第16話

周りでは 避難する方はこっちに来て下さい!! とか こっちに人手をまわしてくれっ!? とか騒がしくしている中で、俺だけは迷宮の入り口の手前でクレイモア地雷を設置してトラップの準備をしている。

なぜこんな事をしているのかと言うと、役割を決める時にエイド教官から入り口の警戒を言い渡されたからである。


まぁ考えてみたらエイド教官が警戒に任命した理由が分かる。だって化け物を見たのは俺とエイド教官とミハルちゃんとドーラさんだけで、対応出来る実力があると言えば俺になってしまう。


「リモコン操作式の方のクレイモア地雷を設置許可が出て良かったよ」


でも、ありったけの数を使えって言われてもなぁ。爆破の衝撃波で洞窟が埋まる危険性があるから、俺の独断で四隅の近くに二個づつ置いておく事にした。もちろん警戒も怠ってない。


「もうちょっと右に向けようかなぁ?」


あの化け物が四ヶ所に設置したクレイモア地雷の真ん中に来た時に同時に爆破させて大ダメージを負わせようと言うシンプルな作戦を考えたんだけれどもぉ・・・・・・果たしてこれにかかるのかどうか不安である。


「・・・・・・これぐらいでよし。三つ目を設置しよう」


反対側に壁に行くとクレイモア地雷を取り出して設置を始める。


「えっと・・・・・・もうちょっと右かな? 後もう少し前に出した方がぁ・・・・・・これぐらいかな?」


「ちょっとアンタ、何してるのよ!」


おお、その声はミハルちゃんじゃないか!


「いや、罠を設置してただけだよ」


「罠? もしかしてその平べったい板みたいなのが?」


「そうだよ。四ヶ所に設置して爆発させてあの化け物にダメージを与えようかな? って考えてるんだ・・・・・・まぁ、まだ数を減らしたことをエイド教官には話してないけどね」


話ながら四つ目のクレイモア地雷の設置に取り掛かる。


「フーン、そうなの・・・・・・それと」


「それと?」


「アンタが腰に刺してる二つの武器は一体何?」


「ん? ああ!これ?」


腰の両側に刺している Desert Eagle(50AE弾使用) S&W M500(.500S&W弾使用) に手を添える。


「私の方から見て右側が S&W M500 で 左側は Desert Eagle だよ。二つともミハルちゃんがダンジョンで見たハンドガンJERICHO941PSL よりも格段に強いハンドガンとリボルバーを用意したんだよ」


しかも弾薬をダムダム弾にしたから自分自身怖いと思っているし、元の世界でダムダム弾にしているって言ったらヤバイヤツ呼ばわりされそうな気がする。


「へぇー、そうなの・・・・・・ん? ねぇ、その二つって強いのよね?」


「そうだけどぉ・・・・・・どうしたの?」


振り返ってミハルちゃんを見てみると眉間にシワを作りながら睨んで来ていた。


「強いんなら何で使わなかったのよ! 強い武器の方が断然良いに決まってるでしょ!?」


「ちょっ、ちょっと待って落ち着いて・・・・・・落ち着いてよミハルちゃん。これにはわけがあるんだからさ!」


「・・・・・・わけ?」


息が荒いけど話を聞いてくれそうだから有難い。


「ほう、そのわけを俺達にも聞かせて欲くれないかエルライナ?」


「はっ!? 師匠っ!! 聞いて、エルラ、グエッ!!?」


あらら、ミハルちゃんがシドさんの拳骨を喰らっちゃったよ・・・・・・泣きながら頭を摩るぐらい痛いんだね。


「グスッ!? 痛いぃ〜〜〜・・・・・・ヒック!?」


「全く、感情的になるな。 と前々から俺は言ってたよな?」


「・・・・・・うん」


「・・・・・・うん?」


「ヒッ!? ・・・・・・はい」


ミハルちゃんはそう言った後に俺の後ろに隠れると肩からひょっこり顔を出してシドさんを見つめる。


正直言っちゃうとさ・・・・・・ミハルちゃんが加害者で俺が被害者だから、被害者の俺の後ろに隠れないでくれよ。

まぁ元クラスメイトの連中と違って可愛いから許すけどさ。


「・・・・・まぁ待てシドニール、エルライナの武器についての話しをしたいから・・・・・・な?」


「・・・・・・まぁ、それもそうだな。ミハル、今後は注意しろよな?」


「はい・・・・・・師匠」


うんうん、ミハルちゃん良い子だ。だけどキミが掴んでいる腕に力を込めるのを止めて欲しい。正直言って痛いからさぁ・・・・・・。


「それで、その強力な武器を今まで使わなかった理由を俺達にちゃんと説明してくれないか?」


「ざっくり説明しちゃいますと、一回の装填で撃てる回数が少ないのと余りにも反動が強すぎて扱い辛かったから、今まで使おうと思わなかったんですよ」


「反動が強い?」


「撃てる回数が少ない?」


シドさんとミハルちゃんは何を言ってるのか分からないって顔をしているね。


「反動・・・・・・ああ、なるほど」


「ああ、なるほどって・・・・・・理由が分かるんですか?」


「ああ、エルライナの戦いを見てきたから理由が何となく分かる・・・・・・それにな」


「それに?」


「説明するよりも見せた方が早いだろう? エルライナ、その二つの武器を使ってるところを見せてくれないか?」


エイドさんはこっちを向いて聞いてくる。個人的には射撃練習にもなるのでOKなのだけれども、いくつか不安な点があるから確認してからにしておこう。


「えっと・・・・・・私的には練習にもなるのでOKって言いたいんですけどぉ・・・・・・」


「けど、なのか不安があるのか?」


「はい、ちゃんと安全な場所で撃たせて貰えるのか心配なんですよ・・・・・・例えば的の先に壁とか遮る物がなかったら危険ですし、誰かに当ててしまう心配もありますし・・・・・・ね?」


出来れば砂山が理想なんだよね。


「それなら心配しなくて良いぞ、兵士兼冒険科用の射的場あるからそこで撃てば良い。それにお前が言う様に的の後ろは土山になってるから誰かに当てる心配はない」


「そんなとこあったんですか」


「こういうところに射的場を設置してくれと要望があったから設置したんだよ。有料銅貨三枚で使用可能の有料だけどな」


射的場・・・・・・ああそっか、この世界には銃がないから射撃場がないんだ。

まぁ安全に撃てるのなら何処でも良いんだけどね。


「射的場を有料にしてるんだ」


「まぁ射的場を維持しなきゃなんないからな。因みに矢のレンタルもしている。十本で銅貨二枚だ」


・・・・・・まぁ考えてみたらそうだよね。施設を維持するのにお金が必要だし、有料にしないと居座る客とかが出ちゃうからね。


「後、ここの警備の代わりを探さないといけませんね。誰か呼んできて貰えませんか?」


「なら私の部下にここの監視をしましょう」


「うわっ!? ダレンさんっ!! いつから居たんですか?」


しかも部下っぽい二人を引き連れて来てるし。


「その二つの武器を使ってるところを見せてくれないか? と言うところから話を聞いてました。それとぉ・・・・・・」


それと?


「そろそろ休憩をしませんかエルライナさん? そのついでに武器の練習も出来ますしね?」


まぁ突っ立てるだけの仕事だったから、そんなに疲れてはないんだけども・・・・・・ここはダレンさんの言葉に甘えた方が良いかな?


「そうさせて頂きます。ただ、こことここと反対側のに設置している四つの罠に触れない様にして下さいね。触れたら爆発する可能性がありますからね。

だから私以外の他の人があれに触れようとしたら絶対に止めてくださいね?」


ある程度脅さないと興味本位で触ってしまう可能性がからね。


「・・・・・・まぁその罠がどう言ったものなのか聞きたいのですが、今は止めておきましょう。二人とも聞きましたね?」


「「ハイッ! 命が欲しいので絶対に触れません!!」」


そんなこと副団長に言って良のか?


「ではしばらくの間二人に任せます。化け物が来た時は二人だけで戦う事はしないで周りの人達を集めて対応するようにして下さい・・・・・・分かりました?」


「「ハッ!!」」


うん、いい返事をするね。


「ではみなさん、行きましょうか」


「あ、はい」


「うむ」


「分かった」


「・・・・・・ん」


なんだろう・・・・・・期待されてる気がする。


痛い様な視線を浴びながらダレンさんについて行くと、地面に突き刺さった木の棒にボロボロで使い物になりそうもない盾や木の板が吊るされいて、その後ろには土を山のように盛って作った壁があるところに着いた。


「ここが射的場ですよ」


・・・・・・うん、想像通りこじんまりしているね。でも距離が三十メートルぐらいあると思うから銃の射撃も練習も出来そうだ。


「えっと・・・・・・この銅貨三枚を誰に渡せば良いんですかね?」


ポケットから出すような仕草をしてストレージから銅貨三枚を出した。そうしないと色々聞かれそうだからね・・・・・・うん。


「もしかしエルライナさん・・・・・・射的場を利用するのは初めてですか?」


「はい、射的場を使用するのは今回が初めてなんですよ」


今までは草原にいるモンスターが的だったから、こういうところを利用する必要がなかったんだよね。


「向こうの机にいる人に渡せば向こうの人が案内してくださいますよ」


受け付けの人を見てみたら、なぜかこっちを興味深々と言わんばかりの顔で見てくる。


「な、なんか見られてるけどぉ・・・・・・まぁいいや、気にせず受けつけしますね。すみませーん! 射的場を利用したいのですが、大丈夫ですか?」


「大丈夫ですよ」


ダレンさんに言われた通りに受け付けの人に渡した。


「的の方はなににしますか?」


「えっ!? 種類?」


「はい、種類ですよ」


・・・・・・ま、まあ元いた世界でも人型とかターゲット型とか色々種類があったしね。


「人型の的で十メートル先に設置の設置して下さい」


「・・・・・・人型の的?」


あれ、なにか間違えた? それともないの?


「エルライナ、的は向こうにある三種類しかないぞ」


「えっ!?」


エイド教官が左に指を差しているので、その方向に顔を向けると木の板と傷だらけの盾とボロボロな鉄の鎧が飾ってあった。


「あれが的ですか?」


「はい、そうですよ」


うわぁ〜・・・・・・木の板は常に作って補充してるのは分かるけど、盾と鎧は処分品を回収して利用させて貰ってるものなのかな?


「鎧でお願いします」


「えっ!? 的当てぐらいなら木の的で充分でしょ?」


「多分、木とかだとすぐに壊れちゃうと思うからさ・・・・・・まぁ、見ててよ」


「・・・・・・アンタがそう言うんなら何も言わないわよ。て言うかぁ・・・・・・」


「て言うか?」


「人が集まっているのはなんでなの?」


「えっ!? 人が集まってる?」


疑問に思いながら辺りを見回してみると、なんとギャラリーが俺達を遠目に見ながら囲んでいるで居るではないかっ!!


「えっ!? えぇっ!!?」


何んで人に囲まれているの? わけが分からない。


「みんなお前の使う武器に興味があるんだろう」


マジで? まぁ、この世界の人にとって俺の武器は未知なる物だしなぁ。見たくなるのは当然かぁ・・・・・・てか、みんなに見られながら射撃しなきゃいけないの? うわぁ、ある意味ヤダァ。


「的の準備が出来ました。こちらにどうぞ!」


「えっ!? あ・・・・・・はい」


もうこうなったら覚悟を決めるしかないないよねぇ・・・・・・。


「ハァ〜・・・・・・どうしてこうなったんだろう?」


そう言いながら気まずそうにしながら鎧の前に立つエルライナの姿を、ニヤニヤしながら見つめているエイド達がいたのは本人は気づいていないのであった。

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