第15話

自分の身体を動かしたり触ったりして装備のチェック手早く済ませる。


「装備はこれでよし・・・・・・」


後は武器だけだけれどもぉ、汚れてだらけの床に直に置きたくないないなぁ。


「ダレンさん、テーブル余ってませんか?」


「余ってますけど、なにをするのですか?」


「重くて大きい武器を置きたいんですけど、ダメですかね?」


しかも弾自体もデカイからなぁ〜、持ち運びがちょっと難癖あるんだよなぁ〜・・・・・・やっぱアレ使うの止めようかな?


「そこにあるテーブルを使っていいですよ」


「ありがとうございます」


ダレンさんが指さしたテーブルに近づくと武器庫から パンツァーファウスト3 をテーブルの上に出す。


「なぁっ!? なにもないところから金属の塊が! ひ、光輝いて出て来たっ!!」


「えっ? ええええええっっっ!!!? なんだこれはぁぁぁああああああっっっ!!?」


「あわわわわわっ!? その様な物を置いたら机が壊れて・・・・・・なかった、よかったぁ〜〜〜!!」


ダレンさんを含めた兵士さん達が驚いてる中、エイド教官だけはため息を吐いて呆れた顔をしていた。


「・・・・・お前、アイテムボックスから取り出すならそう言っておけ」


「えっ!? 武器を置くって言ったじゃないですか!」


「置くじゃなくて、出すって言えばコイツらが驚く事がなかったっつぅーの!! 」


あぁ〜・・・・・・うん、なるほど。


「なんかすみません」


「まぁいい。それがどんなモノなのか説明してくれると助かるんだがぁ」


「一応掻い摘んで説明すると パンツァーファウスト3 の頭の部分に、よっこいしょっと!」


テーブルの上にと横に置くと、エイド教官達は少し驚いたようすを見せる。


「ここの部分いわゆる弾頭が飛んで行くんです!」


「ほぉー、ソイツをぶつけて倒そうって考えてるんだな。確かにでかそうだけども鉄の塊をぶつけただけじゃ無理だろ?」


まぁエイド教官は俺が使っていた武器を見てきたから、どう使うか想像出来るんだろうけど。


「う〜ん、ちょっと違いますね。この砲弾は頭の部分がなにかにぶつかるとぉ・・・・・・」


「ぶつかると?」


「爆発して相手を吹き飛ばします」


「爆発するのかっ!?」


「威力はとしては大体そうですねぇ〜・・・・・・王都の城壁に人一人が余裕で通れるような穴を開けられる程度かな?」


ってあれ? みんな震えながら壁に背をつけてるよ。さっきの説明を聞いて怯えちゃったみたいだね。


「みなさん、そんな怖がらなくても大丈夫ですよ。弾頭に強い衝撃を受けない限り、爆発なんてそうそう起こりませんよ」


「そ、そうですか? 信じて大丈夫なんですね?」


「うん、信じて大丈夫」


「ここで爆発させたら許しませんからねっ!!」


しつこいな、この副隊長は。


「まぁまぁ、アイツがそう言うんだから信じましょう。俺達が触んなきゃ爆発する事はないんですから」


エイド教官が丁寧語を話そうとしてるんだろうけど丁寧語になってない。こう言うところで育ちの違いが出るんだろうなぁ。


「エルライナ、なんか変な事を考えてないか?」


「いいえ別に、それよりも私はこれを使ってバケモノの身体を吹き飛ばして倒そうと考えてるんですけどぉ〜、どうですかね?」


「良いんじゃないか。アイツはお前がさっき使っていたショットォ、ガン? まぁ攻撃を喰らってもピンピンしていたからな。

吹き飛ばすぐらいの力がないとな・・・・・・・ただ」


「ただ?」


「ミスって建物を吹き飛ばしたらお前の責任になるからな。よぉーく狙って撃てよ」


「えっ!? せ、責任っ!!」


「当たり前だ! お前が使うんだから責任があるだろうがっ!!」


ヤバい、責任があるって言われるとプレッシャーがかかるんですけどっ!?


「えぇ〜・・・・・・エイド教官、やっぱり武器変えますね」


「却下、それを使え」


「ええ〜〜〜っ!!?」


「それ以外に倒す方法が思いつくのなら変えていいんだが」


それ以外に方法があれば。かぁ・・・・・・バレットで撃ち抜く? それじゃあ効果があるかどうか分からない。ロケランでぶっ飛ばした方がいい。

いっそ戦車で戦うのは、いや却下! むしろ逆に主砲で建物を壊す可能性の方が大きい! ましてやドラゴンとか大きいモンスターなら的がデカイから撃てるけど、対峙するバケモノは人並の大きさだから狙ずらい・・・・・・てか、その前にキャタピラで道をめちゃくちゃにして舗装代を請求されそう。

いっその事ヘリで遠くから狙って、って建物の中に隠れられたら終わりか。


「・・・・・・思いつきません」


「そうだろう。なるべく邪魔にならないようにするから、それでぶっ飛ばしてくれよ」


「・・・・・・はい」


うぅ〜・・・・・・相談してから出すんだった。


「さてダレンさん、この手紙を王都のギルド長のラミュールに届けるように手配してくれませんか?」


「任せてください。一番早い鷹を準備をしてくれ!」


「そう仰ると思い準備していました。なのですぐに飛ばせます!」


「そうですか、なら頼みますよ」


「ハッ!」


兵士さんはダレンさんに近づき手紙を受け取ると、走って小屋の外に出て行く。


「優秀な部下をお持ちなんですね」


「えっ!? そう、ですか?」


「ええ、普通は指示を受けてから行動するんですが彼は言われる前に準備をしていたでしょう?

普通の人はそう言う事って中々出来ないんですよ」


「はぁ、そうなんですか。リードガルム王国の兵士の育成が良いからでしょうね」


「へぇ〜」


まぁ言われてもやらないヤツもいるけどな。

元クラスメイトの一部なんて頭の中身がスッカラカンな上に毎日飽きずに負け犬の遠吠えしているし、クラス中にいる時だけで偉そうにしているバカ女とか教師らしい対応をしない給料泥棒教師とかね。


「おい、ダレン! いつまでそこに居る気だ!」


あ、アグス団長だ。てか今まで外でなにしてたんだこの人は?


「アグス団長、まだ彼ら話し終ってないのでもう少々お時間を頂けないでしょうか?」


「ならんっ! これからバケモノ退治に向かうんだ! お前も装備を整えろっ!!」


俺を含めた全員が、 おいおい、何を考えているんだ。この団長は? と言う顔で見つめているが当の本人は気づいているのかいないのか分からないが話を続ける。


「それから、キサマら二人っ!!」


まさかここで俺達に話を振ってくるとは思いもしなかったので、エイドさんと俺は、ビクッ!? と身体を強張らせてしまった。


「えっ!? お、俺達?」


「そうだ! 俺と共に迷宮について来いっ!!」


「「はぁっ!?」」


ついて来いって、おいおいおいおいっ!!?


「ふざけるのも大概にしやがれっ!! 市民の安全確保はどうしたっ!?」


エイド教官は机をぶっ叩きながら立ち上がった後にアグス団長の目の前に立つ。その顔は誰がどう見ても怒り心頭しているのが分かる。

そう、この部屋にいる俺を含めた全員がヤバイと感じているのに、アグス団長だけはしれっとした顔をしていた。


「ふんっ! 迷宮の中で彷徨っているのなら出てくる事はないだろう。

話しで聞く限り知性も低いみたいだしな。よって、市民を避難させる必要はないだろう!」


「三階の上り口にいるんだぞ! いつ迷宮から出て来てもおかしくねぇぞ!!」


「それに、ふざけているのはキサマの方じゃないのか?」


「・・・・・・んだとぉ」


「化け物を一刻も早く倒しに行かなければならないのに言い争いを始めさせるなど愚の骨頂だ」


「テメェッ!!」


「まぁまぁエイド教官。落ち着いて落ち着いてぇ〜」


今にもアグス団長に殴りかかりそうなエイド教官の前に立って身体を抑えて静止させるが、エイドさんは俺のその行動が気に食わないのか睨んでくる。

しかし俺は気にしてない素振りを見せながらアグス団長に向き直り話し始める。


「アグス団長の言いたい事は理解しました」


「そうか、なら俺と共に来るんだな?」


「いいえ、私達総合ギルドは市民の避難と防衛戦準備をするので、アグス団長はどうぞダンジョンの方へ調査しに行って来てください」


「なっ!? キサマ、俺の命令に従わないつもりなのか?」


「命令、従う? 何をおかしな事をいってるんですか? 私達は総合ギルドの冒険科の人間ですよ。

私の記憶が正しければぁ・・・・・・冒険科に命令を出来るのはギルドマスターか上層部の人ぐらいだと思いますがぁ・・・・・・そうですよね。エイド教官?」


「ああ確かに、お前の言う通りだ。

総合ギルドは国や宗教や団体とかに対して平等な立場であるから相手が権限をかざして命令をしても従わないと答えても良い。そういう連中がいたらスッパリ手を切る。それが総合ギルドだ」


「うんうん」


「それにお前が言う命令って、ギルドマスター権限とかの事だろう? 確かにギルドマスター権限で命令が出来るが、乱用しすぎると職務がちゃんと出来ているか問われるから滅多に使わな・・・・・・ってお前まさかっ!?」


おっ!? 俺が考えている事が理解出来たのかな。流石グエルさんのところで働いていた人、理解力があるなぁ〜っ!!


「と言うわけで、我々はアグス団長の命令に従いません! 無理矢理な事をしてでも連れて行こう。 だなんてしたらぁ・・・・・・」


「し、したら?」


「大問題になりそうですねぇ〜〜〜・・・・・・そう思いませんかぁ?」


その言葉を聞いたアグス団長は顔を強張らせた。かなり効果があったのかさっきよりも怒気が薄れている。


「・・・・・・バケモノのところまでの道のりの案内を頼みたいのだが」


「それは総合ギルドの方に指名依頼してからじゃないと、私達は動けません」


「うっ!? うぬぅぅぅうううううう・・・・・・・」


おっ! この小娘風情が生意気な事を抜かしやがって!! って顔をしているな。

プライドまで傷つけちゃったぽいけどぉ・・・・・・まぁ、こう言うしかないから仕方ないよね。


「もういい!! 我々だけで調査しに行く!! ダレン、俺と共について来いっ!!」


「アグス団長・・・・・・命令に、いえ! 今のアナタに従う事が僕には出来ませんっ!!」


俺とエイドさん、ましてや部下である兵士さん達がダレンさんのとんでもない発言に驚いてる中、アグス団長は憤怒の表情を見せながらダレンに詰め寄る。


「なっ、なんだとっ!? どう言う事だ! 理由を言ってみろっ!!?」


「私にとってアナタ、いえ・・・・・・アグス団長は憧れの存在でした。常に切磋琢磨と鍛錬して周りに気遣い、そして正しい道に導いてくれた人です・・・・・・ですがっ!!」


拳を握りしめキッとアグス団長を睨む。


「今のアナタに昔のような誇りが何処にもありませんっ!!」


「ッ!?」


「 毎日没落しかけている家の復興の為だけを考えていて、夜になれば酒場で酔いつぶれている・・・・・・それに今回、その化け物を倒せばアナタの家、デノール家の為になるからでしょう! その前に」


「うるさいっ!?」


なんとアグス団長は話の途中なのに、ブチ切れてダレンさんの顔を拳でぶん殴って倒してしまった!!


「ちょっ!? ダレンさんっ!!」


慌てて駆け寄ってから身体を起こし、殴られたところを確認して見てみると口から血が出ていたので、布で血を拭ってあげる。


「もういいっ!! 偵察部隊からキサマを外してこのまま行くっ!! キサマはそこで大人しく待機していろっ!!」


アグス団長はそう言い残すと、小屋を出て行ってしまった。


「・・・・・・ヒドい人」


「・・・・・・昔はああいう人ではなかったんです」


「手当てをするので傷を見せてください」


「いえ、傷の処置はヒールを使える兵士に治して貰うので大丈夫です。それよりも早く我々の役割を決めましょう」


殴られて口から血を流しているのに大丈夫って・・・・・・。


「分かりました。ダレンさんと話し合って役割を決めて貰えますか? 私はエイド教官の指示に従います」


「おう、分かった! 手っ取り早く決めちまおう」


こうして、エイド教官とダレンさんは互いに話し合い自分達の役割を決めた。

そして、話し合いが終わったと同時にミハルちゃんがシドニールさんをくれたのは良いけどぉ・・・・・・かなり飲んでいるのか酒臭い。


ま、まぁちゃんと話しを理解しているから大丈夫なはず・・・・・・だよね?

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