第18話

「フヘッ!? フヒヒヒヒヒヒ・・・・・・もうなにも恐くない」


パンツァーファウスト3 を背中に背負った白い髪の女の子が迷宮の入り口前で不敵に笑いながら、 Mk19 mod2グレネードランチャー を構えながら警戒している。


「・・・・・・なぁ、エイド教官」


「なんだ?」


「止めた方が良いんじゃないか?」


「そうだなぁ〜・・・・・・でもこうなったのは俺達が原因だしなぁ〜・・・・・・うぅ〜〜〜ん・・・・・・」


そう、迷宮に戻る途中で俺達が あの武器見た目の割には地味だった。 とか もっと派手なヤツはないの? 例えばスゴい爆発するようなやつ! とか あれじゃ心持たないから他の武器を使え! 他のをっ!! とか言っていたら、いきなりエルライナが じゃあ、やってやりますよ! コンチクショウッ!! とか言って今構えている武器を取り出した。


「あぁ〜、あの・・・・・・エルライナ?」


「なにミハルちゃん?」


「一応聞くけどぉ〜・・・・・・そのデカイのって、どんな武器?」


「簡単に説明すると爆弾をポンポン発射する武器だよ。ミハルちゃんはこういうのを期待してたんだよねぇ〜〜〜?」


「へ、へぇ〜・・・・・・そうなの」


「しかもUGVのアルマジロに乗せてるから移動可能だなんだよ。スゴイでしょ〜〜〜?」


「えっ!? ええ、まぁ・・・・・スゴイわよ。でもやり過ぎじゃない?」


「えっ!? ・・・・・・やり過ぎだってぇ?」


身体を震わせた上に涙を浮かべながらミハルの両肩を掴むと、勢いよく前後に揺らし始めた。


「うわぁぁぁああああああああああああんっっっ!!? M500 のあの恐ろしい反動を見といて、 もっと他のはないの? って言ったのはそっちじゃないかぁぁぁああああああああああああっっっ!!」


「そ、それっ! ちょっ!? ミハルは言って、ないっ! ・・・・・・悪かっ・・・・・・おっ、落ち着けいっ!!」


ミハルちゃんが手を振りほどこうとしてくるが、そうさせないようにさっきより強く握ったら今度は顔を青ざめさせながら手を叩いてくるっ!!


「あんな事言っといて落ち着いてられるかぁぁぁああああああっっっ!! もう本気で戦ってやるっ!! 建物が倒壊しようが爆散しようが知るかっ!! あの化け物見つけ次第爆殺してやるっ!! アパッチ・ロングボウAH-64Dに付けているヘルファイアとハイドラ70ロケット弾をありったけぶち込んで木っ端微塵にしてやるっ!! それでもダメだったら、30mmチェーンガンでひき肉にしてやるぜ! ヒャッハァァァアアアアアアッッッ!!?」


「痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛いギブギブギブギブギブギブギブギブギブギブギブギブギブギブギブギブギブギブッッッ!!!?」


サーチ・アンド・デストロイ!! そう、サーチ・アンド・デストロイ!! 目標を見つけ次第ブチ殺せっ!!


「なにを言ってるのか分からないが、恐ろしい事をやろうとしているのだけ理解した! 本当に俺達が悪かったから思い止まってくれっ!! エルライナァァァ〜〜〜ッッッ!!!」


「なにを言ってるんですかエイド教官、アイツを倒せれば全てよしでしょ?」


「よくないわ、このドアホォッッッ!!?」


エイド教官が バシンッ!? といい音をたてながら俺の頭を叩いてきたので、思わず両手で自分の頭を押さえてしまう。


・・・・・・痛いよ。もしかして本気で叩いてきたの?


「それよりもエイド教官」


「こんな時になんだシドニール?」


「その化け物を倒しに迷宮に入って行ったアグスとか言う団長は大丈夫なのか?」


あっ!? そう言えばアグスさんが俺に化け物を倒しに行くからついて来い。って言った後に誰にもなにも言わずに迷宮に行っちゃったんだあの人。


「そうだなぁ〜・・・・・・ダレン副団長」


「はい、なんでしょうか?」


「アグス団長の実力はどれぐらいあるか分かるか?」


「アグス団長の実力は、そうですねぇ〜・・・・・・総合ギルドのランクで表すとCぐらいですかね」


「ん? AとかBじゃないのか? ここの団長を勤めるのだから最低Bぐらいの実力を有していないとダメだろう?」


「それがぁ、そのぉ〜・・・・・・ここを請け負った当初のダレン団長でしたら、Bほどの実力を有していたと思いますがぁ・・・・・・今はそのぉ、書類仕事している事が多いので・・・・・・鍛える時間が余りなくて、そのぉ・・・・・・」


「あーなるほど、分かった。実力はあっても現役の時のように動けるかどうか分からない。って言いたいんだろう?」


「・・・・・・はい、申し訳ありません」


ちょっ!? その強さの表現は俺には理解出来ないっ!! 誰か俺に強さの基準を教えてくれぇぇぇええええええっ!!


「それよりも、どうするのよっ!?」


「どうするってなにを?」


「ミハル達このままずっと待ってるつもりなの? ダレンとか言う団長任せにして良いの?」


・・・・・・ミハルちゃんの言う通りかも知れないなぁ。このまま守りを固めていても相手が来なきゃ意味がないし、避難している人達をこのままにしておくわけにもいかないし、なによりもあの化け物をここに出てくるまで待っている訳にもいかない。

ところでなんでミハルちゃんは痛そうに肩回してるの? 肩こりのなったのなら揉んであげようかな?


「・・・・・・一時間経っても戻って来なかったらようすを見に行くか?」


「う〜ん・・・・・・ギルド長が来たら話し合って決める。それでいいな?」


そうだよな。俺達の独断でこのまま迷宮にようす見とか言って入って行ったら、ラミュールさんやグエルさんに迷惑がかかってしまうだろう。

なんせ化け物との戦いの要となるかも知れないのが俺達かもしれないから・・・・・・。


「私はそれで良いと思います」


「ミハルも、そうした方が良いと思う・・・・・・イタタ」


「ああ・・・・・・ところでお前、さっき男みたいな口調になっていたが・・・・・・あれがお前の素なのか?」


「え? ・・・・・・あっ!?」


しまったっ!! さっきは我を忘れて喋ってたから自分の口調を気にしてなかった。


「う、う〜ん・・・・・・私は元々は女の子として育てられたのではなく男の子として育てられたので、さっきのはその・・・・・・名残りだと思ってくれれば有り難いです。はい」


「・・・・・・そうか、分かった」


あれ? もっと追求してくると思ってたんだけれども、ん? ・・・・・・ッ!? 来たかっ!!


Mk19 mod2グレネードランチャー の銃口を迷宮に向けてトリガーに指を掛けて身構えた上に、空いた左手でクレイモア地雷のリモコンを持ちスイッチに指を据える。


「どうしたエルライナ?」


「迷宮から何か出てきました。多分あの化け物だと思います」


「いや待て! ・・・・・・人だ、人が来るから止めろっ!!」


人? シドさんは耳を洞窟に向けてるって事は足音を拾っているのか? いや、でもさ・・・・・・現に俺のレーダーに敵マークがクッキリ映ってるから間違えてるんじゃないはず・・・・・・ん?


「ハァッ! ハァッ! ハァッ! ハァッ! のわっ!?」


迷宮の入り口から転びながら血塗れの鎧を着た人が出てきた。てかあの鎧って見覚えがあるぞ!!


「アグス団長っ!? なぜあの様なお姿を・・・・・・」


やっぱりアグスさんだったんだ。ダレンさんがそう言うなら間違いないはずだ! でも、小屋で見た時よりも鎧が所々凹んでしかも血と埃で汚れている。

もしかして怪我をしているのか? いや、鎧に付いた血が地面に流れて行かないってこと打撲だけかもしれない。とにかく保護を、っておいおいおいおいおいっ!?


あの化け物の両脇にはアグスさんの部下二人が力なく倒れていて、それぞれの足を掴み引きずりながら出てくる姿を見た俺達は言葉失って見つめてしてしまう。

そんな中、ミハルちゃんは震える手で指をさしながら言葉を絞り出す。


「ね、ねぇ・・・・・・あ、あああぁぁぁああああああれ・・・・・・あれっ!!」


「・・・・・・見えてるから分かってますよ」


「んぐっ! つぅ・・・・・・あ、ああ?」


化け物の右手に捕まっている人の身体が動いた。ってことはあの人生きているっ!!


「あ? ぁぁぁぁぁぁあああああああああああっっっ!!? ぅぁぁぁぁぁぁあああああああっっっ!!? 殺される!!! 化け物に殺されるううううううっっっ!!! たっ、助けてくれぇぇぇええええええっっっ!!?」


意識が戻って自分の置かれた状況が理解出来たのか、のたうち回って掴んでいる手を振り解こうとしているがビクともしない。


「エイド教官、あの人!」


「ああ、分かってる! アイツを助けに行く、だから、ソイツをブッ放すなよっ!!」


「は、い?」


な、なんだろう。あの化け物、俺ことをずっと見てきてないか?


「グウウウゥゥゥゥゥゥ・・・・・・・」


化け物はのたうちまわっている兵士を持ち上げると兵士と俺を交互に見つめる。


おいおいおいおい・・・・・・ま、まさかぁっ!?


「グゥオオオオオオオオオオオオッッッ!!!!」


雄叫びと共にまだ生きている兵士を振りかぶり、そしてこっちに向かって投げて来たっ!!


「ぁぁぁぁぁぁああああああああああああっっっ!!!?」


「ウソだろっ!?」


そう言いながら隣にいたエイド教官を押し倒しながら避けた瞬間、ガシャァァァアアアンっ!!? と言うような物音が後ろから聴こえてきた。


「エイド教官、無事ですか?」


「ああ、全員無事か?」


「俺とミハルは平気だっ!」


「僕もなんとか避けれました。しかし、これは・・・・・・」


え? これってなに?


「ああっ!?」


後ろを振り返ってMk19 mod2グレネードランチャーを見てみると、何と大破していて使い物にならなくなっていて、投げられたあの人は横たわったまま動かなくなってしまっている。

多分Mk19 mod2グレネードランチャーにぶち当たったせいで亡くなってしまったかもしれない。しかも、あの化け物を目を移して確認するとクレイモアを仕掛けた場所にもう立っていないどころか、こっちに向かって歩いて来ているじゃないか!


「クソッ!? 作戦失敗、こうなったら正面から迎え撃つしかない! エイド教官、化け物の動きを止めて下さいっ! 私はそのスキを見て パンツァーファスト3 を撃ちますからっ!!」


「分かった! シド、ミハル、俺に付いて来いっ! ダレンはあの団長の確保をしてくれっ!!」


「し、しかし彼が・・・・・・」


ダレンさんは Mk19 mod2グレネードランチャーにぶち当たった部下を介抱したいのか、エイド教官と部下を交互に見ていた。


「ソイツの事は他の連中に任せておけっ!!」


「は、はいっ!」


エイド教官がそう言うとダレンさんはエイド教官を追いかけるようにして化け物に向かって行く。


エイド教官達がそうしている中、俺はホルスターから S&W M500 を引き抜くと化け物に狙いを定めるのであった。

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