当たったか見てみましょう」
「そうですね。近づいて見てみましょう」
ジンジンとまだ痛い手で Desert Eagle をホルスターに仕舞い、エイドさん達と共に的である鎧に近づき表面を見てみる。
「胸と腹のところに穴が二つ空いてるが、どっちの武器が開けた穴なのかお前が見分けつくのか?」
「あ、はい。見分けがつきますよシドさん。胸の部分が最初撃った M500 で、お腹の方は Desert Eagle ですね」
胸を中心を狙ったんだったんだけども、やっぱり恐がってしまったせいなのか撃つ瞬間にハンドガンを下げてしまったのかも。
「・・・・・・うん・・・・・・なるほど、アナタの武器の事はよく分かりました。目で捕えられないほどの速さで飛んでくる小さな矢は確かに脅威になりますね」
矢じゃなくて弾頭なんだけども、説明するのも面倒くさいから矢って事にしておこう。
「ところでエルライナさん」
「はい、なんでしょうか?」
「もう少し練習していきますか?」
「いや、もういいですっ! 大丈夫なんで持ち場に戻りましょうっ!!」
これ以上やったら腕がヤバい事になるからやらない方が身の為だ!
「・・・・・・分かりました。では持ち場の方に行きましょうか」
「・・・・・・アイツ、ビビッたな」
「うん、ビビッたわ」
「ああ、絶対ビビッて止めた」
アンタら好き勝手言いやがって! クソォ〜っ!! この二丁を試射させて俺が感じている恐怖を味あわせてやりてぇ〜っ!!!
エイドさん達に顔を向けた瞬間にそっぽを向かれて、そのまま歩き出されてしまった。
「お〜いエルライナ、早くついてこい!」
「そうそう、いつあの化け物が地上に出てもおかしくないんだからよ!」
おいっ!? あんだけ楽しんでたのに終わったらその態度って、そりゃないよっ!! こっちはまだ手が痛いんだからさぁっ!!!
「ムゥゥゥ〜〜〜〜〜〜ッ!! ・・・・・・ハァ〜、分かりましたぁ・・・・・・」
エイド教官達に怒ったって仕方ないよね。
そう自分に言い聞かせながら、エイド教官達の後を追うのであった。
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